ぴよりーの育児奮闘記「どこもかしこもドリカム」
少し前から "つかまり立ち" に夢中のぴよりーの。
最初は父や母の体につかまってえんやこらと立っていたのが、みるみるうちにいろんな場所をつかまりスポットにしてスッと立ち上がるようになった。
先日から、数歩ではあるものの "つたい歩き" も始めている。
そんなぴよりーのは、壁に手をついて立ち上がるのが得意。そして、まるで向こう側に何か訴えるかのように壁をペチペチ叩く。
暇さえあれば、あっちでペチペチこっちでペチペチ。
父はその行為を「ドリカム」と呼んでいる。
おそらく
の、ことだろうと思う。
いや
の、部分かもしれない。
「ぴよちゃんがドリカムやってる」
と、始めて言われた時には、一瞬何を言っているのかと思ったが、すぐにあぁアレかと思たのはドリカムの凄さだろうか。母の凄さだろうか。
ペチペチペチペチ。
ペチペチしている間に、ぴよりーのは9ヶ月になった。すくすく成長している。
ぐんぐん大きくなっている。
離乳食もモリモリ。ミルクもゴクゴク。
と、喜んでいたが、ついにぴよりーのに変化が。
どうやら離乳食を肌で感じたくなってきたらしい。
お茶碗にズボッと手を突っ込み、お粥をグチャっと握りしめる。その手を顔の前に掲げ、グチャグチャと何度もにぎにぎする。
それをお口へ持って行ってくれるのならば母はまだ救われるが、その手はバンッとテーブルへ。ネチャネチャと音をたてながら塗り広げられてゆくのだ。
その間ぴよりーのは笑わない。ただ、グチャグチャになるお粥を、ネチャネチャと広がるお粥を、じっと見つめている。なにやら研究しているかのように。
「ぴよちゃん。今日のご飯の感触はどうかな」
なんて、今となっては落ち着いて声をかけられるようになった。
しかし、それが始まった当初、母は爆発しそうだった。
せっかく作ったのに食べられることなくネチャネチャにされ、ありとあらゆる所にボトボト落とされる。モヤモヤ。掃除も大変。イライラ。そして何より、食べなくなったことへの不安。グルグル。
大丈夫なのか…?食べないと…栄養が足りなくなるのでは…?どうしたらいいんだ…?
と、なんとか口に入れようと真顔で無言のご飯タイムになってしまっていた。
これなら食べる…?あぁ、また食べてくれない…。コレだとどう…?コレもダメか…。と、焦りばかりが膨らみ、次第に離乳食の時間がやってくるのが怖くなった。
それでも毎日朝夕。くじけず離乳食を作り続けていると、あることを思った。
もしかして、食べる、食べないは、メニューじゃなくて気分なのでは…?
同じメニューでも食べる日と遊ぶ日がある。ということは結局、その時の気分。
そう思った時、ふと真顔の自分に気が付いた。
それからは、もうネチャネチャにするぴよりーのを見ても、ぴよりーのなりに何かを学んでいるのかもしれない。と、笑って声をかけられるようになった。
食べない時もあれば、食べる時もある。ぴよりーのはどんどん人間らしくなっているのだ。だから、どっちであれ、とにかく母は毎日離乳食を作り、食べさせてみればいい。これもいつか終わりが来るはずだろう。
コレもドリカムかもしれない。
いや、コレの方がドリカムかもしれない。
まさに、何度投げ捨てられ、ネチャネチャになっても、母は離乳食を作り続けている。次はもうこのネチャネチャブームが終わるかもしれないと思いながら。
ぴよりーのにとって、コレがドリカムかどうか、どれがドリカムか、なんて絶対にどうでも良いだろう。
しかし母は今日も、ドリカムを脳内で再生しながら、ネチャネチャになったベビーチェアを掃除している。
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