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営業マインドで乗り越える脳出血と後遺症

10月5日に回復期リハビリテーション病院を退院した。リハビリ病院での入院生活は、予想を遥かに超えて濃密な毎日だった。最初の頃は脳の浮腫が引いておらず、記憶も定かではない。救急搬送されて以降のサマリーは、一旦下記にまとめることとする。

にしても、Profieeて....用途が的外れすぎて、書いていて自分で笑った。他にいいのが発見できず終いだったので、あしからず。
リハビリ病院での4ヶ月で、一人暮らしができるレベルのADLは確立できた。もともと家事は得意なので、家庭内では健康な方を含めても平均以上に使えるリソースとして仕上がったはずだ。家事全般はダメダメだという男性諸君は、私よりも使えない可能性があるので、頑張って奥様から教わることをお勧めする。後から困るのは自分なので。ちなみに、世の中にはこんなのもある。

あとこんなのとか。これは私も毎回楽しみに観ている山田千紘さんのチャンネルだ。

そこそこ動けるようにはなったものの、脳出血の原因となった病気に対する治療はまだ受けておらず、当然ながら根治していない。したがって闘病はまだまだ続くのだが、一旦の締め括りとして自身の日々をまとめる。

病気でなくとも、突如として想像を越えた事態に陥り、足踏みをしてしまう…そんなことは、多かれ少なかれ誰しも経験したことがあるのではないだろうか。

このnoteが、そんな悩める皆さんにとっての一助となることを願う。そして、営業職をはじめとする全てのビジネスパーソンは、ご自身のおかれた環境で身につけたことを元に、どんな苦境をも乗り越えていけるのだということを胸に留めていただき、安心して(?)明日からも毎日を楽しんで過ごしていただけると嬉しく思う。

前回までの流れ

偉そうなことを言ってはみたものの、突然こんな状況に置かれたことで、私自身も当初は動揺しまくりだったし、何なら病みかけていた。あの当時に心療内科に行っていれば、別の病気としても診断を受けていただろう。そこから少し落ち着き、倒れて1ヶ月経過した際の状況はこちらだ。

自分の意図するように体は動かないし、オペで頭の一部は剃り上がり、10日ほど風呂にも入れず髪はボサボサ。頭に靄がかかったようで、人の名前を覚えられない。体を保持できないため手洗いにいけず、用を足したいと言うと「オムツ付いてます。どうぞ。」と言われる。絶望しかなかった。外見を大切にしたい私は、あまりに人間的でない状況を前に、初めて「もうこのまま死にたい」と思った。
そんな私も、ずっとウジウジ言っていても状況が変わらないことくらいは理解していた。むしろ、前に進む他ないという現実に絶望すら感じた。まずはアクションを起こす必要があったが、当初の脳内は、疲労と混乱でパンク寸前。感情のコントロールも効かず、優しい言葉さえも鬱陶しく感じてしまう。とてもじゃないが、冷静に先を見据えて初動を決める判断はつかなかった。だが進む必要があるし、自分がこのままなんて受け入れられない。でも何も思いつかない。という無限ループに陥っていた。

困った時のフレームワーク

こんな時は「真似をする」「あてはめる」というのが最も手っ取り早い。そもそも、私は超凡人だし、こんなえぐい状況の打開策を、自分で考えるなんていう高度な所業は不可能だ。かと言って、誰かの言う通りに動くだけでは納得できない。面倒くさいタイプなんだな自分…ということで、自分を信じて考えるよりも先に動くことにした。

大切なのは既出感

一見、経験したことがないように感じる状況でも、紐解いて見ていけば、何かしら部分的に経験したことのある点があったりするものだ。
むしろ、こちらから共通点を探すべきで、これにより「あの時のあれか」と安心することができ、眼前の脅威に対する苦手意識は薄れ、「もう少し触れてみるか」「ふむふむ、なかなかイイじゃないか」と、主体的かつ能動的に接することで、物事が良い方向に進んでいったりする。「好きこそ物の上手なれ」とはよく言ったものだ。

このテクニック的な部分を分解していく過程で、とても良い記事を見つけたので、ご興味があれば是非ともご覧いただきたい。「抽象化と具体化」はビジネスパーソンにとって必須のスキルだ。「抽象化と具体化」について理解できない方は、勝手にググってほしい。
ちなみに棚橋さんはこう締め括っているが、激しく同意した。

誰かに教えてもらおう、外から決めてもらおうなんて魂胆でいたら、どんどん仕事がなくなっていくんじゃないか

抽象化と具体化により、「既出感」を脳内にインプットさせることが、自身をアクティブにするためのトリガーだと考え、私のおかれた状況もその流れに乗れば勝ちだと考えた。なので、ひとまずやってみようというライトな気持ちで行動していた。ちなみに、このライトな気持ちも大切である。
私の場合は、結果的に社会人になって以降ずっと触れていた「セールス」を、闘病のためのフレームワークとした...そんな感じだ。

せっかくなので、自社メディアをチラつかせておく。【Sales Tech Hub|すべての営業チームのためのセールステックメディア】、是非ともご購読をどうぞ。

今回の記事で私が伝えたいことの本質は自身の原体験からくる既出感を元にして逆境を越えることであり、「営業やってれば優良マインド」ではない。逆に言えば、「原体験をフレームとして、逆境を楽しみつつワークできれば、誰もがどんな苦難も乗り越えられる」と思うのだ。

Sales Tech Hubの記事もリンクしたことだし、ここまでで充分だ。残りは出がらしとして捉えていただければよい。
出がらしがやたら長い点を見て、やはり脳疲労を感じるのは早くなったなといった感じだ。と、病気のせいにして上手く精神をニュートラルに保つ技を身に付けた。

Sales Tech Hubの記事に記載された項目で、私の闘病にも使えそうなものがあったので、ご紹介しておく。まあ自社メディアなのだが。

記事には以下のような記述がある。

1.必要とされる5つの営業能力
1.1 ヒアリング能力
1.2 クロージング能力
1.3 コミュニケーション能力
1.4 課題分析能力
1.5 時間効率化能力

1.1 ヒアリング能力

記事では、『顧客の「困った」「解決したい」を聞き取るのが営業のヒアリング能力です。』とのことが説明されている。幾多もの解釈があるだろうが、顧客のおかれた状況を詳細に聴き取ることで、情報収集とともに心理的な距離を縮めようと言うことだろうか。
私の場合、意識が戻った時には突然に左半身が動かない状態を自覚した。まずは「このよくわからない状態を自身で的確に理解すること」をゴールに置き換え、そのための情報収集に動いた。

また、ヒアリングにより回収する情報の粒度は細かいほど良いともされている。
私自身、当然こんな経験は初めてなので、訳がわからない状態だったし、ぶっちゃけ今でも受容できずにいる。何も気にせずランニングしたいし、ファッションを楽しみたい。でもできない。
それでも、少しでも前へ進めるために、まずは自分の状態を的確に理解する必要があった。良い点も悪い点も、全ての事実を正しく理解することでしか、受容はできないと確信したからだ。
考えてみれば、世の中の大半のことは自身の受容可否に関わらず進んでいくし、そうしなければならないことの方が多いので、ああだこうだ言う前にやってみるしかないんだと思っている。エビデンスを取ったところで、現実はイレギュラーの連続だ。用意したことに当てはまることの方が少ない。
そういう意味では、スタートアップやベンチャーでの就労経験により、トライアンドエラーのマインドは当然のように私の血液に溶け込んでおり、大きく救われた部分だった。

私は、AVM(脳動静脈奇形)のナイダス破裂により、右視床での脳内出血とクモ膜下出血を発症した。脳出血の死亡率は10%ということで「九死に一生」ではない。ただ、死亡率は高くないものの、生存者の70%は神経学的後遺症を残す。私は全身の感覚を脳に伝えるための中継点である「視床」で出血したことで、その細胞が破壊され、左半身の全感覚を失った。そして、出血による血栓が運動を司る部位を損傷させたことで、左半身の上下肢は運動麻痺となった。運動麻痺はちゃんと真面目にリハビリやっときゃ回復するが、感覚麻痺は永久に戻らないという感じだ。
前回の記事で記載したように、私の場合はAVMの存在を把握していなかったため、仮に「脳幹」と呼ばれる部位にAVMが存在し、同じように脳出血を発症していれば、心肺停止で、ほぼ間違いなく即死だっただろう。

最初は同じ病棟にいる「運動麻痺だけの患者」がムカついて仕方なかった。当然彼らは何も悪くないし、むしろ仲間であることは言うまでもない。ここまでは急性期病院でのヒアリングによる理解だ。不足点は家族から情報収集した。家族の心境を理解することで、自身が置かれた状況を客観的に理解しようと考え、倒れた直後からの家族全員の行動もヒアリングしていた。
状況を理解した後は、回復に向けたKGIとKPIを設定していく。リハビリ計画や、リハビリ以外の時間で自身に必要なアクション、想定される懸念や脅威、その場合の対応方針について組み立てるのだ。
回復進捗を定量的に判断する方法はどのような方法で、いつまでにどうなれば良いか、どのレベルになれば、次はどのようなメニューに変わるのか、そのメニューにより得られるメリットは何で、その変化による影響範囲はどこまでかなども含まれる。
これらは相手が医療従事者で、自分が患者だからと言って、口を開けて待っていても自動的に出てくるものではない。まあ、それもそれでおかしいのかもしれないが、私は待ってられないので自分で取りにいくことにした。理由はシンプルで、自分のことだからだ。最も影響を受けるのは自分で、その責任を負い、今後の人生を生きるのも自分だからだ。
また、上記のように取組み開始前だけでなく、常に関係者が保有する情報量を一致させ、全員が同じ目的意識を持てるよう自ら動いた。

1.2 クロージング能力

これは目標と着地点のバランスと理解することとする。目標により達成までの行動は異なり、結果ごとにその先の行動は分岐する。
北海道に行くか沖縄に行くかで空路が異なるのは当然で、誰も疑いようがありません。現地で買うお土産ももちろん異なる。
入院している病院では、月に一度だけ主治医との面談が設定されている。そこには家族も参加して、皆で情報量を一致させるのだが、多くの場合これは主治医からの通達に活用される。患者も「医療機関側に任せておけばなんとかなる」と思っているので、お客さんとして参加しているケースが大半だが、これは大きな間違いだ。
とくにリハビリテーションの場合、医療機関がコーチで、プレーヤーは紛れもなく患者だ。やるのは自分なので、きちんと顛末を理解するのはむしろ当然のことだ。
だいたいの患者はお客さん気分ですし、医療機関側もそれに慣れてしまっているので、当初は無意味な時間を過ごしているように感じていた。こんな面談する時間があるなら、リハビリをさせてくれとさえ思った。ただ、それも自分が他責にしているだけだという認識を持って以降、無駄な文句は垂れずに行動した。
ミーティングを円滑に進めるためにも、面談になってからあれをこうしたいとか言っても遅いので、事前の整備完了はマストだった。また、その意思決定に自身が介入することで、主体的に物事を進めることができると確信した。
私の場合は、担当の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師と一緒になって、事前に翌月の目標と達成までの行動計画を作成した。とことんやりたいので、週単位で行動と目標を決めようとした際には、さすがにリハビリスタッフも引いていた。とは言え、最終的にはきっちりデイリー目標まで落とした。
目標に関しては、あえてハイ達成の計画は描かず、無理して届く範囲のギリギリを目標に設定することした。また、進捗が良い場合には、月半ばから更にレベルの高い目標をしれっと追加する。この時の内容も事前に決めておく。このあたりはストレッチ目標の考え方で問題ない。
達成した場合は次にどのフェーズに進むのか、未達ならどうするのか、これを最低でも毎回3段階ずつ用意する。こうして、常に難しい目標を達成し続けるための舞台を作る。足元を固めれば、あとは必死にやるだけ。まさにどこかで聞いたことのある響きだ。

1.3 コミュニケーション能力

私の入院した回復期リハビリテーション病院はチーム制のオペレーションで、複数の医療専門職で構成されたチームに私が預けられる。そこでは、毎回シフト的にスタッフが入れ替わるので、担当者以外とも情報を一致させることは非常に重要だった。
その体制を取っているからには、病院側も当然ながら申し送りを的確にやっている。とは言え、どうしてもヒューマンエラーによる情報の不一致は発生する。なので、担当者が不在の際もこちらから情報提供し続けることを「患者の責任」と考え、私が実施した。スタッフがローテーションする状況下では、いつも変わらず定位置から全体を見渡せるのはむしろ私なので、一人当たりの情報量としては、スタッフよりも私の方が多かったかもしれない。それに自分の体のことだから。
ここで言いたいのは、相手の状況のせいにせず、こちらから情報を提供し続けるそしてそのリアクションを取り続けるこれによりキャッチボールを繰り返すことで互いを理解するということだ。

1.4 課題分析能力

記事には、以下のような記述がある。

「顧客自身も把握していない課題」を見つけてくれるパートナーは、先方にとって価値ある存在になります。

医療機関側でも分からないことがあるという前提で物事を進めるべきだと考えた。自分の状態が分からない→医療従事者に相談→解決する。ここまでが普通だ。
でも彼らは、この病気になったことがなければ、後遺症を背負ったこともないので、状態に応じたプランニングとオペレーションを組 む上で、私の自覚症状や状態のフィードバックが必須なのだ。
専門的な分析については、当然彼らの方が長けているので、私は常に自分の状態を伝えることとした。向こうから聞かれなくても伝えた。ちょっと嫌な顔をされても、相手が的確な判断をするために必要な情報として伝えた。できるだけ細かく、可能な限り高頻度で伝えた。
例えば、「これができなくて悩んでいるが、それはこの先必要なことか?」「昨日と比較して動作がこういう風に違うように感じるが、どうか?」
自身の所感と意見、それから目標を明確に伝えた上で、専門家の意見を聞き、一緒にプランを練る。良い方向に進んで当然だ。

1.5 時間効率化能力

3〜4ヶ月の入院期間というのが当初の予定で、終わってみれば丸4ヶ月、日数にして116日間のリハビリ入院だった。これがなくとも、私のように身体的障害だけが残った場合、どんなに長くても回復期リハビリテーション病院では、150日×3時間=450時間のリハビリテーションしか受けられないことは、国として決まっている。
その時間内で自分の体を回復させるので、時間が充足しているはずがない。でも使えるリソースは自分一人。1分も無駄にしたくない。
1日のリハビリテーションは3時間までなので、それ以外の時間に自身で取り組める自主トレメニューを各職種毎に考案いただいた。その結果は量と精度で評価し、一定水準に達した時点で次のステージにレベルアップさせる。
同じことをちんたらやるのは無駄なので、意図的に努力し続けなければ置いていかれる状況を作り出す。

その他に注意したこと

・医療専門用語を理解して自ら使う(共通言語での会話)
・医療スタッフのメリットファーストで会話する
・約束を守る(期日、品質、禁忌)
・譲れないもの・ことを共有し続ける(性質への理解)
・自主トレは見える場所で(パフォーマンス)
・情報の種類によって、その量はスタッフ<患者ともなる。患者同士の情報交換を欠かさない。

最後に

見たこともない脅威を目の当たりにしても、ご自身が慣れ親しんだものや、大好きなものに置き換えてみてほしい。そして、その状況をも味方につけてしまえば良いのだ。急性期を合わせれば5ヶ月間の入院で、私の脳内には「これまでの経験のおかげで病気も乗り越えられる(られそう)」という、新たな原体験と成功体験がインプットされた。こうして最終的にこのような体験を積み重ねることにより、更なる脅威が現れようとも立ち向かうことができ、この連続が自身の成長に繋がると思っている。

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