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〈桜〉が愛されるのは真っ白い雪が恋をした色だから♡優しい桜色♡に誘われて微笑みたいね♡〈カフェ25〉

店のドアを開けると暖かくなった風に思わず顔をほころばせてしまう。春という季節が優しさを運んで来てくれるからだろうか。

私は今日も店を開けた。

店のドアと店の窓を開けて爽やかな風を入れる。本当に気持ちがいい。店の前の街路樹を横に見ると五分咲きの桜が咲いている。残念ながら桜並木ではなく桜の木が一本だけ咲いている。だけど、その一本の桜が何故かまた綺麗に見える。

思わず私はそんな桜を見て微笑んでいる。

--- 桜。やっぱり綺麗。

本当に癒やされる。

どうして〈桜〉は皆に愛されるのだろう。

3月女の子の節句のひな祭り。その時に飾る桃の花。桃の花は確かに桃色。ちょっと濃い目のピンク系の。でも、ピンク色とは何か違う。

河津桜なんかは、やや濃い目の桃色って感じだけど、やっぱり桜は〈ソメイヨシノ〉がいい。

あの何とも言えない淡い桃色。〈桜色〉って言うのかな。殆ど白い色に淡い桃色が恥ずかしそうに染まっている感じかな。まるで少女が初めて恋をした時の頬の様に。そうそう、まるで真っ白い雪が恋をしたかの様に花びらが寒かった冬から暖かい春を呼んでくれる。

寒い冬が嫌な訳ではないけれど、だけど何だろう。真っ白い雪って言うと、そうそう咲希ちゃんがあの雪の日に初めて来て、恋を落として失くしたと言ってこぼした涙を思い出す。あの涙を真っ白い雪が包んでくれたかの様に、いろいろなものを一面真っ白に包んでくれる。

そう言えば、冬矢君も真っ白い雪が好きだと言った。

--- うふふ。だから若い人って真っ白が好きなのかしら。

いろいろな物を真っ白にして、これからスタートするかのように。

そんな時に咲く〈桜〉は、これからのスタートを歓迎するかの様にほのかに花びらを染める。

私はちょっと立ちすくんだまま五分咲きの桜を見ていた。たくさんの桜が咲いている場所も素敵だけど、あの一本の桜がまたいいなぁなんて思いながら。

気がつけば道行く人の服装も軽くなっている。

あんなに可愛くて綺麗な桜も咲いているのは1〜2週間ぐらい。その短さにまた人は感動するのかもしれない。それから青々とした緑色の葉が芽生え育ちやがて種類や木によっては実を付ける。

--- 何だか同じね。人生と。

でも、植物はそれを繰り返す。年輪という生涯の目安を刻みながら。そして人は、植物の一年分の形を生涯として過ごす。

桜や花を咲かせる木は、毎年決まった時期に花を咲かせる。だけど人は生涯の中で花を咲かせるのは、時期にしても回数にしても長さにしてもその人次第。そして、花を咲かせたと思えるのもその人次第。

花を咲かせ青々とした葉を育み実を付ける。実を付けたら枯れてしまうのは次の花をまた咲かせ実を付ける為だから。木そのものはずっと生きている。だけど人の生涯は枯れたら終わってしまう。

だから、人も生涯の中で何回も咲いていたらいい。何回も実を付けたらいいと思う。

人も時には自分なりの年輪をたくさん刻んでもいいのかもしれない。

--- うふふ。何を考えているんだろう、私。

そんな事を思いながらドアのプレートを返した。

[オープン]

プレートの裏は[今日は終わり]と書いてある。

--- 確かに、うん、確かに。バランス悪いかも。

冬矢君が言った通り。

でも、

[これから始まり]

[クローズ]も何だかねぇ--- ?。

やっぱりこのままでいいわ。

[おはよう][おやすみ]でもいいのかな。

うふふ。何かプレート1つでも面白い。

さぁ、今日も誰か来るのなぁ。

来てくれるのかなぁ。

誰が来るのかなぁ。

なんて思いながら店に入った。

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#小説 #カフェ #桜 #春 #微笑み



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