アンドロイドは海底に夕焼け空を見るか

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「アンドロイドは海底に夕焼け空を見るか」参考楽曲一覧(目次)

「アンドロイドは海底に夕焼け空を見るか」はすべて作曲家かめりあさんの楽曲をモチーフにしています。
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はるやさんのイラストとあわせてお楽しみください。
イラストはこちら          

1.Dance on the Mars
アルバム「dreamless wanderer」 Track 03
小説はこちら

2.farewell to today
アルバム「

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Proluvies

世界の終わりは黄昏に訪れるのだと、彼女ははじめて知った。

 飴色に染まった空はどこまでも透き通り、高い場所に鱗雲が見える。夕焼けの名残をとどめた光はゆっくりと弱まっていくようだ。太陽を見なくて良かったと彼女は思う。随分長く海の底にいたから、その光の強さに目が潰れてしまったかもしれない。
 さざ波の寄せる浅瀬で、彼女はひとり空を見上げている。

     *

 遠い昔、世界が生まれた頃。
彼女は

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ココロの質量

ファインダー越しに、絵筆を走らせる彼女の横顔を見ている。シャッターを切ろうとする僕の方を向いて、
「だから撮るって言ってよ」
 彼女は不機嫌そうに言った。僕はカメラをおろして笑う。
「撮るって言ったらやめてって言うじゃん」
「そりゃあ言うわ」
 彼女は眉を寄せて僕に言い返すと、再びカンヴァスに視線を移す。午後四時半を回った部室からは、遠くの海に沈む夕日がよく見える。開け放たれた窓に、晩秋の冷たい風

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Enantiomorphs

目を開くと、鮮明な夢の記憶が残っていた。
 一拍遅れて、机の前に座ったまま居眠りをしていたことに気がつく。時計に視線をやるが、短針はおろか長針すらほとんど動いていなかった。頭の中に残った風景の中に、僕は随分長くいたような気がするのに。
 パソコンのディスプレイには書きかけのレポートが表示されている。プラトンの『饗宴』に見る愛の概念について。
 僕は一度瞬きをして、夢の中で出会った彼女と交わした会話

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迯避論

地方国立大学の、西洋哲学ゼミに所属していた。
 もう六年も前の話だ。
大学で哲学をやろうという人間にまともなやつなんて一人もいない。断言して良いと思う。わたしの周りも、みんな大体頭のねじが飛んでいるか酷く鬱屈としているか芸術に身を賭しているかのいずれかだった。
 わたしは比較的ライトな芸術系で、音楽サークルで古楽器をやっていた。リュートだとかヴィオラ・ダ・ガンバだとかそういったものだ。一般的にあま

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[diffraction]

声は、僕の背中越しに聞こえた。

 暗い場所にひとりでいる。周りにはごちゃごちゃとガラクタが積み上がっていて、それらはすべて僕が過去に手にしていたものだ。幼稚園で描いた似顔絵、小学生の頃の書き初め、卒業アルバム、卒業証書、筆記用具に体育館シューズ。愛用のマグカップ、茶碗、その他諸々。もう二度と使われないものばかり。
ここに光は当たらない。
「光とは、つまり波なのだろうか」
 僕は、暗闇に沈んだ幼い

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Exit This Earth's Atomosphere

空が青かったということを、忘れずにいようと思う。

 自分が生きているうちにこの星がダメになるなんて正直思っていなかった。まああと百年くらいはいけるんじゃあないのと思っていたのだけれど、タイムリミットは案外早く、そして突然にやってきた。
 実感など伴わないまま、引っ越しの準備を進めている。
 段ボールだらけの部屋でベッドに寝転がり、わたしはカレンダーに視線をやる。この星のこの国で夏を終える前に、住

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Singularity (The Day When The A.I. Becomes More Human Than Human)

パソコンに向かって文章を打ち込んでいる。小説家になりたかったのだということを一拍遅れて思い出し、ああ違う、この人は小説になりたかったのだなと、もう一拍あとで思い直す。
 百年くらい前のソフトだろう。ワードファイルなんて初めて見た。自分の指でキーボードを叩いて入力しなければならないことが不思議だと思った。
 ゆっくりと目を閉じて、もう一度開く。
 わたしは満員の乗り物に揺られて「もう帰りたいな」と思

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Free to free

誕生日にゼミの友人から百ピースのミルクパズルをもらった。
 ミルクパズルというのは絵柄のない真っ白なジグソーパズルのことだ。絵柄がないため、どのピースがどこに配置されるのか見極めるのが非常に難しい。たった百ピースだというのに四つ角以外は大体埋まらないし、でも投げ出すのは友人に悪いような気がしてできなかった。
 誰もいないゼミ室で純白のパズルと向き合っていると、ノブが回転する気配がした。顔を上げると

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Break The Silence

もともとそんなに、生きるのが上手だったわけじゃない。いつものろまで、ぼんやりしているうちに誰にでも置いていかれました。離れた場所でごまかすようにひとりで好きな歌を口遊ぶような毎日でした。
今回だって、だから、当然の結末だったのです。

 人魚姫になろうと思いました。
 
 生まれた町を離れて、ずっと夢だった歌をうたう仕事も捨てて、わたしは好きな人の隣にいることを選びました。でも、わたしが好きだった

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