見出し画像

#32さよなら/運命の恋

翌日、新幹線に乗る前にアナタが連れて行ってくれた場所。満開の桜が咲く大阪造幣局。初めて行ったその場所はどこよりも綺麗で、アナタと最初で最後のお花見をした。あまりにも桜が綺麗すぎて、あまりにも素敵なデートすぎて、気が緩むと涙が出そうになるのを必死に堪えた。
今までデートらしいデートなんて数えられるほどしかしてこなかった私達。なのになんで最後にこんな素敵なデートスポットに連れてきてくれるの?ズルイよ。
ほんとは離れたくなんてない。アナタと一緒にいたい。春も夏も秋も冬も一緒に感じたい。一年を四季をアナタと過ごしてみたい。アナタと出逢ってもうすぐ7年。こんなに長い時間がもう経っているのにアナタと過ごす時間はいつだって短い。いつだって途切れ途切れ。春のひととき。真夏の数日。秋を過ごした事はあっただろうか。クリスマスも大晦日も元旦も一緒に過ごした事は無い。
普通のカップルがしている事をしたかったな、と思う。近くにいて、会いたいと思ったらすぐに会える距離。そんな普通の事がしたかった。

でも今日が最後と自分に言い聞かせる。本当に最後。自分で決めた事だから。
だから、アナタと過ごしている間は泣きたくない。笑顔で最後の思い出を作りたかった。

新大阪駅の改札口。アナタは"ほんまに最後なん?"と私に尋ねる。私はアナタの目をまっすぐ見て頷いた。"じゃあね"と言い、私はアナタに背を向けて改札を通過する。いつもなら、何度も後ろを振り返り、アナタに手を振ってお別れしていたけれど、ただ前だけを見て歩いた。涙が溢れて視界がぼやける。ムリだ…。私はそのまま化粧室に直行した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?