ウクライナ語文法シリーズその29:時刻、日付の表現など
次のパートに入る前に、数詞を使った表現として時刻や年月日の表し方を紹介します。曜日やその他時間に関わる表現もついでに挙げておきます。
時刻の表し方
ウクライナ語で時刻を表すときは、「時」を序数詞の女性形で、「分」を基数詞で表します。なぜ「時」が女性形かというと、годи́на 「時間、~時」が女性名詞だからです。なお、「分」は хвили́на という語で、基数詞が付くため2分以上のときは単数属格と同じ形か複数属格になります。
正確には годи́на と хвили́на を付けて表すのですが、口語では普通、省略されます。したがい、「序数詞女性形+基数詞」のみで表せます。
誤解のないよう正確な時刻を言うときや、交通機関など公的な使用をされるときは24時制での表現もされます。
また、ра́нок 「朝」、день 「昼」、ве́чір 「晩、夕方」、ніч 「夜、深夜」をそれぞれ属格で使って、「昼の~時」や「夕方の~時」などともいいます。
ちなみに、日本語で「夜」と言った場合は日没後の空が暗くなってからの時間帯を表しますが、ウクライナ語ではちょっと異なります。
ра́нок は夜明けごろ、つまりおおよそ4時ごろから正午まで、день は正午から夕方、つまりおおよそ6時前ごろまで、ве́чір は夕方から午前0時まで、ніч は午前0時から夜明けまでの未明の間を意味します。
ве́чір を「夕方」、ніч を「夜」と一対一対応で覚えてしまうとズレてしまい混乱を招く場合もあるので、気をつけてください。
時刻について、上記のように分単位まで並べる以外に、「~時~分過ぎ」や「~時~分前」のような表現もよく使われます。
1-30分くらいまでについて「~時~分過ぎ」を表すときは、「基数詞(分)+ по +序数詞女性(時)処格」または「基数詞(分)+ на +序数詞女性(時)対格」の構造になります。
特に на を用いるときは注意です。「на +対格」は過去に説明したとおり、「向かう方向」を表しますので、на を使う構造は直訳すると「~時に向かって~分」ということになります。すなわち、実際に意味される「時」は女性の序数詞で表される数字の一つ前になります。時計の上での「時間」というものに対する理解が少々日本語の感覚と異なるため、誤解のないよう注意しましょう。
また、「30分」は пів で、「15分」は чверть を使って表す事が多いです。このとき пів はふつう、на とともにのみ用いられます。
次に、30-59分くらいまでについて「~時~分前」を表すときは、「за +基数詞(分)対格+序数詞女性(時)主格」または「基数詞(分)+ до +序数詞女性(時)属格」の構造になります。
до を使う方は「~時まで~分」ということなので分かりやすいですが、за を使う方は「~分後に~時」ということなので、「分」の方に前置詞が付くことになります。
このときも пів や чверть を使います。пів のときは до と共に用います。
ところで、「1分前」というときは、数詞ではなく、ふつう хвили́на を単数形で用います。
「分」の表記に限りませんが、このように数字がついて単位として扱われる語は、省略されることも多いものの、数字が「1」の場合はその単数形が単独でよく用いられます。
なお、「ちょうど~時」を表すときは前か後ろに рі́вно をつけます。
動作が行われる時間、つまり「~時に」「~時~分に」を表現するときは、前置詞 о (об) を用いて、「о (об) +序数詞女性(時)処格」の構造になります。об の形は次に来る語が母音で始まるとき、つまり時間の場合は одина́дцята 「11時」の前でのみ用いられます。
なお、「~時~分過ぎに」や「~時~分前に」のときは о を付けずに単に時間を表すときと同じ形で良いようです。
また、下手に覚えなくてよいのですが、特に東部やロシア語話者の間でロシア語的な時間の表現もされますので紹介しておきます。ウクライナ語としては間違いだとされていますが、もっぱらこちらを使っている人もいるようなので、こういうのもあるんだなとなんとなく頭の片隅に置いておくとよいかと思います。混乱するようであれば、無視してください。
年月日の表し方
「2024年」などの年数は「序数詞+ рік」で表されます。「序数詞」のところで少し説明したとおり、大きな数字では一番下の桁のみが序数詞になります。
また、序数詞で表されるため、当然ですが рік は複数形とはならず、単数形です。
「~年に」と出来事や動作の行われる年は、属格または「в/у +処格」によって表されます。
ウクライナの月の名前は、ローマ暦由来の名称を用いているロシア語や英語と異なり、スラヴ語本来の美しい月名を残しています。人間の活動によるもののほか、自然環境や植物に由来する名称が多いのが特徴です。
下記は一覧表です。よく使う属格と「в/у +処格」、それから月名の有力な由来(本来は古いスラヴ語ですが、ウクライナ語の対応する語で説明しています)も簡単に入れています。いずれも男性名詞で、лю́тий 「2月」のみ形容詞型です。英語と異なり大文字にはなりません。
日にちなしで「~月に」を表すときは「в/у +処格」で表されます。
日にちは序数詞の中性形で表されます。なぜ中性形かというと、число́ 「数字/暦日」に序数詞がついているものとして扱われるからです。ただし、число́ は日付を尋ねるときや、公的文書や契約書などでもなければ、普通は省略されます。
ウクライナ語での年月日の表し方は欧州式で「日―月―年」の順になります。このように日と月、または、日から年まで並べるときは、月と年は属格を取ります。「~年の~月の~日」というわけですね。
数字のみで日付を書くときは、「24.08.1991」のようにピリオドで区切って書きます。この場合、日付や月が一桁の場合も0をつけて書きます。スラッシュやダッシュで区切られる場合もあります。
または、「24 серпня 1991 року」のように月名のみ文字で書くことも一般的です。この場合は ро́ку は省略しないことが多いようです。
動作などが行われた日付を表す「~月~日に」を表現するときは、日にち部分が属格になります。
曜日
数詞とは関係ありませんが、一週間の曜日もここで紹介しておきましょう。
「~曜日に」を表現するときは「в/у +対格」になります。処格ではありませんので注意してください。水曜日のみアクセントが移動します。
ウクライナではカレンダーは月曜日から始まります。火、木、金はそれぞれ「2番目の日」、「4番目の日」、「5番目の日」が語源となっており、水曜日は「週の真ん中」の意味です。日曜日はもともと「働かない日」、月曜日は「日曜日の後の日」を意味し、土曜日は究極的にはヘブライ語のシャバト(安息日)に由来します。
その他
こちらも数詞ではないですが、時間にまつわる副詞や表現を一覧的に紹介しておきます。
以上です。お疲れさまでした。次回からはついに動詞に入っていきたいと思います。
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