切れ端

どんよりとした日の公園 ベンチに座って犬を眺める

じきに雨が降るよ 湿っぽい遊具の鉄の匂い

どっかに行きたいけれど 行きたいところなんかなくて

どこか広い 広い世界に囚われてたんだ

割れた爪が痛む午後 商店街を通り抜けて

いつもの果物売りのおじさん 会釈して坂を上っていく

本を広げて 栞はどこかに落としてきた

霊でも憑いたような寒さ パーカーの前を閉じて

植物園とセーラー服 ウツボカズラの花の宵

スマホの明かりだけが頼り 電脳世界と三千世界

おやすみ世界の六文字は 誰に向かって投げようか

石灯籠の続く道 見上げれば梁の塔の闇

白さの光る猫の腹 ごはんは勝手に出てくるかい

入道雲が切り裂いた 暮れの陽光果ててゆく

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