日記2023年6月③

紫陽花は夏至の頃に咲くのだと初めて気がついた。まだ涼しい日もあるけれど、このあと必ず暑い夏の盛りが来る。

子供を自治体の三歳児集団健診に連れていった。一日幼稚園を休んでのお仕事になった。朝の尿を採って持参しなければならないが、そもそも夜の間にお漏らしして出てしまっていた。事前にTwitterで教えていただいた採尿用のグッズを警戒して泣いてしまい、絶望したのだが、家を出る直前にうんちがしたいというのでトイレに座らせ、どさくさで紙コップで採尿した。警戒心の強いうちの三歳児に「健診に行きます」とか訳のわからんことを言うと絶対嫌だと言うので、「身長と体重を測りに行く」とだけ伝えて家を出た。本人の希望でベビーカーに乗せた。

健診会場は混んでいて、待ち時間が長かった。周りの親子は絵本とかお絵かき帳とかを持ってきている。私は慌てていて飲み物も持ってくるのを忘れた。ちなみにお父さんが連れてきているお家の割合が三分の一弱程度で、案外多いものだと思った。ガヤガヤした待合室で待たされて、中には気ままに走り回ったり親に組み付いたりする子もいたけれど、うちの三歳児は私にくっついて周囲を睨んでいた。緊張すると口をへの字にして顎を引き、上目遣いに見るので、睨んでいるみたいになる。身長計に乗らされるときもそうだったし、保健師さんに話しかけられたときも同じ顔をしていた。私も小さい頃目つきが悪いとか睨んでるとか口がへの字だとか心無いことを言われたのを思い出した。子供とよく似ていると言われるのも複雑なもので、嫌なこととか苦手なこととか、私と同じような経験をするのかもしれないと思うとなんだかかわいそうだと思う。ついつい子供に自分を重ねてしまう。子供は全く別の人生を歩むというのに。

問診票にはお茶と牛乳以外のジュースの1日量を記載する欄があって、それが基準より多かったらしくて歯科検診で注意された。ご飯を食べたがらないという話をしたら栄養士さんの栄養相談に回された。幼稚園で給食を全部食べているのに家でご飯を食べずにお菓子を食べるのは、もうそういう「交渉」が親との間で成立してしまっていることなのだとまた散々に言われた。おやつはおにぎりとか芋とかそういうのにしましょうと言われたけれど、親もそんなこたあ知っているのだ。それをやると本当に全然食べないから苦肉の策でこうなっているのだ。生活の困りごととはそういうもんだろう。しかし相談とはえてしてこういうもんである。こうしてくださいと指摘されると、いやそうは言いましてもこういう事情がありまして、と返すことになり、じゃあこうしてくださいと言われるとまたいやそうは言いましてもこういう事情もありまして、と延々と問題を遡及するはめになり、今の問題の解決にならない。アドバイスする側としてはその過程で相手の理解が深まるから仕事した感が得られたりするものなのだが、相談する側としたら相手に問題をわからせるための苦労ばかりさせられたなと思ったりする。「あの先生は話を聞いてくれない」というやつだ。ここは順序が大事で、問題のモデル化と共有の後にプランの提案が来るべきなのだろう。

私は小さい頃から食べるのが好きで、私の親もそうだったから食べ物は豊富に出たし、私もバカみたいに食べた。満腹が何より好きで、小腹が空いたらお菓子だと足りないからお茶漬けを食べるのが一番好きだった。嫌いな食べ物もなかった。そうやって育ったから、食が細い子供の感覚がわからない。なぜご飯よりお菓子がいいのかわからない。ご飯はこんなに美味しいのに。そう思ってしまうからご飯を食べない子供に対して、ついイライラしてしまう。自分を重ねて心配するかと思えば、次には自分との違いに苛立つ。しかしそれは同じことの裏表なのだろう。くっつくけれどもくっつききらない。そこに人間の愛があり、その難しさをどう生き延びるかがその人の個性そのものだ。

健診ではそうやって三歳児が家でご飯を食べてくれない問題を相談したわけだけれど、それで何かを察したのか、この日は三歳児の方から「ラーメンたべる」と言ってくれた。近所の中華屋に寄った。ランチのラーメン半チャーハンセットを頼んだ。ラーメンを小鉢に移して冷まし、フォークでくるくると丸めて食べさせると、結構食べてくれた。ラーメンとカレーはある程度食べてくれることがわかってきたのでそういう食べてくれるものをどんどん出していくことにした。ランチの忙しい時間だったけれど、お店のおかみさんがお子さん大きくなりましたねと話しかけてくれた。

今週は精神神経学会である。私は行かないが。うつ病で専門医取得の過程がバキバキに頓挫した身としては、学会というのは敷居が高い。以前は真面目に一日中シンポジウムを回って勉強の材料を探していたけれど、結局、短時間のレクチャーを聴いてもそのあと自分で何百時間もフォローしないと自分の身につかないという当たり前の事実にぶつかって、学会の意味合いは一般演題とかポスター発表でどこがどういう研究をしているのかをチェックすることへと移っていった。そしてそれもなんだか別にいいかという感じになってきたのである。専門医じゃないから資格更新のための単位稼ぎもしなくていいし。お呼びでないなら呼ばれもしませんという感じで、まあ今回はパスです。しかし専門医資格を今後どうするのかは大問題なのだが、今は考えてもしょうがないのでパスパス。知らん。

復学に向けて研究活動を再開した。学会期間中で研究室に誰もいないだろうと思ったら後輩がいた。親しいわけでもないので気まずい感じだ。私から話しかければいいのだろうけどこっちもそんな元気はない。今日は協力病院から届いた頭部MRIのデータを解析にかけた。久々だったので30分くらいかかった。あとはMac miniが計算してくれるのを待つ。もうほったらかして来週確認することにする。今年度の履修登録をしていなかったのでやってみたのだが、昨年度末くらいにアカウントの二段階認証が必須になって、やっていない者はアカウントがロックされていた。なんてことだ。ロック解除の申請をして、今度はパスワードがわからない。しかたなく学務に行った。その場合初期化申請をするらしい。10月の復学まででいいですよとのことだけど、めんどい。一応その場で現在の単位取得状況だけ確認できて、あとは卒業のための公開発表の単位だけ履修登録すればいいということは確認できた。ちゃんと休学前に単位は取っていたのだ。えらいえらい。

帰ったらぐったりしてしまった。この疲れが大学から足を遠のかせるのだよなあ。どうしたものか。

今日は妻が幼稚園の迎えに行った。お迎えのあとも園庭で遊びたがって、珍しく盛大に泣いてぐずったそうだ。先生も説得に来てようやく車に乗ったらしい。いつもより30分以上遅れて家に着いたら、すでにぐっすり寝ていた。妻はそんな日に限って友達とご飯に行く約束をしていて、走ってまた出かけていった。私は昼間に疲れてカレーを作り損ねたので、代わりにCoCo壱の出前を頼んだ。子供用カレーもつけた。CoCo壱はお高めだけど美味しい。

最近うつ病に関する文章を書き溜めているけれど、どうも文章が固くなってなかなか進まない。何か突破口が見えるまでとりあえず断片的にでも書き溜めていくしかない。

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