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療法士の介助の手が課題の難易度を決める

今回は、リハビリテーションの現場での、動作練習中の療法士の介助の手は課題の難易度調節の役割をする、いう話をします。

コロナの渦が、再度日本列島に接近していますが、そんな中、来週の沖縄旅行の予定を中止にすべきか少し迷っている、そんな今日この頃です

リハの臨床において、患者さんが新たな動作を獲得しようとした時、ほとんどの場合は、それまでに「学習」という過程を通る必要があります。そこで、僕たち療法士の役割は、いかにして、患者さんに、その「学習」を効率よく起こさせるかの道案内をすることです。

その効率の良い学習にとって、鍵となるものの一つに、「課題の難易度」があります。

ある動作の獲得をゴールとしたとき、走り始めからいきなりゴールを目指すのではなく、ゴールまでの道のりをいくつかのショートステップに分け、そのショートステップを一つずつクリアしていくことで最終的にゴールにたどり着きます。このショートステップをどれくらいの距離に置くかというのが、課題の難易度を設定する、ということになります。

これを、歩行リハに置き換えてみます。例えば、歩行中、右の遊脚期で身体が傾きバランスを崩し転倒する患者さんにとって、ゴールは歩行中、体が傾かずに右下肢が振り出せるようになることです。この場合、いきなり、ひたすら歩行練習するのではなく、まずは、療法士介助の下、体を傾かせずに右下肢を振り出すステップ練習をするはずです。このときの、療法士の介助の仕方、介助の量そのものが、課題の難易度となっていて、それは、もっとも効率よく学習が起こるものに調節されているべきです。

ところで、効率よく運動学習が起こる課題の難易度は、その課題の成功率が6~7割りくらいと言われていると思います(確か。。詳しいところは山ほど論文が出ているのでそちらでお願いします。。)つまり、ちょっと難しいくらい、ちょっと頑張らないとダメなくらいといったところです。

これを、先ほどの歩行リハにまたまた置き換えてみます。ステップ練習の際、まったく介助なしで振り出し練習すると、100%自分自身でバランスをコントロールしないといけないので、何度繰り返しても上手に振り出しできる回数が少なく、なかなか上達していきません。これは、課題の難易度が高過ぎるためです。一方で、ステップ練習の際に、療法士ががっつり患者さんの体幹をホールドして完璧な姿勢で行うと、それをやる度に毎回上手に振り出せます。これでは、患者さん自身が頑張る余白、失敗する余白が少なすぎて、いざ、療法士が介助なしで振り出してみると、ちっとも進歩していないなんてことになります。これでは、課題の難易度が低すぎます。

この場合、ステップ練習の際、患者さんがギリギリ自分でバランスを保てるくらいの介助量で療法士が患者さんの体を介助しておくのが、最適な課題の難易度だと思います。そして、その課題を繰り返していると、学習が起こり、患者さんは振り出しの際に、楽にバランスを保てるようになってきます。すると、療法士は介助の手をさらに緩め、課題の難易度を少し上げるのです。こうして、ショートステップを刻んで最終的に自立歩行のゴールに着きます。

この、患者さんの学習にとって最も効率のいい介助量というのは、その時の患者さんの運動能力に応じて、療法士が臨機応変に調節する必要があります。それには、療法士の、自身の手で患者さんの動きを感じる力が圧倒的に重要になってきます。そこが出来るからこそ、患者さんの運動能力に応じた細やかな難易度設定ができ、ショートステップをいくつも作って、最短でゴールにたどり着けます。

これらの手続きは、ロボットでは無理だと思っています。どんなに便利な歩行リハロボットも、この患者さんの運動能力に応じて、細やかに難易度設定はしてくれません。ここがある限り、ロボットには負けない自信あります。
(逆に言うと、ここがなくなったら僕らいらないかもです。。)

今回の話は、歩行練習を例に挙げましたが、全ての療法士のハンドリングを用いたリハビリテーションに当てはまることだと思います。

まとめると、僕ら療法士の介助の手は、患者さんに課題を与えるとの同時に、その難易度を調節する役割があって、そこのところをもっとも効率よく学習が進むように、いかに調節するかが、僕ら臨床家としての腕の見せ所、という話です。

久しぶりに見たらやっぱりすごいです。
(いつの間にかしっかり歌手としてスタートしてました。)

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