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自分の業界以外の人の話

ぼくは自分の仕事に関わる以外の仕事をしている人の話がとても好きです。

自分の携わる業界以外の方のお話は自分の仕事のヒントになることもあったり、同じ仕事の人でも考え方や文化に触れ感じることがとても好きです。

▼システムエンジニアをしていた時に感じた違和感

システムエンジニアをしていた時代、もう30年近く経ちますが……
その時感じた違和感がありました。

それは『専門用語』『業界用語』についてでした。

ぼくはだいたい3年目くらいの経験だったでしょうか……一つの大きな仕事を終えて、二つ目の大きなプロジェクトで仕事を進めていました。

その時にお客様にこう言われました。
そんな専門用語ばっかり言われてもわからないよ!
と。
確かに今振り返りますと、当時のぼくは覚えたての用語、カタカナ言葉も含めて得意気に話していました。
それは同じプロジェクト内、技術者同士で話している時は何の違和感もなく話していたことでしたが、お客様に通じなくて当たり前です。

しかしながら。
その後、どんどん違和感を感じていったのです。
それはそのお客様が打合せの席でご自身の業界の専門用語やその「組織」だけに通じる用語を使って発言されているのを聞いた時でした。

もちろん、システムエンジニアですからお客様先の業界を勉強するのはあたりまえですし、ぼくたち(当時は)エンジニアはお客様にわかりやすい言葉で打合せなどに望むのは当然のことです。
とはいえ、当時のぼくの違和感はどんどん膨らんでいきました。

というのも、同じ業界の大きなプロジェクトを一つ経験していましたので、その業界の所謂『専門用語』はだいたい意味は押さえていました。
もちろん、全てではありませんが……しかし、何度聞いても「?」と思う箇所があった
のです。

それはその組織でしか使わていない言葉についてでした。

もちろん、日が立てばその用語についても意味がわかるようになってきますし、その言葉自体についての疑問も持たなくなります。

しかし、プロジェクトが進むにつれ、そういった「組織内用語」は増えていきました。

ある時同じプロジェクトの先輩に聞いてみました。
「どうして、あの方は組織でしか使わない言葉を頻繁に使うんでしょうか。一般名詞でも同じですよね?」
この質問を聞いた先輩はニヤニヤしながら答えてくれました。
「武藤くん。この業界(お客様の業界)の人はね、基本的に大学に入ってから、職場で職につくまで同じ環境なんだよ。他の環境の文化は入ってこないんだ。入ってきたとしても薄いものだし、言葉一つにしても置き換わるのにおそらく何十年もかかると思うよ。
だからこの業界の人はさ、ちょっとずれているって言われるんだよね。」
と。
また同時に
「だからこそ、あの人が言っている『組織内用語』はさ、彼らにとっては一般名詞の認識なんだよ」
と。

ぼくはその言葉を聞いて非常に得心したのを今でも覚えています。

▼一度外の環境に出た人は・・・

ぼくが感じていた違和感に一つの答えが出ました。

この2番目の大きなプロジェクトのお客様と最初に携わった大きなプロジェクトとのお客様の違いは……
1番目のお客様は、同じ業界と言えど、そのご出身は色々な組織からでした。対して2番目のお客様は『外の環境』とはほぼ無縁だったのだな、と感じたのを覚えています。

たとえ同じ業界、同じ職種だとしても……違う組織での経験をした人とそうでない人、違う業界の事情を知っている(第三者からの伝聞ではなく直接、別の業界で働いている人の話を聞いたり体験したことがある)人とまったくしらない人では大きな違いがあるな、と感じています。

無論、どちらの方が良いか悪いかなどということはわかりません。

ずっと同じ職種で同じ組織にいても仕事はもちろん磨かれていくと思いますし、そう云う人をたくさん知っています。
同時に外の環境に触れた人は自分が体験してきたものと違う文化をご自身のお仕事に取り入れる人が多いです。

ただ、はやり、世の中は自分の組織だけでは立ち行きませんし、自分たちの都合だけでどうにかなるとは思ってはいません。
どうにかなる場合は、やはりどこかに無理が生じたり、大きな事故やスケジュールの変更、経済的な損失などがでてくるのではないか、と考えています。

そういったところから見ると、自分の専門分野はもちろん大事ですし、自分の仕事を進める上において、他の組織や業界の人と何か仕事をしていく場合は特にお互いの『文化』を大事にすることが必要だと強く感じています。

▼自分の環境と違う人の文化

例えば、お弁当屋さんにお弁当を買いに行ったとして。
自分の作り方と違うからと言って文句を言う人は滅多にいないと思いますし、販売方法に対して難癖をつける人もほぼ居ないと思いますし、その店主がハゲだからと言って、お弁当の味に違いが出るとは思えません。

お金を払っているから、お客だからと言って……
その相手の文化を自分の思う通りにできないことは当然のことだと考えています。

お金を払って得るものはサービスや商品であり、お金を払ったからと言って「いう事を聞け!」
ということにはならないと思います。

ましてや上記のように(お金の関係があるにしろないにしろ)同じプロジェクトでおこなっていく時は……相手の文化を尊重しないとできないなぁ~と感じる事が多いです。
ですから、当時のぼくは、自分の業界(SE業界)の言葉をなるべく別の、所謂一般に使われる言葉に置き換えて喋った方が良いですし、お客様の「組織内用語」もなるべくたくさん吸収していくべきではあり、しかし、仕事の内容、方法についてお客様の思う通りにする必要はなく、お客様が求められた製品を作り上げるというのが大事なことだったと今にして思います。

自分の過ごしてきた環境と違うからといって、相手の業界や仕事が間違っているとは思いませんし、ましてや文化を否定したら前に進まないと感じています。

▼違う文化を取り入れること

今のぼくの職業は舞台演出家です。(他の書く仕事だったり、照明や音響なんかもありますが……

システムエンジニア時代の癖でもありますし、上記のような体験をたくさんしてきた、というのもありますが…
舞台演出家としても物書きとしても……
業務知識と言いますか、他の業界、自分の環境以外の人の話を聞くことが非常に好き
です。

それは他の文化をと入れているのかもしれません。
また他業種の方のお話を聞くと、自分の演出作品や書くルポに対してもたくさんのヒントや考え方を頂く時が多い
です。

ぼくは自分のやり方や思考、思想に自信を持っています。
もちろんそれは誰に認められたからとか、誰々のお墨付きをもらっているから、〇〇の本のやり方と同じ方法をとっているからというわけではありません。

自分の仕事のやり方、思考、思想はぼくが経験した今現在の結果だと思っていますし、これらは言わば『生き方』の一部だと思っています。

とはいえ。
ぼくの思考や思想、仕事のやり方が正しいとは一つも思っていません。
正しくない分について考えますと・・・時間ができれば仕事のやり方を変えてみたり、考えてみたり……
このコロナ禍でいくつか考え方ややり方を変えた部分がありました。
――自由にはできないこともありますが、他の業界や環境の方のお話を聞いて文化を取り入れたりしながら、変えていくことも多いです。

ぼくにとっては正しくても、他人にとって正しいとは限りません。
ですから自分の仕事のやり方や思考、思想に自信を持っています。
万が一持っていなければ……お金を頂くわけにはいきません。

そうした中で仕事を続けていく中で、たくさんの方を文化に触れ、吸収し、変えたり、まったく別のものにしたりしていく事で仕事に磨きをかけていっていると感じております。

自分の環境から別の環境になったり、別の環境の文化を触れ感じる事は……自分の文化を磨いていく事なのかな、と最近特に感じております。
その中で自分の生き方、生きる目標、信念が大きく変わることはないと思いますが、それでも自分と違うやり方や意見や考え方に触れないより触れ、考える事を続けていきたいと強く思っています。


舞台演出家の武藤と申します。お気に召しましたら、サポートのほど、よろしくお願いいたします!