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『ゴールデン・ボーイ』読みました。

『ゴールデン・ボーイ』

著者:スティーブン・キング
翻訳:浅倉久志


内容
殺人の罪でショーシャンク刑務所に収監され、よろず調達屋として過ごすレッド。
元銀行員のアンディが妻とその愛人を殺した罪で、ショーシャンク刑務所に入所してくる。アンディは無実を主張していた。(『刑務所のリタ・ヘイワース』)

ある日、いかにもアメリカの少年、といった感じのトッドは近所の老人デンカー宅を訪ねる。
突然の訪問、その理由をのらりくらりとかわそうとするも、少年の術中にハマってしまう。
なんと変哲もないその老人は、元ナチで強制収容所の司令官ドゥサンダーであったのだ。
ホロコーストや強制収容所に興味のあったトッドはドゥサンダーに近づき、その時の体験談を聞こうとしたのだった。
しかし、それが不幸の始まりだった。(『ゴールデン・ボーイ』)


【刑務所のリタ・ヘイワース】

スティーブン・キング作品は映像化と切り離せない。
数多くの作品が映画化、そしてドラマ化されている。

しかしなんの皮肉か、ホラー作家で数多くホラー作品を生み出しているにもかかわらず、映画で大ヒットしたのは『スタンド・バイ・ミー』であったり、『グリーン・マイル』であったりする。

今回この本を読んだのは2度目になる。
初見で読んだときには、本のタイトルにもなっているゴールデン・ボーイの映画を観たからだった。


掲載準では刑務所のリタ・ヘイワースからなので、当然そちらから読み始めた。

途中でなにか引っかかるものがあった。
なんか知ってる内容なのだ。

そこで調べてみると、小説では『刑務所のリタ・ヘイワース』だが、映画化されたときのタイトルは『ショーシャンクの空に』なのだ。

そう、映像化されたキング作品で最大のヒットと言っても過言ではないショーシャンクの空にだったのだ。

映画も観たし、一読もしている。印象深いシーンは憶えていた。
ただ細かいシーンは忘れていて、主人公が冤罪を主張しているだけだと勝手に思い込んでいた。

何十年と刑務所暮らしを続け、再審や仮釈放の希望もない。

そんな中で生まれた希望。

それすらも摘まれた絶望。

男は希望の光を目指して穴を掘る。

刑務所のリタ・ヘイワースというタイトルがなにを示しているのか分かった瞬間が素晴らしい。


【ゴールデン・ボーイ】

ガキに大人がいいようにされるのを見るとイラっとしてくる。
それが生意気ならなおさらだ。

元ナチじゃないとしらばっくれるも、警察に言うぞと脅され少年に従ってしまう。そんな冒頭からイラっとしてしまった。

歳のせいか?

少年は調子に乗り、ナチの軍服を用意し着させ行進までさせる。
おもしろがっていたのも初めだけで、途中から微かな恐怖を抱いてしまう。

ホンモノが魅せる凄み、というところだろか。

ある事がきっかけで2人の立場が逆転してしまう。
脅していたはずの少年が脅される側に。

そして2人は同時期に、道を踏み外しはじめる。

似た者どうしの共鳴か。

お互い、出会わなければ平凡に生きれたのに、それが運命かなんなのか。
どちらかだけではない、お互いに影響しあってしまったからこそ、ゴールは破滅しかないのだ。

殺伐とした最後、特に最後の一行が特化していて、読み終えた後ため息がもれた。















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