#11 気づかないうちに陥ってしまう不動産取引をしないために③

食堂にも美味い不味いがあり、医者にも名医もヤブもいるように、不動産会社にも良い悪いが有ります。それは規模やイメージではなく、実力で計るべきなのは間違いないのですが、人は宣伝が多く行なわれていることや事務所の立派さに目を奪われてしまったり、自己に都合の良いことを話す者を信じてしまう傾向に有ります。

ひとには「確証バイアス」というのがあります。
確証バイアスとは、認知バイアスの一種で、自分の考えを裏付ける証拠となる情報にはよく気付くのに、矛盾する証拠となる情報には目をつぶってしまう認知のクセのことです。
まさか自分がそんな浅はかな判断をするはずがない・・・
自分のその考えを正当化したいがためにマイナスの情報は排除してしまうという心理です。
例えば、真っ当な業者が適切な金額を提示した上で売却するようにアドバイスをしても、思っていた金額より安ければ「きっといい加減な事を言っているに違いない。」、「実力がないから高く売れないのだろう。」と根拠もなく判断します。逆に、悪い意図がある業者が自分が期待していた金額よりも高い金額を提示した時は「実力がある人だから高く売れる。」とか「特別なルートがあるのだろう。」とか根拠もないのに信じようとしてしまいます。

では、どうやったら自称専門家と本物の専門家を見分けられるのかというと、本物の専門家は相応の知識を持っていますので、ほとんどの事に正しく根拠を述べることができます。逆に、自称専門家は根拠があいまいであったり、ネットで検索したような付け焼刃の回答であったりするので、根拠について的確に回答が出来なかったり、その場しのぎで適当なウソを言います(たまにまぐれで当ることもあるので注意が必要)。
要するに、その様なアドバイスでも簡単には信じないで必ず根拠を聞いて、その根拠が正しいのか面倒でも一度調べてみることで、偽者をつかむ確率はグンと減ります。

また、「返報性の原理」を働かせることがあります。
初見の人が、数多く足を運ぶことでヒトとモノを知ってもらうという良い面もありますが、人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという感情を持ってしまうという心理状態のことをいいます。良くないときは、中身よりも数(こんなに足を運んでくれたのだから・・・)により錯覚を起こしてしまうことがあります。

とある不動産売買仲介業者の実際にあった話です。
不動産仲介業者に限らず、ビジネスをしていく上で「売上目標」があります。月次でどうしても最低目標を達成しなければということはある程度仕方がないことだと思います。
ただ誰かが利を得るために誰かが泣かなければならない関係のところでは決してやってはいけないことだとわたしは思うのです。
軸を決めずに検討するというお客様は確かにいます。「◯◯がクリアになれば契約します」「◯◯のことで夫婦で話し合って結論を出します」といった感じのお客様に対しては、背中を押してあげることが営業の仕事だと思いますが、ブラック系(ここで気を付けてほしいのが、いわゆる「大手」といわれている不動産仲介会社です)で上司がはっぱをかけることは良いことですが、脅迫に近いやり口で「この物件でこのお客さんを月内に押し込めろ!」とやり、部下は評価を下げられたくないのでむりやり押し込めようとしたわけです。
「○○さんというお客様が同じこの物件を検討されています。●●様が○○までに契約してくれるのであれば●●様を優先致します」
不動産業界であれば常套セリフですね。○○様と●●様は実は知り合いで、○○さんはその物件の購入を検討していないのにいかにも検討しているようなウソの説明をし、●●様が○○さんに直接確認したところそのウソがばれてしまったという話です。
○○様と●●様はそれはお怒りになりますよね。大手だから信用していたのに!
その上司はおとがめなし(具体的な指示は出していなかったという名目で)、部下は謹慎。
このふたりは、今もその会社にいてその当時の上司は取締役クラス、部下は課長(支店長)クラスになっているというのが不思議なものです。

参考書籍 ビジネス心理学大全(榎本博明著・日本経済新聞出版社)
     図解 使える心理学大全(植木理恵著・KADOKAWA)
     ブラックマーケティング(中野信子・鳥山正博共著・KADOKAWA)

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