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2020/6/9 読書記録

昨日に引き続き、夏目漱石『吾輩は猫である』を読む。読みながら思い出したのは、昔NHKで放送していた「夏目漱石の妻」というドラマで、長谷川博己演じる夏目漱石が、知り合いの前で自分の書いた『吾輩は猫である』の一節を音読し、笑いあっていたシーン。「たかが猫(良い言い方が浮かばないので仕方なくこう表現する)が教養ある文体で一丁前に語っている」というユーモアを漱石自身が楽しんで書いていたんだろう。どちらかというと内気で、胃弱で、生きにくい性格だったと思われる漱石が、小説の世界でこれでもかと人を笑わせることができるということに感動するし、改めて、文章って、計り知れないパワーがあるなあと思う。


ただ「愉快な話」で終わるわけではなく、悲しいエピソードもある。近所に住む気の強い黒猫が、片足が不自由になって威勢がなくなってしまったり、「吾輩」の飼い主は何をしても胃が良くならなかったりで、その「人生の上手くいかなさ」のようなものに身に覚えがあってハッとさせられるシーンが随所にある。人生山あり谷あり、と言ってしまうとしらけるかもしれないけれど、『吾輩は猫である』は、猫の視点を通して人生の残酷さと美しさをユーモアたっぷりに描いていると思うし、私はそういう小説が好きだ。


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