見出し画像

家にある風邪全部ひいた ◆ 水曜日の湯葉109

久々に本格的な風邪をひいた。「風邪」に含まれる症状をスタンプラリーみたいに巡回する3日間だった。まず倦怠感が出て、その次に鼻水が止まらなくなり、それから高熱が出て、それから頭痛と吐き気がして、熱がひいてきたところで咳が出てきた。完全なる風邪である。これくらい本気の風邪であれば「すみません仕事休みます」の連絡がしやすくて良い。地味な風邪だとうっかり出来もしない予定を組んでしまったりする。

大人になってから、風邪がさほど苦痛でなくなった。少なくとも精神的にはだいぶ余裕ができた。子供のころは39℃の熱が出ると「このまま死ぬんじゃないか」と心配したものだが、今では「この感じなら明後日の昼に治る。そしたらシャワーを浴びて、編集さんに謝って明日締め切りの原稿を始めよう。明後日は晴れだからこのベトベトのシーツは洗濯しよう」とかいったことを考えていられる。

一方で、着実に視野に入ってきた「老い」へのイメージが、体調を崩すたびに少しずつ精神に染み込んでくるようになった。今はどんな不調でも「どうせ3日で治る」と受け入れるが、これが平常状態になるとしたら、いったい未来になんの希望があるのか、と。

マシュマロを開いたら、僕の現状を見越したかのような質問が届いていた。

ふむ。ひとことで答えるなら「免疫以外の都合もあるから」であろう。人体の生命活動というのはさまざまな化学反応の流れでできており、体温が1℃も変わるとそのバランスが大きくずれてしまう。だから僕がこうやってベッドで寝込んでいるわけだ。これが平常時の体温になったらたまったものではない。

では最初から38〜39℃でバランスが取れるように進化できなかったのか? と言われれば、実際にそういう生物もいる。イヌの平熱は38℃であるし、鳥類にいたっては40〜42℃だ。ただ体温は食生活や運動性といったさまざまな要素に密接に影響してくるため、さまざまな要素を勘案した結果「ヒトは平熱が37℃、風邪のときは39℃くらい」が自然選択で残ったのだろう。

そういえば「ウマは体温が高いので寄生虫がなく生食でも安全」という話を聞いたことがあるが、いま調べたら獣医学や乗馬関係の情報源にはおおむね「ウマの平熱は38℃、ウシとほぼ同じ」とあり、馬刺しを提供する飲食店のサイトだけ「ウマの体温は40℃で、ウシよりも5〜6℃高い」てなことが書かれていた。なんなんだ。


ここから先は

3,075字 / 1画像

毎週水曜20時に日記(約4000字)を公開します。仕事進捗や読書記録、創作のメモなどを書いています。…

水曜日の湯葉メンバーシップ

¥490 / 月
初月無料

文章で生計を立てる身ですのでサポートをいただけるとたいへん嬉しいです。メッセージが思いつかない方は好きな食べ物を書いてください。