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テイスティングの本質を考える

たまたま赤いカバーと「科学」という文字に惹かれて買ってみたワイン本、特に人の知覚や認知についての記述が多く、もうちょっとブドウの科学的目線の情報が欲しかったが、「そもそも何のためにテイスティングするのか」「ワインって何のためにどう楽しんだら良いのか」を考えるきっかけを作ってくれたことに感謝。

ワインの味の科学
ジェイミー・グッド (著), 伊藤 伸子 (翻訳)

ワインの味は何によって左右されるか

どちらかというと人間の感覚&意識に寄った目線で、様々な実験や論文を元にした科学的分析がこの本の半分以上を占めていて、以下にそれを整理してみた。

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右側の感じ方の仕組みについては、感覚器官や脳みそはまだまだ未解明の分野も多く、それぞれの相互作用が影響受けることを考えると、理解しようとするのは非常に難しい(ただ本の記述はこちらの方が割合が大きいが)。
なので、ワイン成分を左右する仕組みの方が、科学的アプローチがしやすいのだと思う。ワインを知るための勉強とは、品種、環境、醸造法、熟成がどうワイン成分に影響するのか、を知ること。こう改めて整理すると、今後の勉強方針を固められる。

ワイン成分だけでも非常に複雑な構造

・ワインの香りは基本的な構成成分20種類
 (うち19種類は酵母作用由来でブドウ由来のものは1種類しかない)
・個々の成分では匂いを認識できないほど低濃度で存在する16種類の化合物も香りに影響する
・さらにブドウの品種に特有の印象を与えるインパクト化合物というものがある(代表例:ソーヴィニョンブランのメトキシピラジン類 →青ピーマンの青臭い匂い)

上記3つの成分に加え、揮発されない不揮発性成分が、上記の香り化合物の感じ方に影響を与えるという。

インパクト化合物に、ロタンドン(シラーに感じられる黒胡椒みたいな香り)というものがあるが、人には特異的無嗅覚症というものがあり、なんと5人に1人はこのロタンドンの香りを感じられないとのこと。

結局テイスティングって何なの?

勉強の結果、ワイン成分の理解が進んだとしても、風味の感じ方が人それぞれなのであれば、その勉強って何に役立つんだろう?
ワインエキスパートでテイスティングの練習もしていたが、正解の無いテイスティングって何の意味があるんだろう?
本を読みながらそんなことが頭をよぎってきたが、読者がそんなことを感じることを予想してたのか、自身も感じたのかわからないが、ジェイミー・グッドさんなりのテイスティングの目的分類が記載されていたので、自分なりの解釈を以下にまとめた。

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そう、「2.ワインの違い」を楽しむためには、自身の知覚&認知を持って、どういうワイン成分をどう感じるのか、を知ることが大事で、そのために勉強は活きてくる。
もちろんそんなこと知らなくとも、人それぞれ自身の意識次第で「1.ワインがある『場』を楽しむ」ことはできる。でもワインという1杯の飲み物にどれだけの人&自然の力や時間がかかっているか(どんなストーリーがあるか)を考えると、分析する楽しみを捨てることは僕には到底できない。

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