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【小説】未来から来た図書館 -14-

カードを裏返してみたけど、それだけしか書かれていなかった。
もう一度封筒の中を確かめてみると、そこには四つ葉のクローバーが入っていた。
クローバーは押し花のようにぺしゃんこになっていて、透明のカード入れの中に入れられていた。
綺麗なしおりのようだった。

明日、図書館でボクを待っている?
誰が待ってるんだろう?
ボクは、しばらく首を傾げたままだった。
ボクのまわりには、たくさんの「?」が浮かんでいただろう。

その日の夜、ボクはなかなか寝つけなかった。
薄暗い天井を見つめたまま、静かな夜の音を聞いていた。
どこかの時計が、時間を刻む音が聞えた。
同じ音がくり返し、くり返し聞える。
今日と明日の境目がきても、ずっと同じ音が聞こえるのだろう。
その境目は、いったいどこにあるのだろう。
夜の時間が、とても長いように感じた――。

次の日は、いつもより少しだけ早い時間に目が覚めた。
一階におりると、母さんはまだ朝食の準備をしていた。
「あれ、今日は早いわね」
「うん、待ち合わせをしてるから」
「待ち合わせ? ふうん」
ボクは、はやる気持ちをおさえながら、顔を洗いに行った。

水は思ったよりも冷たくて、すぐにタオルで顔をふいた。
鏡にうつったボクを見ると、右側の髪が少しだけ天井をむいてはねていた。
いつものボクなら気にしないけど、今日は誰かと待ち合わせをしているので、直しておこうと思った。
水をつけて押さえてみたけど、なかなか強情で、押さえても押さえても、ぴょんともとの形にもどった。

鏡の横に父さんが使っているスプレーがあったので、少しだけ借りることにした。
天井をむいている髪に、一回吹きつけてしばらく押さえていると、少し直った。
このまま放っておけば、きっと図書館に行くまでには、もとにもどるだろう。
寝ぐせが直るのはいいけど、なんだか父さんの匂いがする。
ボクは、もう一度水をつけて寝ぐせの場所をトントンとたたいた。



*** 2022.03.26 表記の揺れを修正


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