日記2023年11月②

マッサージに行ったあとタリーズにいたけれど全然手が進まず、本を買ってからドトールに移動した。ドトールに入った瞬間に思ったのはあったかいということで、どうやらタリーズは寒かったのがいけなかったっぽい。そういうことにしておく。買ったのは『「誰でもよいあなた」へ:投擲通信』(伊藤潤一郎、講談社)、『共に明るい』(井戸川射子、講談社)、『あたらしい家中華』(酒徒、マガジンハウス)。ドトールの時計は11:46で止まっているが今は14:15である。

今日もまずは日記から始める。やりたくないことをやる前にはこうやって何かを迂回する。迂回に迂回を重ねてようやく日記を書けるところまで来た。遠くに行ければなんとかなるのである。

土曜日は文学フリマ東京に行ってきた。知人、と言ったらいいのだろうか、編集?をされていたりする方で以前もウェブの媒体に私の文章を載せてくださったかたがお知り合いというかご友人の方とshadow works marketというブースを出していて、いろんな人が作品を置くので私も何か置きませんかと声をかけていただいたのである。その方の専門はもともとは美術で最近はダンスなどのイベントのキュレーションも担当されていて、このブースもアートやダンスをされている方のものが並んでいた。私はちょっと毛色が違うのだけれど誘われたら嬉しいので短編小説を置かせてもらった。いくつか売れたとのことで嬉しい。

文フリは盛況だったけれど、私はどちらかというと行列のできるようなブースには行かなかったのでぶらぶら歩いて回り、ツイッターを日頃から見ている人たちの小説やエッセイをまずは買った。出版社の関係でいくとナナルイさんのブースがちょうどshadow works marketの隣だったのでちょうどよかった。以前行われた金川晋吾さんと栗田隆子さんの対談の記録が売られていたので買った。栗田さんの饒舌の中で金川さんの写真撮影を通じた人との接続と切断の接点が言語化されてとてもおもしろかったのを覚えている。これからゆっくり読みます。実は金川晋吾さんのことを知ったのもshadow works marketに誘ってくれた方に教えてもらったのがきっかけで、金川さんがツイッターのスペースでスカートを購入した話をされていたのがすごく良く、それ以来ファンなのです。私は一番好きな小説家の一人が滝口悠生さんなのだが、その後金川さんは滝口さんと植本一子さんと日記本を出されたりしていてとても嬉しく、そして植本一子さんは鳥羽和久さんと繋がっていて、鳥羽さんはかつて私が友人とやっているPodcastを聴いてくださってゲストで出てくださったことがあり、実はその鳥羽さんをもともと追っていた関係で私の書くものを読んでくださったのが今回文フリに誘ってくれた方なのである。なんか循環している。不思議なもので。

ナナルイのブースでは本を入れる手編みニットのショルダーバッグも買った。とてもかわいい。

子供が羽田空港に飛行機を見に行くというので合流した。空港はきれいで広いのにベンチで寝てる人がたくさんいていい。顔はめパネルで写真を撮りたい人に頼まれたのでその人のスマホで写真を撮ってあげたのだが、うちの子がそれを見て自分が写真を撮りたかったと言い出し、めちゃめちゃ怒り始めてしまった。頼まれたスマホを三歳児に渡すわけにもいかないので、頼まれたのは私なんだから今回は仕方ないよと言ったのだがそれで納得するわけもない。「おとうさんのイジワル!」とデカい声を出して怒っていた。子供がデカい声を出してもそんなに響かないのも空港のいいところである。

今月に入ってからこの三歳児が大変なのである。なんでも自分の思った通りにならないと怒る。自分でできないと怒る。自分でやってうまくいかないと怒る。注意されると怒る。好きな食べ物がないと怒る。眠いと怒る。怒っているのは自分なのに、親が怒ったせいで台無しになったと人のせいにしてきて、最終的に「おとうさんのイジワル!」とデカい声で怒る。「そんなに怒ってると明日遊びにいけないからね!いいんだねそれで!」とどこで覚えてきたのかイジワルなことを言う。いわゆる第一次反抗期というやつで、二歳のイヤイヤ期と似ているけれどレベルが上がっていて、できることや考えられること、見通せる未来が大きくなっているし、言葉も達者になり表現も体の力も強いので、なかなか親は心身ともに疲弊するのである。子供相手でもむき出しの怒りをぶつけられると嫌なものである。理由が理不尽だし。

しかしまあすぐに機嫌が戻るのは子供なところで、その都度気が散ってくれるのは救いである。空港の焼肉屋で少量の肉を食べて帰ったら家に着いたのは21時だった。

翌日の早朝に大学院の教官からメールが来ていて、私の作った論文の草稿の直しとその後の作業の指示だった。12月の上旬に論文を雑誌に投稿し、大学にも博士論文を提出しないといけなくて、今大急ぎでやっている。文フリで気持ちよくなっていたところに現実に襲われて目眩がした。

そして今日に至る。全然論文に手をつける気にならなくて、こうやってまずは日記を書いている。くれぐれも論文を書くのが主たる仕事だと思ってはいけない。学生の本分は学業と研究と論文書きなのかもしれないが、私の本分は学生ではない。とりあえず思ったほうがいい。いくつか顔があって、いくつかやることがあって、いくつか行く場所があって、それぞれで出会う人がいる。そういうふうに生活を整えてようやく学生でいることができるようになった。安心して気が散ることができるというのは大事なことなのである。さてそろそろ論文を進めないとさすがにまずい。

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