見出し画像

【小説】未来から来た図書館 -13-

「なんでそんなこと思ったの?」
「えっと、本を読んでると、ボクもその中にいて、一緒に見てる気がするから。時どき、本当に見たことなのか、本で読んだことなのかわからなくなって……」
「そっか。でも、本を読んでるときは、そうなんだと思うよ」
「え?」

「物語の中にいて、一緒にワクワクしたりハラハラしたりしたいから、本を読むんじゃないの?」
「うん」
「全部がごちゃ混ぜになったら大変だけど、誰かが考えた見たことない物語の中に入れるのも、素敵なことだと思うわよ」
「素敵なこと、か」

ボクは「ごちそうさま」を言って、食べ終わった食器を流し台に運ぶと、二階の部屋にむかった。
部屋にもどると、リュックをおきっぱなしにしていることに気がついた。
借りてきた本をリュックからとり出すと、紙切れのようなものが机の下に滑りこんだ。
床に落ちていたのは、一枚の封筒だった。

淡い水色の封筒は、綺麗に封がされていた。
封筒の表側には何も書かれていなかった。
ボクは、サクラさんが間違って入れたのかと思った。
でも、封筒を裏返してみると、そこにはボクの名前が書かれていた。
ボクは、それを見て少し驚いた。

封筒の裏側には、書いた人の名前を書くものだと聞いていたので、差出人の名前が書いてあると思った。
でも、そこに書いてあるのは、ボクの名前だった。
ボクは手紙なんて書いていないから、きっとボク宛ての手紙なんだろう。
そう思って、ボクはペン立てにあるカッターで封を切った。
中には一枚の白いカードか入っていた。
その真ん中には、こう書かれていた。

「明日、図書館でお待ちしています」



*** 2022.03.26 表記の揺れを修正


いただいたサポートを力に変えて、さらに精進していきます! サポートは、活動費として、大切に活用いたします!