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【小説】未来から来た図書館 -4-

ボクは、学校が休みの日には、この図書館で一日中本を読んでいる。
もちろん、友達と遊ぶこともあるけど、本を読んでいることのほうが多いと思う。
夏休みの今日も、ボクは大好きな図書館で一日を過ごしていた。

一階の児童書コーナーには、物語や伝記、図鑑が並んでいる。
ボクがいつも選ぶのは、探偵や忍者や科学の本。
表紙に「謎」「不思議」「研究」と書かれた本が好きだ。
ボクは最近になって、やっとお気に入りの場所を見つけた。

児童書コーナーはカーペットが敷いてあって寝そべって読むことができるけど、小さい子が多いので、時どき、声が気になって集中して読むことができない。
あ、でも、小さい子の声は、嫌いじゃないよ。

二階にはテーブルが並んだ静かな学習コーナーがあるけど、そこはいつも中学生や高校生がいるので、ボクは入っちゃいけないような気がしている。
どこで読もうかと本を持ってうろうろしているときに見つけたのが、ボクのお気に入りの場所になった。

そこは、辞書のような分厚い本がぎっしりと並んだ棚の先にある小さな空間。
児童書コーナーをずっと奥に行ったところだ。
そこには、小さな木でできたテーブルがおかれていた。
テーブルの前には大きめの窓があって、外側には細長い植物が植えられている。
一歩入れば本棚で薄暗くなるけど、そこは木漏れ日のような優しい光が射していた。
そんなに人が来ない場所なのか、今日は大きな眼鏡をかけたおばあさんしかいなかった。

とても静かで、とても落ち着ける場所。
丸い黄緑色のソファーに座って、ボクは本を読みはじめた。
ボクが本を開くと、いつも、なんだか不思議な気分になっていく。

静かな 静かな森の中
優しくそそぐ 光と温もり
ボクはひとり きり株にすわる
本を開くと出会う
知らないこと 新しいこと だれかの思い
ボクは いつの間にか 物語の世界を歩いている



*** 2022.03.23 表記の揺れを修正


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