オリジナルモデルARENAの開発
今から2年前2020年の春くらいからNEWモデルの開発を始めました。
ちょうどコロナが国内に入ってきて色んなことがストップし
世の中ライブとかイベントがみんなキャンセルされ今後の状況も全く見えない、、、という頃にNewモデル【ARENA】というモデルの開発を始めました。
もちろんその頃にはまだARENAというモデル名はなかったですが。
この頃はAddictoneを始めて8年くらいで、まだAddictone独自のモデルというのはまだ持っておらず
ストラトやテレ、ジャズマスターなどトラッドな物を中心に、あとはメイプルTopのディンキータイプのモダンシリーズなんかをUSA製のボディ、ネックで製作するというスタイルでやってきていました。
楽器はセットアアップが一番重要だと考えて
一流のセットアップのできるビルダーと組んでやれば良いと思っていましたし(もちろんそれは今も同じように考えていますが)、それで荒木氏と一緒にやってきたわけです。
例えば同じストラトを作ってもどうしてこんなに良い楽器とそうでない楽器に分かれるのか、、
セットアップが全てではないですがかなりの部分を占めるのは間違いありません。
あと残りの部分は材、塗装、パーツ
どこも手を抜かなければそこそこ良いギターって作れると思っているのですが
商売としてとなると
販売する価格帯によって原価を落として、、とか色々あるわけです。
その辺の話は前に書いた
Addictoneはcustom shopというタイトルのnoteを見てもらえればと思います。
Addictoneのビルダーの荒木さんがギターテクニシャンとして長年色んなミュージシャンの楽器のセットアップしてその楽器が多くのレコーディング現場やライブ現場で使用されて来たという実績あり(もちろん今も現役で活躍されています)
それを生かしたギター作りをしたいと考えてやってきました。
ただ単にギターを生産して売るというブランドではなく
製作から、それを楽器として使用するセットアップまで一貫してやるギターブランド。
僕がAddictoneを始めた当初そういったブランドはほぼ(僕の知る限り)なかったですし
(あったかもしれないですが楽器店にはそういう楽器は並んでいたという記憶はありません)
あ、ここでセットアップって言ってるのは
完成したギターをそのままプロの現場に持っていってチューニングだけしたら
そのままで使ってもらえるレベルのセットアップという話です。
一般的に楽器屋さんの調整してありますっていうものとは全く別の話です。
(別に楽器屋さんを悪く言っているのではなく専門職的なレベルの調整です。)
よく有名なミュージシャンがライブやレコーディングで個別で雇っているギターテックのような感じです。
実際荒木さんはそういう仕事を何十年もしていますので。
前置きがだいぶ長くなりましたが
2020年コロナ始まって先も見えない、オーダーはリペアの仕事はあっても自粛でミュージシャンやお客さんが事務所に来てくれるということもほとんど無くなってしまったので
いよいよこのタイミングで漠然と頭の中にあって温めていたアイディアでAddictoneのオリジナルモデルの開発をスタートすることにしたのです。
まずは荒木さんに僕の考えているギターの構想を聞いてもらい
具体化するために技術的な部分をサポートしてもらい設計のベースを作っていきました。
いくつかアイデアはあったのですが
まず最初に作りたかったのがピックガードレスの2ハム仕様のギターでした。
まず2ハム仕様のギターって中途半端なギターが多いな。。とずっと思っていたんです。
オリジナルのギターをリリースするのであれば
まず今までにないギターでないと意味がないと考えていたので
そこに関してはかなり意識して開発を進めていきました。
まず2ハムのギターといえば
やはりレスポール。唯一無二のギターだし最強のギターだと思っています。
次はPRS。これもレスポールと同じセットネックでマホガニー系のギターですが
レスポールとは違った取り回しの良さ、サウンドも守備範囲の広さがあって
多くの人に支持もされている良いギターだと思います。
ただそれ以外のソリッドギターでの2ハムって色々ありますが
そこまで大きな特徴があるわけではないですし
実際に弾いてみても、、うん。。そうだよね。って感じでした笑
ほぼ90年代くらいから進化の止まっているように思っていました。
もちろんいろんなメーカーがそれ以降も2ハム仕様でも作ってはいましたが、基本的に設計に目新しい部分はほとんどなかったように思います。
もちろん良いギターもたくさんあるんですが
弾きやすいということ以外で
設計が優れたギターって感じのものはほとんどなかったように思います。
オリジナルのボディ形状で2ハムっていうだけで何が良いっていうのが
個体差で良い悪いがあるくらいでそこまで特筆するポイントもないギターがほとんどだなと感じていて
まだまだ良い2ハムのギターが作れるはずだと長年感じていました。
実際後々ミュージシャンと話していても同じように感じていた人も多かったです。
選択肢は色々あるといえばあるけどこれ!という決定打がないので
とりあえず定番のPRSを使ってる人も多かった気がします。もちろん先ほども書きましたがPRSは設計も優れているし独自のサウンドや世界観があるのでそれだけミュージシャンにも支持されて人気もあるのだと思います。
2ハム仕様のギターといえば
レスポール、PRS,もしくはAddictoneのARENA
だよね!
って言われるくらいの物を作りたいと思って開発をしました。
正直こんなこと本気で考えて開発されてるギターってあまりないと思うんです。
ありますかね??
ネックポケットの面積、深さ、ヒールカットの形状、
ボディの形状や体積、バックコンターの大きさ、
ブリッジのリセス具合とトレモロユニットの可能範囲
ピックアップの選定(マグネットの種類、抵抗値、2つのPUのバランス)ピックアップのマウント位置など
決めていかないといけないポイントはかなり多く、ただ順番に決めれば良いのではなく
それぞれが他の部分に与える影響も多いため
プロトとして組み込みをした回数は10本にもなりました。
まずピックガードレスのギターの最大の?問題点はボディ面から弦までの距離。
ストラトなどはピックガードがボディの上に付いているためピックガードから弦の距離が8mmくらいから10mm前後というのか普通かと思います。多くのピックガードレスのギターは
普通のストラトとかとほぼ同じ設計でピックガードを取っ払ってるだけ(つまり見た目だけ)というのが多いですよね。
なので当然手を置いた時にボディから弦の距離が遠い。。離れてるんです。
ストラトユーザーの人がピックガードレスのモダンタイプのギターを手にした時に感じる違和感ってまずそこが多いのだと思います。
もちろんピックアップがピックガードに載っていないのでサウンドも違うという点もありますが。。
その問題に対してはARENA最大の特徴でもありますが
ブリッジのベースプレートをボディ面とツライチになるまで完全に落とし込むという仕様にしておりネックポケットもそれに合わせて通常よりも深くしてピックガード付きのギターと同じ弦高(ボディから弦までの距離)にしています。
もう1点はハムのタップした時の音の細さ、、
使えなさ。です。
まぁここはある程度仕方ないと思われていたと思いますが
そこも解決したくARENAでは一般的なハムのギターでは使わない250KΩのポットを使用しハムをタップしたシングルコイル時に合わせてアッセンブリーを組んだり
その代わりに若干ブライト気味な、レンジの広いアルニコ4マグネットのハムを採用することでハムを使う時にこもって聞こえないようにバランスを取ったり
サドルビスやネックジョイントプレートの材質に至るまでこだわり
トータルでボディネックの振動感、アウトプットされるサウンドの分離感やレンジ感も
様々なテストを通して納得いくところまでテストをしていきました。
最初にあったアイディアのいくつかは元々荒木さんが30年以上前にKiller Guitarでやっていたことを受け継いだもので
パーツ類のリセス、コントロールの配置などがそれです。
せっかく一緒に仕事をしているのだからそこはオマージュ的に取りいえれたいということで僕からアイディアを使わせて欲しいとお願いしました。
何がすごいって30年以上前に荒木さんがKilllerでデザインしたギターが今も現行機種としてそのまま作られ続けているということ。
とりあえずそのDNAはAddictoneの新しい機種に入れておきたいと考えていました。
ただサウンドや弾き心地、現在のミュージックシーンで必要とされる物というのは
1980年代とは大きく違うのでそこはもちろん新しいアイディアを入れていく必要がありました。
見た目はモダンでも
サウンドや弾き心地もトラッドな雰囲気も感じられるギター。
そういうものでないと現場では使い難いかったりレスポールやPRSの代わりに使ってみようかなとはならないと思っていました。
そんなギターが作りたいと思って
完成させたのがARENAです。試作を繰り返し最終的に製品版が出来上がった時は本当に嬉しかったのと同時に世の中のギタリストにどんな評価されるんだろう?ってワクワクしたのを今でもよく覚えています。
最後にネーミングに関しては
このギターはアリーナクラスの大きな会場で鳴り響かせてもらいたいという気持ちを込めて付けました。
実際に発売してから1年たってユーザーのミュージシャンの方々が
アリーナやドームクラスのライブでも使用してくれるようになりました!
まだ弾いたことのない人、なんとなく見た目のイメージで興味を持てずにいた方にこそ
是非直接弾いて試してもらいたいギターです。
実際に試したことある人の多くは想像してたものと全然違う!!と言ってくれることが本当に多いですし
レンタルして現場で使ってみて気に入って買ってくれたりオーダーしてくれるプロミュージシャンも増えてきています。
ぜひ一度楽器店でお試しください!