ブックレビュー「ルポ難民追跡 バルカンルートを行く」

 ドイツを目指すアフガン一家に著者が密着したルポルタージュ。

 一家の動向を追うと同時に、厳しい旅路にも関わらず多くの難民・移民が希望をもって移動する様子、彼らが押し寄せるヨーロッパ各国の事情、受入か排除か苦悩する欧州、ISをはじめとする世界の問題にまで触れている。

 著者が追った一家が各国の管理輸送によりわずか数日でドイツ入りを果たした点や多くの難民がSNSの情報を駆使して動く姿には驚かされたが、国民の数に迫る難民が一気に押し寄せ経済・治安が悪化する欧州にて、難民の移動を規制・排除する機運が高まることは自然と言わざる得ない。同時に受入拒否され行き場を失う難民から新たなテロリストを生み出す土壌も高めているのも事実だ。

 テロの脅威にさらされる世界で、多様性の是非が問われる風潮が加速する背景を感じたように思う。

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著者 坂口 裕彦
発売日:2016/10/21
出版社: 岩波新書

●目次
序章  出発
第一章 ギリシャ/プッシュ要因
第二章 旧ユーゴスラビア/アフガン/遠い平和と安定
第三章 オーストリア・ドイツ/地球規模の課題
第四章 排除のハンガリー/シュンゲン協定
第五章 贖罪のドイツ/振り子のようなドイツ世論
第六章 再会


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