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拝啓、谷内亮太さんへ

冬の匂いが色濃くなり、木枯らしが吹きすさぶ頃となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

トレードの報を聞き、いても立ってもいられず筆を取ったものの、何から書いていいのか分かりません。なので、少しだけ私の思い出話にお付き合いいただければ幸いです。

初めて谷内さんを見たのは私が今ほど野球が好きじゃなかったころの2013年、ルーキーイヤーに神宮で開催されたオープン戦でした。
キャッチボールで出てきた選手でイケメンがいる、と思ったのが谷内さんでした。試合内容は正直覚えていません。覚えているのは谷内さんの三塁後方にポトリと落ちるヒット。後で調べたら同い年で、何となく応援したいな、と思ったのが私の谷内ファンとしての始まりです。
開幕は一軍で迎えたものの、出場機会もなく抹消され、私は谷内さんを見たい一心で人生初めて戸田に足を運び、その近さに驚いたことを覚えています。
生まれて初めてプロ野球選手にサインをもらったのも谷内さんでした。「同い年です、応援してます」と伝えたら少し恥ずかしそうに笑っていて、ああやっぱりこの人はかっこいいなと思ったのを昨日のことのように鮮明に思い出します。その節はありがとうございました。
初めてのヒットは初打席、神宮で山本昌さんから打ったセンター前タイムリーヒット。たまたま休みだった私は外野席で、出来上がってすぐの谷内さんのユニフォームで母と観戦していました。あの頃から、私の感極まってすぐ泣く癖は変わっていません。

その年から、谷内さんが野球をしている姿を見るために日本全国を駆け回ってきました。どこに行っても、どんな場所でも、目の前のボール一球一球に真剣に向き合い、いつも選手の輪の中心にいて誰かと笑い合う、そして子供に優しい、大好きな谷内さんの姿がそこにありました。

この6年間、私には谷内さんがどんな思いで野球に向かっていたのかなんて、知る由もありません。ただ、良い時はもちろん、悪い時も腐ることなく、どんな時も、野球に真摯に、全力で向き合う姿ばかりを見てきました。それだけ、強い覚悟と意思を持って向かっていたように思います。

2016年初めの怪我。あの時はあんなに頑張っている人に試練を与えるなんて、野球の神様なんていないのかもしれない、と思いました。このまま一生、野球ができなくなってしまったら、と悪い想像が頭をかすめました。
でも手術を乗り越えて、戸田で初めて見た谷内さんは左手にギプスをし、右手にグラブをはめて、心の底から楽しそうに野球をしていました。痛々しい姿に胸がぎゅっとなったと同時に、あんな不自由な状態で、こんなに楽しそうに野球をする人はきっと他にいないだろうな、とも。
あの時、こんなに野球を好きな谷内さんが少しでも長く野球を続けられるといいな、と野球の神様に祈るような気持ちで見ていたのを覚えています。

今回のトレードについて、正直、私はまだ受け入れられてはいません。

わがままかもしれないけど、ヤクルトの谷内さんをもっと見ていたかった。
チームのみんなに愛され、慕われ、いつも輪の中心にいる谷内さんだからこそ、ずっとヤクルトにいてほしかった。
ずっとヤクルトにいて、ヤクルトでユニフォームを脱いで、みんなに愛されながら引退するんだと信じてました。いや、今でもそれをできるだけの力が谷内さんにはあると信じてます。
だからこのトレードは嘘なんじゃないか、と。
来年、この目で違うユニフォームを着てプレーする姿を見るまでは、私はこんなことを考え続けるような気がします。

でも、一つの区切りとして、今伝えたいことはこれだけです。
「ヤクルトに来てくれてありがとう。」

谷内さんがヤクルトに入団しなければ、ヤクルトファンの私はきっと谷内さんを一生知ることはなかったし、野球がこんなに楽しくて、素敵なものだと知ることはなかったと思います。
谷内さんのおかげで、野球を好きになりました。
野球を好きになって、野球を通じてたくさんの人に出会って、私の人生は変わりました。本当に感謝しかありません。

谷内さんの野球人生はまだまだこれから先続きますし、このトレードは通過点です。
ユニフォームが変わっても、背番号が変わっても、球場が変わっても、いつでも、どこでも、谷内さんの魅せる野球はきらきらと輝いていると信じて止みません。
日本ハムに行っても、ファンを魅了して、きっとヤクルトにいた時以上に愛されるのだと思います。
イケメンだから、日本ハムのユニフォームもきっと難なく着こなしちゃうんだろうな、と考えていたりもします。
たとえチームが変わったとしても、その姿を見れる日を心待ちにしています。

私もきっと変わらず、これまで通り、その姿を目に焼き付けるために、日本全国を駆け回るのでしょう。たとえそれが北海道だとしても。
これまでも、これからもずっと、谷内さんのプレーと、その真っ直ぐで優しい人柄が大好きなことには変わりありません。
来年の開幕にまた谷内さんに会えることを楽しみにしています。

何卒どうぞ、怪我だけにはお気をつけて。
今後の活躍と、幸多からんことを願って。

敬具

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