見出し画像

2台デジタルピアノによる演奏会Project『白と黒で』について —「アコースティック第一主義」へのアンチテーゼ—②選曲とプログラミングにおける工夫



デジタルピアノで何を演奏すべきか?

デジタルピアノのみで演奏会をするとなると、まず最初に考えるのは「選曲」だろう。デジタルピアノの良さが伝わる曲、デジタルピアノだからこそ作品の価値がより適切に伝わる曲、デジタルピアノを使うことによってより一層思いがけない点に気づかされる曲など・・・。通常のアコースティックピアノを聴き慣れた人をハッとさせられるような何かが必要だ。
そこで、今回の『2台のデジタルピアノによる演奏会Project』では、まずもって「20世紀」という時代に絞り込むことにした。

20世紀という時代は、当然第二次産業革命を終え、一般庶民でさえも、電気的・電子的なものと共存が始まった時代である。作曲家や演奏家も当然、その影響を受けることとなった。そして20世紀は1901年から2000年という、音楽史的にもスピーディーな変遷を遂げてきた時代でもある。

今回は20世紀の音楽を奏でる上でデジタルピアノの潜在能力を最大限に開花させるという目的の元、さまざまな種類の作品ををバランスよく取り入れることとした。
それを分類するなら、下記の3つに集約される。

(1)オーケストラ的な響き・音色を必要とする2台ピアノ作品
(2)電子的な響きを求める作品
(3)デジタルピアノの楽器的特性が浮き彫りになる作品

(1)   オーケストラ的な響き・音色を必要とする2台ピアノ作品

オーケストラを想定した作品をまずもって2台ピアノで演奏したいと考えた。エレクトーンで様々なオーケストラの編曲を演奏することはあるが、今回はあえて音色調整をせず、「ピアノ」の音色(トーン)のみで端的にオーケストラ的な世界観を伝えられる曲はないかと模索して、そこで、ホルストの《惑星》より「木星(ジュピター)」が第一候補に挙がった。
オーケストラでの演奏が有名だが、2台4手向けのものはオーケストラ版よりも先に存在していた。

誰もが知っているあの「ジュピター」のメロディ、そして意外にも「あそこ」以外の部分もお楽しみに…。リズミカルで心躍るようなショータイムなのだ。しかも演奏時間はコンパクトながら、フルオーケストラの音響をしっかりと感じられる内容。作曲家自身の2台編曲版であるため、原曲のディテールも損なわない。まさに本公演にふさわしい1曲なのである。

また、本公演のタイトルでもあるドビュッシー作曲の《白と黒で》は、かねてより共演の横山博さんがプッシュしていた作品であり、本荘とデュオを組む前から、もともと公演タイトルとして「白と黒で」は決まっていた。これもピアノの音の多様性を生かした、じつに色彩豊かな作品である。最初から2台のピアノのために書かれた作品であるという点で、ホルストとも属性を同じくすることになるが、交響的な響きが志向されていることにはまちがいないだろう。(ドビュッシーのオーケストラ作品、交響詩「海」や「牧神の午後」との共通性もうかがえる。)
「白と黒で」について語ると、さらに紙面を要するだろうから、いったんここでストップしておこう。

次回は、(2)電子的な響き…について説明していこう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?