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SaaSの各種指標について解説

SaaSビジネスは、ARR/MRR、Churn Rate、LTV、CAC、ユニットエコノミクス(= LTV ÷ CAC)などのSaaSメトリクスをベースとして、比較的科学しやすく、再現性のあるビジネスと言われています。

今回は、その各種指標についてまとめました。


1. MRR(Monthly Recurring Revenue)

説明: 毎月の定期収益を示します。

計算例:

  • 顧客A: 10万円/月、顧客B: 20万円/月、顧客C: 15万円/月

  • MRR = 10万円 + 20万円 + 15万円 = 45万円

2. ARR(Annual Recurring Revenue)

説明: 年間定期収益を示します。MRRに12を掛けた値です。
ARR(Annual Recurring Revenue)とは、毎年くり返し得られる売上のことで、「年間経常利益」や「年間定期収益」とも呼ばれます。サブスクリプション(継続購入、月額/年額制)のサービスによる1年間の売上がこれに含まれることから、特にSaaSビジネスで重要な指標です。

計算例:

  • MRR = 45万円

  • ARR = 45万円 × 12 = 540万円

参考値: 国内の上場SaaS企業の平均値は94.1億円、中央値は55.1億円※1

※1:以下より引用

売上全体との違い:

  • ARR : 定期的な収益のみを対象とし、サブスクリプションやサービス契約による年間収益を計算します。

  • 売上高:一般的にはすべての収益を含むもので、定期収益以外にも、一度きりの販売、ライセンス料、プロフェッショナルサービスの料金なども含まれます。

したがって、ARRは売上の一部であり、特に定期的な収益部分を強調したものです。SaaSビジネスに関しては、ARRはビジネスの安定性や将来の収益予測を行うための重要な指標とされています。

3. CAC(Customer Acquisition Cost)

説明: 新規顧客を獲得するための平均コスト。

計算例:

  • マーケティング費用: 1000万円、新規顧客数: 100

  • CAC = 1000万円 / 100 = 10万円

参考値: 数万円〜2,000万円弱と、かなりボラティリティは大きい。CACが高い水準にある企業は、テレビ広告の放映などにより広告宣伝費に多額の費用を投資しているケースが多い※2

※2:以下より引用

補足: 「CAC回収期間(CAC payback period)」まで算出してみると、より深く企業の顧客獲得における状況が見えてきます。

  • CAC payback period[ヵ月]=1顧客獲得コストの総額 ÷(1顧客の平均売上金額×粗利率)

CAC payback periodが短いほど、効率良く顧客獲得が進んでいることを示し、目安は「6〜12ヵ月」と言われています。

また、CAC payback periodは、ユニットエコノミクスとセットで評価する必要があります。

ユニットエコノミクスとは、「1顧客あたりの採算性を示す指標」です。ユニットエコノミクス > 3(LTVがCACの3倍大きい)を満たしていれば、ビジネスを黒字化できている健全な財務状況であり、適切な数値だと言われています。

ただし、ユニットエコノミクス > 3を満たしている場合でも、CAC payback periodが12ヵ月を超えていると投資効率に問題がある可能性があります。そのため、ユニットエコノミクスとCAC payback periodはセットで見る必要があります。

4. LTV(Customer Lifetime Value)

説明: 顧客が生涯にわたってもたらす総収益。

計算例:

  • ARPU: 2万円/月、平均顧客継続期間: 24ヶ月

  • LTV = 2万円 × 24 = 48万円

参考値: 一般的なLTVのCAC比率は3:1以上が望ましいとされています。

5. Churn Rate(解約率)

説明: 一定期間内にサービスを解約した顧客の割合。

計算例:

  • 開始時顧客数: 100、終了時顧客数: 95

  • Churn Rate = (100 - 95) / 100 = 5%

参考値: 年間解約率が5%以下であれば健全な状態とされています。

補足: 解約数が新規獲得数より重要といわれる理由

出所不明の法則ですが、マーケティングの世界には「1:5の法則」、「5:25の法則」と呼ばれる法則があります。

1:5の法則は、新規獲得にかかるコストは、既存顧客に販売するコストの5倍かかる。5:25の法則は、解約率を5%下げることで、利益が少なくとも25%改善されるという法則です。

どちらも得られる利益が同じでも、新規獲得には既存顧客の5倍のコストがかかるという意味で、この後紹介する「LTV>CAC」の図式を成立させるうえで欠かせない考え方です。

6. ARPU(Average Revenue Per User)

説明: 1ユーザーあたりの平均収益。

計算例:

  • 総収益: 1000万円、ユーザー数: 500

  • ARPU = 1000万円 / 500 = 2万円

平均値: 顧客単価は、各社のプロダクトやターゲットが異なるため、単純比較しても意味がありません。(参考:https://onecapital.jp/perspectives/saas-metrics)

7. Net Revenue Retention(NRR)

説明: 既存顧客の収益保持率。

計算例:

  • 初期MRR: 100万円、解約: 10万円、アップセル/クロスセル: 20万円

  • NRR = (100万円 - 10万円 + 20万円) / 100万円 = 110%

平均値: NRRが100%を超えると、顧客の維持と追加販売がうまく機能していると評価されます。

8. Gross Margin

説明: 売上総利益率。

計算例:

  • 収益: 1000万円、売上原価: 400万円

  • Gross Margin = (1000万円 - 400万円) / 1000万円 = 60%

平均値: SaaS企業の典型的なGross Marginは70%〜90%です。

これらの指標を参考にしながら、SaaSビジネスの健全性や成長性を評価することが重要です。市場や企業規模によって適切な基準が異なるため、企業の状況に応じた分析が求められます。


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