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全体を俯瞰し、第三者的視点でまちづくりを展開するORIGAMI Lab.代表、檀上祐樹さん

それぞれの地域の特徴を生かした自立的で持続的なソーシャルデザインの活動をされている、檀上祐樹さんにお話を伺いました。

■檀上祐樹さんのプロフィール■
1977年高知県生まれ。ORIGAMI Lab.代表。
大学院生時代にstudio-Lの前身studio:Lに参画し、兵庫県家島町(現:姫路市家島)の「探られる島プロジェクト」等を展開し、生活を見つめ直し再定義を試みるデザイン活動を体験。以後様々な地域のコミュニティデザイン、ソーシャルデザインの活動を展開し、生活者自らが生活づくり、地域づくりに関ることができるデザインを目指し、2015年にORIGAMI Lab.設立。
2014年 土木学会 市民普請大賞入賞、2015年ウッドデザイン賞2015受賞。現在、大阪産業大学建築・環境デザイン学科非常勤講師、公益法人いえしまふるさと基金審査員。

記者 檀上さんは大学時代からまちづくりに関わってらっしゃいますが、どういうきっかけでまちのお仕事を始めるようになりましたか
檀上祐樹さん(以下敬称略) デザインの大学に入るつもりがなかったんですが、建築デザインとか都市デザインの授業で、知名度のある建築家や学者が設計した建築をテーマにした都市論、建築論について学んだんですが、その理論としては理解できるんですが、僕たちが本当にそれで幸せを享受できているかどうかというと、疑問に思うところがあったんです。自分自身の実感として、あまり共感できないところがありました。
97年に大学に入って、まだ世間では都市や建築のつくり方がバブルの頃の考え方でビジネス資本の時代でした。”有名な建築家が建築した”というブランド力を信じられていて、そこに自分が一握りの建築家や理論家が構築した都市に住民が住まわされてる”ゲスト感覚”になっているんじゃないかと思いました。
バブルが崩壊して、まちづくりをしようにも行政に財政がなく、今までと同じサービスを提供できない時代背景もあって、まちの人たちが自分たちで意識を少し変えて、ゲストではなくてホストとしてまちをつくるような仕組みみたいなのをつくりたいと思い、2003年に開催された日本造園学会関西支部のワークショップに参加しました。それがまちづくりに関わるようになったきっかけですね。

そのワークショップで入ったチームのメンバーは、造園学会で社会人と学生が一緒になってまちの将来を考えるワークショップに参加したメンバーです。大阪の堺の環豪地区を対象に、僕らは生活の視点で考えるチームでした。このチームリーダーに、今コミュニティデザイナーとして活躍されている山崎亮さんがおられて、考え方や進め方など、色々教えてくれました。この時のメンバーは、山崎さんを筆頭に、コミュニティデザイン事務所studio-Lを立ち上げます。その動きや、ワークショップでの経験が、この仕事をやってみようというきっかけになりました。

記者 まちづくりというと、現状からさらにもっと良いものに改善していくというイメージがしますが、ゲスト感覚みたいな違和感を感じた最初のきっかけを教えてください。
檀上 そうですね、行政に対して市民が陳情を出すのをよく目にしたり、そういうのがTVに流れているのを見て、自分たちのまちなのに、行政の人達にすべて任せてしまうことに違和感がありました。市民がゲストとして住まわされているような感覚を持ち、自分たちでまちをつくる支援をしたいなと大学院生ごろから思っていたんです。それがきっかけですね。

記者 形があるようでないお仕事なので、最初は結構大変だったんじゃないですか?
檀上 そうなんです。最初は今まで誰もやってないような仕事のスタイルで前例もあまりなくて、「そんなの仕事になるの?」って周りからよく言われました。そんな中、2011年ごろから山崎さんがメディアに取り上げられたり、本を出版されるおうになって、「コミュニティデザイン」っていう職業が社会に認知させるようになり、僕も徐々に仕事をさせてもらえるようになってきました。
色んなまちで仕事をさせて頂くにつれ、自分の思いが言語化できるようになり、自分の仕事が何なのか深く考えられるようになりました。これがなかったら大学卒業して就職して、モヤモヤしながら働いてたと思います。

僕は元々、高知の山奥の出身で、7歳で大阪淀川区に引越してきました。全然違う環境に来て、環境問題に興味を持つようになりました。通常、人間の視点でまちの空間ができてますが、そうじゃない人間以外の生き物の視点でつくれないかなって高校生ながらに思ってましたね。

記者 都会より田舎のほうがいいなと思ったことはありますか?
檀上 田舎では、自分たちでルールを決めて、ものが壊れたら自分たちで修理したり、行政のかわりに市民税を町内会が徴税して運営しているところが所々あります。こういう自主運営という感覚が一番の理想だと思います。でも、まちの運営方法を生み出すプロセスを知らないと、過去の手法を周到したり、現状維持の発想になりやすい。これからの社会に応じたまちの運営方法をつくるプロセスを市民の人に提供したり、まちの方の考えを整理するという形で、まちづくりのお手伝いをする活動を、僕らのようなコミュニティデザイナー、ソーシャルデザイナーはしています。

記者 バラバラの意見を整理することって、とても難しい気がしますが、気をつけていることはありますか?
壇上 基本、第三者の立場で関わるようにしています。その地域の人たちが自分たちでまちを作っていくときに、第三者の人間だからこそ言える意見や整理の仕方に有効性があると思ってるので、物事をフラットに俯瞰的に見れるかを大切にしています。

1つの見方をしたらOKだけど、違う見方をしたらOKじゃない。クラス全体を見ている感じですね。いじめっこがワイワイ騒いでいて、泣いている子が一人いたらだめじゃないですか。大学のバレー部の退官記念パーティで、レギュラーの子よりもベンチに入れなかった子のほうがよく覚えてますって先生が言ってたのを聞いて、ちょっと泣きそうになったことがあるんです。そういうのも影響しているのかもしれない。全体を俯瞰して見ようって。

記者 これまでに辛かったと思うことはありますか
檀上 最初はあまり世の中に認知されていなかったので、僕たちの活動を実績としてみてもらえないことありました。反対とか批判とかではなくて、知ってるけど何かよくわからないという理由で無視されてしまう。それが辛かったですね。

記者 これからどんな未来をつくっていきたいですか
檀上 将来的に、まちの人たちが自主的にまちをつくれるようになって僕らがいなくなる社会になったらいいなと思います。田舎は人口が少ないから一人一人のキャラクターが際立って、しがらみが発生しやすい。そういう地域に僕らみたいな第三者的なしがらみのない人間が入って一緒に活動していく。でも将来は、自分達でそれができるようになるんですね。まちをつくるプロセスをデザインしたり、みんなの意見をまとめることができる能力ってみんな持っていて、まちづくりの現場に生かす発想がないだけなんです。

記者 檀上さんにとって地域活性化って何だと思いますか
檀上 何をもって地域活性化とするのかは、地域によって目指す社会、将来像が違うので地域活性化の意味も変わってくると思います。地域によってそれぞれのゴールを見つけようと思うと、やっぱり極論と俯瞰の両方を常に見ることだと思います。あとは、自分のまちでこういうことをしたいって言った時に、無視する人間がいない状況が大事だと思います。隣町だったり隣の県が手伝いに来てくれたり、それぞれの地域の関わる範囲が広くなっていくといいかなと思います。

記者 この仕事を通して、どういう瞬間に喜びを感じますか
檀上 そうですね、例えば、僕が出した叩き案にみんなで議論して、決定して、みんながやる気になって、僕がこの仕事が終わってもその活動が続いていく見込みがついた時が一番嬉しいです。第三者として関わっているので、いずれいなくなる存在として、地元の行政の方や企業の方で事業を回せるようになった時が嬉しいです。

記者 ありがとうございました。市民一人ひとりが主体的にまちをつくっていく自主運営と全体を俯瞰するものの見方が重要ですね。楽しくワクワクしながらまちづくりをされているお姿が印象的でした。これからも日本全国でのご活躍を楽しみにしています。
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檀上祐樹さんの情報はこちら↓
ORIGAMI Lab.
http://origamilab.org/
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《編集後記》
インタビューを担当した泊と中川です。檀上さんの部分だけでなく常に全体を俯瞰する観点を心がけてらっしゃる姿勢が伝わってきました。毎週北海道へ行ってらっしゃるとのことで、お忙しい中お時間をいただいて、本当にありがとうございました。今後とも益々のご活躍を祈念しております!

この記事はリライズ・ニュースマガジン”美しい時代を創る人達”にも掲載されています。