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歩行練習はいかに介助しないかが勝負

今回のテーマは、歩行リハビリテーションにおける歩行介助の在り方についてです。ようやく8回目になりました。まだ、ほぼ誰も読んでくれてないけど、相変わらず毎日引き出します。

リハ病院におられる患者さんで理学療法を受けられている患者さんは、ほぼ全員が歩行の獲得を目的に入院されています。そんな患者さんにとって、歩行練習は最も重要なリハビリテーションのメニューの一つです。

歩行練習中、僕たち療法士は患者さんの腕とか体幹とかを持って、歩行を介助します。そらそうです。歩けない人が歩く練習をしてるからです。持ってないとコケルわけです。場合によっては、より良い姿勢で歩く練習をするために、ただ持つだけでなく、姿勢を療法士が矯正しながら歩行練習するときもあります。

しかし、僕はこの歩行練習時の介助を出来るだけしません。特に、バランス障害によって転倒のリスクがある人ほど介助しません。なぜなら、介助の下どれだけ歩行練習しても自立には近づいていかないからです。

バランス障害がある患者さんの課題は、歩行中、自身の身体の傾きを知覚し、転倒する前に自身の力で立ち直る能力の獲得です。それには、繰り返し、その練習をするしかないのです。つまり、自分の身体の傾きに意識を向け、自分で立ち直ろうと注意深く歩くのです。それが学習です。

しかし、このような患者さんをセラピストが介助して歩行練習してしまうと、身体が傾き、転倒のリスクに遭遇することもなければ、自身で立ち直ろうとする場面もありません。それどころか、患者さんはセラピストの介助の手に知らず知らずのうちに依存してきて、ドンドンと歩いていってしまいます。この歩行介助の手は、患者さんの学習の機会を奪っているとも言えます。

歩行距離をただ単に伸ばすことが目的であったり、全身の運動量を確保することが目的であったりする場合はこれでいいと思います。(実用的な歩行を獲得するのは絶望的だけど、廃用予防する必要がある人とか)でも、この歩行練習は自立歩行には向かってないです。

介助しないでただ歩いてもらうだけなんて、別に理学療法士じゃなくても誰でも出来るじゃないか、そんなのリハビリテーションじゃない!という意見があったとします。(誰か言って下さい)
それについては、こう反論します。理学療法士だからこそ転倒のリスクのある人を、介助しないで歩行練習できるんです。

転倒を恐れながら必死で歩行練習しているバランス障害の患者さんは、常に、いかに早く身体の傾きを察知し自身の力で立ち直れるかの挑戦中です。そして、その挑戦はしょっちゅう失敗します。その時、患者さんが自身の転倒を予感するより遥かにに早く患者さんに触れ、姿勢を元に戻してあげられるのが僕たち理学療法士です。この安心感があって初めて、患者さんは何度も転倒の恐れを振り切って介助なしでの歩行練習に挑めるのです。こうして、患者さんの学習が進んでいくことで、自立歩行のゴールを切れます。

介助なしじゃちっとも歩けない、ひと時も手を離せない患者さんはどうやって歩行練習するんだよ!という意見があったとします。(誰か言ってください)
それについては、こう反論します。僕は、その患者さんは、歩行練習するにはまだ早いと思っています。介助の手がひと時も放せない患者さんでも、介助すればどんどん歩けます。そうすると、その患者さんの脳は、「俺って結構歩けるやん」と勘違いし、ますます立ち直ろうとしなくなるのです。それくらい、介助者に依存した歩行練習は自立歩行の獲得に良くない影響があると思っています。そんな患者さんは、まずは、治療台を上肢で支持しながら、ステッピングや立位保持が一人でできるように時間をかけるべきです。(そんなこといっても、少しは歩行練習しないと患者さんは楽しくないです。)

少し大胆なことを言いましたが、一方で、確かに免荷式トレッドミルとか吊り下げ式歩行器とかでドンドン歩く練習することが歩行能力の向上に効果的だというエビデンスは昔からあります。でも、この練習方法は歩行中バランスを失って転倒する患者さんについては、自立歩行には導いてくれないと思っています。もっと違うところで効果を発揮します。(その辺の詳しい話はまた今度したいです。)

まとめると、歩行中、バランスを失って転倒するリスクのある患者さんが自立歩行を獲得するには、どれだけ介助なしで歩く練習に挑戦させてあげられるかがカギで、そこんところが、臨床家としてのセラピストの腕の見せ所、という話です。

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今の職場の建物の壁にアートが描かれていました
(こんなクレーンの上でスプレーしてました)

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