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徒然草 最寄り駅、22時

最寄り駅に22時に着いた。仕事帰りの暑い夜。
さっきまで群馬まで撮影に出ていた。その日の群馬は、今年最高気温、40度を超えていた。
スーツを着ての撮影だったから、色々すごく気持ちが悪い撮影だった。
最寄りに着くまでも約2時間の移動。乗り越えは3回もある。

あーー、つかれた。なんか、どっとつかれた。
そんな22時の最寄り駅。
トントンと肩を叩かれた。振り返ると可愛い女の子がいた。

「ゆいさんですよね」
はて?どこかで… ああ!と、先日いったカネコアヤノのライブを思い出した。
近所の子に誘ってもらい、仕事帰りに行った、あのライブにいた子。
近所の子の彼女だと紹介された、その彼女が声を掛けてくれた。

「ああ!あの時の。こんばんは。」
よく覚えてくれていたなと感心した。
わたしだったら間違えてるコトを想像して怖くて声をかけられない、そんな人間だなーと頭の中で思う。

「今帰りですか?一緒に帰りましょう~」
と誘ってくれて、うれしくてちょっぴり恥ずかしくも、22時の夜。
その子は20歳そこそこで、わたしとは10歳差だ。
いつのまにかハタチから10年生きていた。

偶々沼っていたTikTokを「最近見始めたんよ」、という話題を振ってみたら、その子はTikTokをやっていなかった。
「みんな踊ってますよねー」というハタチっぽくない20歳の価値観に、何故か安心するアラサー。自分本位な性格だなーと思う。

他愛もない会話をしながら22時10分。月が綺麗ですね。
「水買うけど、コンビニ行く?」と聞くと「はい」と答える。
いつも通り2Lの水をめがけて店内を歩くと、ふと、ラムネが目に入る。
「ラムネって、売ってるんやね知らんかった」と言うと「飲んだことないです」と答える。
わたしは2Lの水とラムネを買って、コンビニを出た。

「ラムネ、飲んでいいですか?」と聞かれて「勿論」と答える。今すぐ飲んで欲しい夜だった。
潤んだ目で彼女は言う「習ってないから、ラムネの開け方がわからない。」

この子はハタチだと思った。いろんな意味でハタチだと思った。
コンビニの前で、ラムネのやり取りをする。
コンビニの前に、青信号がある。たった5メートルの小さな信号が点滅する。
なんか、夏の良い夜だ。

結局、ラムネは失敗した。
蓋をバンと上から押して暫くそのままにして鎮めることをコトを知らなかったから、
コンクリートが透明に黒くなった。

「じゃあ、また飲みましょうね」
そうしてわかれた、22時15分。2Lの水を持って帰るわたし。

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