サブテキストってのは、本当に大事です。
こちらの記事でサブテキストとはいったいどういうもか、ということを述べました。
今回はその作り方について、不肖ぼくの考えていることを述べていきます。
▼台本の仕組み
台本には色々な要素が含まれています。
大きく大別すると、台詞とト書きです。
台詞はその役が喋る部分、ト書きは役の動きやその物語の状況・設定などが書いてある部分です。
台詞と台詞、ト書きとト書き、台詞とト書きの間に、書いてはいなけれども、存在する―――それがサブテキストです。
サブテキストを読み込み、つくることは、役作りをする上での最大のヒントとなると考えています。
▼サブテキストの作り方
例えば、ある役を配役された場合、他の役の台詞があり、その次に自分の台詞があったとします。
例えば、
Aという役を配役されていて、Bという女の子が相手役だと仮定します。
1)
B「私、甘いもの大好きなの」
A「まじで!そうなんだ!僕も大好きなんだ!」
という場合と
2)
B「私、甘いもの大好きなの」
A「へえー僕は嫌いだな」
という場合と
3)
B「私、甘いもの大好きなの」
A「・・・そうなんだ」
という3つのシチュエーションがあるとします。パッと見た感じ、3つの物語からはAという人間像がそれぞれ違うように思います。
一見、
1)はBに同意をしている→好意を寄せている
2)はBとは反対の考えを述べている→好意を抱いていない
3)は話題そのものは肯定している→興味がなさそう
というように解釈も出来ますが…
例えば、
3)
の場合、本当はAはBに対してとっても興味があるはずのに、あえて興味がなさそうに振るまい、関心をひこうとしている、ともイメージできます。
つまり、この台詞と台詞の間に様々なイメージが広がるわけです。
もちろん、この台詞だけでは確かなことはわかりません。
物語全体を何度も熟読して、台詞と台詞、ト書きとト書き、ト書きと台詞の間に潜んでいるヒント、サブテキストを読み取るのが役作りで行う上で非常に大事であると考えています。
▼作っては消し、消しては作る
当然、台詞やト書きを踏襲するのはあたりまえですが、このサブテキストの読み込みを行うことによって、俳優さんによって、その役の印象が違ってくるのもまた、確かなことだと考えています。
もっと言うのであれば、行間、一行一行の間にさえ、その役、他者の心の揺れ動きがあり、同時に表情のヒント、仕草のヒント、台詞のヒントが隠されていると考えています。
そして、自分のセリフだけでなく、自分と相手のセリフ、ト書き、他の俳優さんの『役作り』に触れると・・・自分が作ったサブテキストに矛盾が出る場合があります。
その矛盾が出た時に、更に情報を集めてサブテキストを再度作り直します。
・舞台背景
・自分の役の心理状態
・自分の役の生理状態
・他の役の行動への反応
などなど…色々な要素を加味し、自分の役のサブテキストを作っていきます。
作っては消し、消しては作る…稽古だけではなく、時には俳優さん同士の話し合いも必要になってくることもあります。
こうして、どんどん自分のサブテキストを作っていきます。
なにせ、役は舞台上で生きているわけですから…理想としては、一挙手一投足までかければいう事はありません。
しかし、それは不可能に近いので、できるだけ詳しく・・・自分の役の役作りのヒントを作っていく事が肝要だと考えています。
▼自分の役が出ていない時の・・・
そして忘れてはならないのが…
自分の役が舞台上に居ない時の「サブテキスト」です。
役上、死んだことになっていなければ、その役は必ず「どこか違う場所」で生きて、活動しています。
お客様の目には触れないところですが、その役として何を見て、何を聞いて、何を味わい、何を嗅ぎ、何かを感じていたのか考える必要があります。
台本に特に指定していない限り、俳優さんがこの間の「サブテキスト」をつくることで、次に「登場」する時の役が生き生きとしてくると考えています。
▼サブテキストは俳優さんの仕事の大部分
このサブテキストの読み込みと想像こそが俳優さんの仕事の大部分を占めているとぼくは考えています。
このサブテキストを読み、作れるかによって、「その役が舞台上でいきる」ことができるか大きく変わってくるのではないか、と考えています。
この俳優さんのサブテキスト作りのイメージを最大限に広げてもらうために、演出家は言葉、時には身振り手振りでイメージを伝えるのが仕事だと考えています。
舞台演出家の武藤と申します。お気に召しましたら、サポートのほど、よろしくお願いいたします!