中里由宇(なかざと・ゆう)

本業はテレビディレクター。監督・脚本を担当した劇場映画もあります。 ここでは小説を発表…

中里由宇(なかざと・ゆう)

本業はテレビディレクター。監督・脚本を担当した劇場映画もあります。 ここでは小説を発表したいと思いますので、お時間ありましたらぜひ!よろしくお願いします! 📩お問い合わせ:https://note.com/yu_nakazato/message

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【短編小説】 日陰の恋 (4/4)

「新聞配達の人」と対峙する春菜。 2人の邂逅の先にあるのは光か影か…『日陰の恋』完結。

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    • 【短編小説】 日陰の恋 (3/4)

       目を覚ますとすでに日が傾きかけていた。  真樹への怒りを溜め込みすぎたせいか、きのうの夜から体がだるくなり、朝起きると体温が39℃を超えていた。学校を休んだ私は、パートに出かける母が置いていってくれた風邪薬を飲み、その後ぐっすりと眠った。  布団から這い出し、空気を入れ替えるために窓を開けると、真樹の家の前に人影を感じた。目を凝らしてみると、新聞配達のあの人だった。 「…なんで、こんな時間に?」  真っ昼間にいったいどうしたんだろう。不思議に思いながらも、私にとっては願っ

      • 【短編小説】 日陰の恋 (2/4)

         私はきょうも、窓辺で震えながら新聞配達の人を待った。ようやく手に入れた格安スマホで、彼の姿を撮影するつもりだ。バイクの音が聞こえたと同時に、スマホの録画ボタンを押す。彼のバイクが、スマホの画面にフレームインする。こっそり撮影しているという背徳感。なぜか顔がニヤついてしまう。そのとき、ふと視線を感じた。顔を上げると、ペンシルハウスの3階から真樹がこっちを見下ろしていた。急いでカーテンを引いたが遅かった。一番見られてはいけない奴に見つかってしまった。  真樹と顔を合わせないよ

        • 【短編小説】 日陰の恋 (1/4)

           この部屋は、窓辺であってもとにかく寒い。外にいるより寒いのではないかと思うほどだ。私の家が築三十年を越える、気密性の気の字もない古アパートであるうえ、目の前にそびえる三階建ての建売住宅が四六時中日差しを遮っているのだ。忌々しい、まるで鉛筆のように細長いペンシルハウス。その玄関を見張り、もう20分は経っただろうか…。遠くから、バイクの音が近づいてきた。    新聞配達のバイクでやってきたその人は、手慣れた様子でペンシルハウスのポストに朝刊を突っ込むと、再びバイクに跨って消えた

        【短編小説】 日陰の恋 (4/4)