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すてきな傘がほしい

すてきな傘を1本持っていたらどれほど幸せだろうかと、もう長いこと思い続けている。
それを思い出すのは決まって雨の日の玄関、いつどこで手に入れたのかわからないビニール傘を乱雑に掴んで出かける際のこと。

ビニール越しに透ける、雨粒に濡れたいつもの風景もさほど悪くはない。悪くはないけど、あの玄関でのもやっとした気持ちがどうにもひっかかって、でもなぜだか雨上がりとともにすっかり忘れてしまうのだ。そのくりかえし。

すてきな傘のことを考える。まだ見ぬわたしのすてきな傘。
雨雲の下で映えるような華やかな柄なんてどうだろう。でも友達の朱色の傘に積もった雪がとてもきれいだったから、何か一つの色を選んでみてもいい。
いつかこっそり借りた母の傘のみたいな長い傘をバンと広げて、その中にすっぽり包まれたい。いやでも閉じたときに引きずってしまうから短いものの方がいいか。
持ち手はどうしよう。しっかり手に馴染む木のものがいいな。昔は古臭く感じていたけど、今はなぜだか乙女の持つ白いレースの日傘とセットで思い出されてなんだかドキドキする。

すてきな傘がほしい。いつかわたしだけの、すてきな傘を。

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