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闇の中の闇

職人であり
絵描きであり
ろくでなし

それが今の彼だ

いつも、こだわりの中にいる
いつも、自分の作品だけを求めている

人の世にあり
人の世から外れ

絵を買い求める者に悪態をつき
酒の瓶を投げつけた

『誰も俺の作品を理解していない』

その孤独は、毒のように
彼の心にいつも居た


ある日、工房に知らない女が立っていた

なんだお前?酒の金なら、そこから持ってけ!!
仕事の邪魔だ!用が無いならさっさといなくなれ!

女は、そのまま立っている

その瞳には
慈愛と孤独

何か似たものを感じた

===

山に女が住んでいた

壁に
地に
紙に

書を書き続けていた

村の者は

変人
気が狂った女

そう呼んでいた

ただ、まれに客が訪れる

やたら身なりの良い男たちが訪れ
何かを運び出していく

「あの女の書が売れる?そんなはずねぇべさ」

村人はそんな話をしながら酒の肴にしていた。

===

遠き星に光る

まだ、時代が始まる前
まだ、光が生まれ間もない頃

闇の中にいた

闇の中の闇

時折、ゆらぎ
世界の光を屈折させていた

そこから色が生まれた

その闇は
光を食い
残った光が色となる

その色は、やがて星となった

その色は、やがて時を生み出した

色と色は時に混じり合い
また何かを生み出しっていった

闇が、ほくそ笑むように
また光を食っている

この闇が、人となる時が訪れるまで
多くの時が流れた

Yuyun Kingdom 時の職人記より

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