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あそこに行きたい

私には「あ、あそこに行きたい」と感じる瞬間がある。でもその「あそこ」が分からない。読んでいる人からしたら意味が分からないと思うのだけれど、私の中ではよくあることだ。
一人で歩いている時、車に乗って景色を眺めている時、朝一番窓の外の朝日を感じながら鏡台の前に座っている時にも感じた事がある。

デジャヴともちょっと違って、「あの時のあの風景綺麗だったな」って思い出が出てくるのとも違う。出てくる感情はいつだって「あそこに行きたい」なのだ。
確か高校生の頃からそんなことを感じるようになった。たまに感じるくらいだったのが最近になって増えている気がする。

こんな事誰にも話したことないし上手く説明できないのがとても残念なのだけれど。誰か同じように感じた事のある人はいないだろうか。そんな気持ちで今書いている。

私はこの気持ち、感じの正体をおそらく「郷愁の念」に似たものなんだろうと思っている。同時に懐かしさもなんとなく感じているからだ。
昔通った道、見た空、その時の風や空気、気温まで、似た環境が揃った一瞬。ほんの一瞬、過去の情景が顔を出す。その瞬間に「あ、あそこに行きたい」と感じる。

だから行きたいと思ってなんとなく記憶を辿ってその場に行っても、しっくりこない。何かが違う。「あの場所に来れた」とは思わない。
おそらくもう“行くこと”はできないところ、過去のある瞬間なのだろう。少し前までそれが分からず、確かめようとその場所へ行ってみたり、同じ状況を作り出そうとしていた。だけどその場所へ行けたことはなかった。

歳を重ね過去が増えていくにつれてその瞬間は増えていくのかもしれない。将来いつか、今現在のどこかが同じように「行きたい場所」となるのかもしれない。
どこの、どんな場面が顔を出してくれるのか楽しみだなぁと思った。



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