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【小説】未来から来た図書館 -2-

ボクは、ボクが知らない間に本を好きになっていた。
気がつくと、いつも本を読んでいた。
難しい漢字が多い大人が読む本は、まだ読んだことはないけど、買ってもらった本はもう全部読んでしまった。

いろいろな本を読んでいるうちに、ボクは物語の続きを考えるようになった。
続きだけではなく、物語がはじまる前のことを考えることもある。
例えば――これは、今ボクが読んでいる本ではないけど――
桃太郎が鬼ヶ島から帰ってきたあと、イヌ、サル、キジはどうしたのだろうとか。浦島太郎が龍宮城に行く前、誰が海の底に龍宮城をつくったのだろうとか。

考えたことは「物語ノート」に書いている。
まだ誰にも見せたことのない秘密のノートだ。
このノートに、思いついたことをいろいろと書いている。
書いてあることのほとんどは、物語になる前のメモのようなものだ。

さっきの桃太郎や浦島太郎でいうと、こんな感じ。
・イヌは人間に忠誠心をもっていそうなので、ご主人である桃太郎の家で飼われることになった。サルとキジは同じところでずっと過ごすのは好きではないと思うから、山にかえった。三匹がまた集まることはあるのだろうか?
・龍宮城という名前からして、龍が建てたのだと思う。ただ、龍は手が短いと思うから、指示を出しただけで、作ったのは別の誰かだ。ボクの予想では、手が長い海の生き物だから、タコかイカあたりがあやしい。建築者は軟体動物?

はじまりの前とおわりの後を考えているうちに、今度は自分で新しい物語を「物語ノート」に書くようになった。
これはまだ完成していないから、秘密にしておく。

そんなわけで、ボクはボクが知らない間に、本を好きになって、たくさん本を読んでいるうちに、物語を考えるようになっていた。
そして、それを大人が見ると「ぼんやりしていることが多いです」となるようだ。

ボクが読んでいる本は、いつも母さんが買ってくれる。
おもちゃやゲームはたまにしか買ってくれないけど、本はいいらしい。
ボクの部屋のひとつの壁は、本棚で見えなくなってしまった。



*** 2022.03.23 表記の揺れを修正


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