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今日気持ちよかった音楽: Melodiesinfonie - We Gonna Be OK

スイスのチューリッヒを拠点に活動するMelodiesinfonieことKevin Wettsteinは、ミュージシャン、プロデューサー、作曲家、ビートメイカーなど数々の肩書が冠される多才なクリエイターだ。

幼稚園の先生をやりながら音楽活動

オーディオ・マニアな父のレコード・コレクションに囲まれて育ち、ドラマーとしての活動を経てビート・メイクの世界へ。当初は幼稚園の先生として働きながら音楽活動を行っていたそうで、スピリチュアルで自然派なマインドが色濃く反映された彼の音楽は、優しい手触りだ。

上の曲は、2016年発表のアルバム『Be Thankful』から。当時の作風はJazzやHipHopよりもelectronicaの色が強く、ユニークな音使いや、つんのめったリズムが気持ちいい。
このころに私が知った音楽を紐解いてみると、The Lemon TwigsChildish GambinoBlood OrangeyahyelD.A.N.Walkingsなどが挙がる。他にも、「Anderson .Paakの『Malibu』めちゃくちゃ聴いてたなー」とか、脱線してきたので閑話休題。

同年には『Unreleased Jass 2012 - 2013』という作品も発表。彼が18歳の頃に発表したLo-Fi Jazz作品の続編だが、この方面でも才気がほとばしっていることに驚かされる。



ビートとループを作るという構造から脱却

2018年に発表した「TOKYO」も人気は高く、ミュージックビデオには日本の映像が使用されている。中には、ドリキンこと土屋圭市氏の姿も。音楽のみならず、映像までLo-Fiで素晴らしい。


そして翌年の『A Journey To You』では、ビートとループを作るという構造から脱却することが非常に重要だったという。
自身の演奏する楽器に加えて、フルート、トランペット、パーカッションなどの奏者を招いた。サンプリングは排除し、よりオーガニックなJazzを構築。結果、大きな評価を獲得し、今も彼のSpotifyの人気曲には、本作の曲がいくつか挙がっている。



サイケでドリーミンな気持ちいい進化

アルバムごとに異なる作風は、Melodiesinfonieの大きな魅力だ。
2020年に発表した『Fragments』は、1年前から始めたというギターが中心になり、けだるい歌声も相まって、Psychedelic rockやDream popの恍惚感を得た。

そのアプローチは、次作『We Gonna Be OK』で、さらに昇華する。ルーズなタッチのギターを巧みに使い、深みのあるpsychedelia、melancholiaを奏でていく。

例えるなら、JazzやHipHopの要素を強めたBeach Houseのような。折り重なった極彩色のアクリル絵の具が、ゆっくり溶け落ち、滲み混ざり合っていくのを、ぼんやり眺めているような快感。

人気で言えば先述の『A Journey To You』だろうが、歴を重ねて、より気持ちいい方へ進化してくれる。私にとっても嬉しい存在です。



余談

最新シングル『Tranquil』
2022年末には最新シングル『Tranquil』も配信されており、Lo-Fi Jazzっぽい鍵盤楽器を主とした作風。また一歩、新たに踏み出している。


指ドラムのライブ映像

とにかくYouTube等にミュージックビデオがない。ビートメイカーらしくて好印象だが、こちらに指ドラムを披露しているライブ映像が。


そして、書けば書くほど長くなる悪癖がさっそく……。