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金融機関は決算書の表面ではなく、実態を見ている

障害福祉業界を明るくしたい行政書士の篠原です。

前回の復習は決算書の採点ポイントと理想的な決算書についてご紹介しました。

今回も財務コンサルタント養成講座の復習をアウトプットします。

今回は金融機関の決算書の採点は決算書の表面よりも実態で判断することをご紹介します。

決算書の実態ってどういうこと?

実際の決算書というのは数字上曖昧になってしまうケースが多くなります。

その原因として以下が挙げられます。

・顧問税理士に社長が情報をしっかり伝えていなかった
・経理ミス等による正しい計算ができていないまま作成している 等

こういった原因があることを金融機関は知っているため、融資を受けたい会社を審査する際には確定申告で提出した決算書ではなく、財務の実態を評価して判断します。

財務の実態はB/Sの数字を修正する

実際に財務の実態を把握するためには、どうしていくことが大切でしょうか?

ただ決算書を眺めているだけでは財務の実態は見えてきません。

つまり、実際に経営している社長や現場から聴き取ることが大切になります。

財務の実態は社長としては目を向けたくない事実となることが大半ですので、簡単にお話してくれないこともあります。

社長から話を聴くだけでなく、実際の現場を見て会社の資産がどういう状況かを読み取ることが財務コンサルタントに必要なスキルとなります。

社長からの聞き取り・現場の状況を把握した上で財務の実態を見ていくことになります。

B/Sの資産項目を中心に財務の実態を確認し、純資産の実態がどのように変化するかを見ていくことになります。

結果的に表面上の純資産がプラスだったのに、実態の純資産はマイナスだったケースもありますので、金融機関は実態をしっかり確認した上で会社の債務者各付けを実施します。

債務者各付けについてはまた別のアウトプットでご紹介します。

実態資産の評価ポイント

資産項目を中心に財務の実態を確認することが財務コンサルタントの仕事となりますが、実態を確認するために資産の評価ポイントがあります。

簡単にまとめたのが以下となります。

現金:決算書の数字とあまりにも掛け離れている場合にヒアリングし、決算時の予想金額を判定。
預金:残高証明書により確認。
売上債権:回収できていないものがないかヒアリング。
貸付金:1年以内に返済されるものを除いて、0で評価するのが無難。
有価証券:時価金額を証券会社の運用報告等で確認。
未収入金:取引先でない場合は0で評価。取引先の場合は売上債権と評価は同じ。
棚卸資産:実棚を行い、実際の金額を把握。大きすぎる在庫がある場合はヒアリング。
土地・建物:固定資産税評価額を基準に評価。築20年以上の建物は0で評価。

P/Lの実態評価ポイント

P/Lの実態を把握するためには以下の確認ポイントを基に把握することが大切になります。

売上高:3期を比較し、大きく数字が変化した場合には会社としてどんな変化があったか社長にヒアリング。
役員報酬:表面上利益にするために限界まで下げているケースもあるため、生活に即した金額で評価。限界まで下げていると、貸付金・仮払金が社長に流出している可能性がある。
減価償却費:赤字・ギリギリ黒字の会社は未形上としている可能性があるため、法定償却で実態を把握。

金融機関の評価の厳しさには金融庁の規制が忍んでいる

皆さんは「半沢直樹」を見ましたでしょうか?

東京中央銀行に黒崎検査官(演:片岡愛之助さん)率いる金融庁検査が入るシーンはすごく印象として残ったと思います。

金融機関の管轄は金融庁です。

つまり金融庁の規制の中で金融機関は融資を出しています。

この規制から外れた営業をしていると、金融庁検査が入り、黒崎検査官から股間を握られることになるのです(言い過ぎました笑)。

金融機関が融資を出す際には金融庁の出した「金融検査マニュアル」に沿って資産評価をしていましたが、2019年12月に廃止が決定しました。

1999年にバブル崩壊後の不動産向け融資の不良債権の対応のために導入された金融検査マニュアルが廃止されることになったのには金融機関の柔軟な判断がしづらくなるというデメリットが含んでいたこともありました。

廃止されたことで会社も将来を見据えた融資を受けやすくなることに繋がるのではないでしょうか?

つまり、2020年以降は資産評価の在り方の転換期が訪れていることになります。

しばらくは金融検査マニュアルを基にした資産評価となるようですが、少しずつ評価方法も変わってくる可能性を示唆したニュースですね。

会社の実態を把握するためにはクライアントと専門家の信頼関係が重要

経営改善を支援する上ではこの「実態把握」が大切であり、ここを間違えてしまうと、今後の経営の方向性が大きく変わってくることにもなりかねません。

つまり、財務コンサルタントを信用しきれていないために「社長が事実を隠してしまっている」ことがあっては間違った方向性に進んでしまいます

このように金融機関から融資を受けるためにはただ決算書の数字から実態を把握すればいいのではなく、社長や現場が事実のありのままを話すことができる信頼関係がなければ、本当の会社の実態を把握することはできないということを理解しました。

そのためにも専門家として中立の立場で意見を伝えつつも、よりクライアントが思いを実現できるように真剣に向き合うことを忘れないで仕事をしていくことがとても重要だと気付きました。

今回は実態把握する上での金融機関の資産評価ポイントと専門家としての重要なスタンスについてご紹介しました。

次回も財務コンサルタント養成講座の復習を兼ねたアウトプットを投稿しますので、お楽しみに!

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