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プレゼンシート制作の心得-木の家グランプリ2021を用いて-

 こんばんは、三浦です。
 
 休養中といえ働き口を探さないといけないということで就活作業をしていたのですが、その過程で作成・提出したコンペシートに出会い、色々とやってきたことを思い出しました。
 
 この先、私も作り方や様々な視点を忘れないようにするため、本投稿ではプレゼンシート制作の心得を議題としていきます。参考として「木の家グランプリ2021」のシートを用いながら説明します。ありがたいことに綺麗に整っているとお声をいただいたのでそれを使用します。
 この投稿ではプレゼンシートが例になりますが、以下の心得はプレゼンシートだけでなく、梗概やパワポなどあらゆるデザインに応用することができる、と私は思っています。
なので、パースやダイアグラムの作り方だけでなく、そもそもレイアウトどう綺麗に作るの?とか余白もデザインなの?とかいろんな工夫できるポイントをお話しできれば良いなと思います。その上で箇条書きやメモ書きのようになりますが、文章よりはわかりやすく都度挿絵を入れていきます。
また、その作業に伴うソフトの簡単な使い方や技能に関してもお話ししていきます。
 
 長くなりますが、お付き合いください。様々な視点や気づきをお互いに得ながら良いものを作っていきましょう。

※本シート制作に用いたソフトや技能
・手描き
・iPad Photoshopをミラーリングして使用(液タブでも可?)
・Rhinoceros SketchUpやBIMでも可
・Vectorworks 図面書ければ何でも可
・Illustrator
・Photoshop

※使えるソフトと技能は使える種類が多いほど、制作時間を短縮できたり、表現の幅が広がったりします。一緒にマスターしていきましょう。

全体構成とレイアウト


 レイアウトをするあたり、「比率」「塩梅」「設計する意識」を心がけている。経験がものをいうところでもあるが、キレイなプレゼンシートを作るための多様な視点を手に入れると思ってくれれば嬉しい。

出だし(要項確認と推しの把握)

※使用するもの
・脳みそ
・A2に対して比率のわかるもの(私はIllustratorでA2のアートボードを用いる)

◯提出物要項の確認
提出図面(各階平面図や配置図、断面図や立面図)の有無、縮尺の確認
A2で2枚の構成+縦使い

◯レイアウトの魅せ方
1枚で魅せるレイアウトではなく、2枚で魅せるレイアウト
2枚に跨るレイアウトではなく、2枚に分かれたレイアウト(データ提出などのPDFの課題)
さらに縦使い…並べて読む時にNに視線が動くことが考えられる

◯推しの比率(いわゆる推しパ、推し図面など)
1枚でないことから、「タイトルと提案の印象に繋がる頭(1枚目)」「まとめとなりシートが失速しないための結(2枚目)」をそれぞれ考慮する
※この時点で図面やパースが描き上がっている必要はない
※木の家では、結が頭より印象深くなるのもまずいと思い、推しパは頭に持ってきている。そのため2枚目には各シーンのパースと、提案がわかりやすい各階平面図を入れ比重は変えつつ、2枚共に見せ場を作るように意識

◯図面配置
情報量の多くなる断面図や地面を着色した立面図などは「重いもの」としてシートの下に配置するようにしている。地面が中途半端に真ん中にあったりするとシートの構成がそこで途切れてしまう。もし。推しだから真ん中に載せたいなどある場合、地面の着色を薄くするもしくは無くして断面線を濃くするなどすればキレイにいくだろう。アイコンやダイアグラムなどは比較的「軽いもの」として扱いコンパクトにまとめると良い。

◯提案内容の取捨選択(後の「起承転結と序破急」で詳細に)
全てが提案であるゆえ全て載せたくなる気持ちもわかるが、提案に必要な情報を簡潔に整理し、小さくてもまとめられるものは小さいスペースにする
図面が必須であれば、貴重なプレゼン物なので推しに使うか、次に目立つように工夫する(※推しに使うもので順変動)

↓ ※設計したもの、提案内容によるためそことの擦り合わせ必須

◯構成
[1枚目]提案した住空間と暮らしのイメージが湧いてくる印象
・推しパを前面に押し出すよう大きくスペースをとる
・読まなくともいい(より詳細に見たくなったときに見ればいいもの)前段は文章やアイコンで崩してまとめる(ぞれぞれを面のようにまとめる)
・断面図は線だけでも情報量が濃くなる そのまま線画で載せても比率が高いことから線画にしている
[2枚目]1枚目よりも詳細に情報がわかる印象
・各シーンのパースを推しパより書き込みを少なくし、3枚合わさって面となるように意識
・平面図は線画として目立ちつつも面として扱えるように着色する
・平面図の着色した余白をスペースとして捉え図面では伝わり切らない情報を記載
・立面図も面となるよう着色

面と線

※使用するもの
・脳みそ
・塗りつぶしなど簡易に変更できるもの(紙のスケッチでも、PCでも)

プレゼンには多様な情報が載る。
そのため、情報量が多くとも整理されている方がわかりやすい。
そこで、「面と線」の考え方を用いる。
上記でも線やら面やら単語が出てきただろう。
 推しパでも書き込みの少ない線画になってしまうと、まとまった文章が面となり、その面の圧に負けてしまう。しかし、雰囲気を出したく柔らかい表現にしたいこともあるだろう。そこで影や大まかな着色をして面として仕上げる。線画はシート上で面となり、線画の時よりは見栄えが良くなったのではないだろうか。影でなくても地面や空にうっすらと色を入れてあげるだけで見栄えが変わると思う。

 木の家では図面の線種も多くなってきていた。そのため、図面に着彩を施すと煩くなる上に、提案したいことが率直に見えなくなる可能性も出る。
ゆえに、推しパでは面になるように着色を施し、図面は線データとすることで比率を調整したのである。

 しかし、2枚目は全部面になっていると感じるだろう。このシートではパースに加え、平面図も重要となってくる。そのため、立面図も含め面に仕上げることで全体のまとまりとして空白がないようにしている。着色はしているものの地面や空の色を薄くすることで、面の中でのヒエラルキーをつけるのである。そうすることで、面でありながら線画も勝ち、全体として見栄えの良いシートになったのではないだろうか。

 面と線の塩梅は、全体構成と並行して行うと良い。塗り潰しの効く配置や推しの比率など、連携し合うところだからだ。また、面の中でもヒエラルキーをつけるとなるとIllustratorのグラデーションツールがおすすめだ。PCで作業する方が時間かかるという場合はA2に対しトレペを重ねるのでも良いかもしれない。

 もちろん線にもヒエラルキーが出てくる。図面の線と大枠の線とでは重要性が異なる。そのため図面は線でしっかり書き込み、線で面的に作るのか、着色も施し線は程々にするのかなど、調整する必要がある。
調整には提案やシートにより塩梅が変わるので、一概にこれとは言えないが、線のヒエラルキーも頭の片隅に置いていてほしい。

起承転結と序破急(提案構成)

※使用するもの
・脳みそ
・ノート、PCのメモ、LINEの自分との個人チャットなど見返せるもの

 独学だが、ストーリーの構成には4段階構成の起承転結3段階構成の序破急がある。
 プレゼンシートのタイトルの横などにある導入文などはこの起承転結の起に当たるものが多いと考える。論文であれば、背景を起として物事を順序よく組み立ていくために起承転結から派生させていくと思うが、プレゼンシートの役割は提案を伝えることである。そのため、コンセプトや導入も提案の一部ではないかと考える。少なくとも私の木の家ではコンセプトも提案の一つとして扱っている。
 要は、シートに載せる情報は提案のみ(+その提案による効果)でいいと考える。要項によっては背景など書いた方が具体的になるものもあるので一概にとは言えないが。そうなったとき、起承転結だと結に行くまで時間がかかるため、序破急とし提案の3部構成にする方が伝わりやすいと考える。
 また、議論を起こしたいところを考えてほしい。提案が集まってくるところで背景の議論だけで盛り上がりのは勿体無い。それなら建築の新たな可能性として掲示する提案部分が議論対象になった方がいいので提案を全面に出していく(提案のみの3段階構成と考えてみる)。提案部分の図案で大きく比率をとることを考えた方が良い。

ex)
起承転結1 背景
      ↓
      コンセプト
      ↓
      提案(空間や活動など、提案の効果)
      ↓
      展望

起承転結2 目的・背景
      ↓
      方法
      ↓
      結果
      ↓
      考察

序破急   提案1(コンセプトやダイアグラムなど抽象的な提案)
      ↓
      提案2(図面やパースなどを用いた具体的な提案(提案の効果))
      ↓
      提案3(他の提案の効果(将来的な可能性・展望など))

 さらに、提案だけを載せているが4段階変化するよりも3段階変化のように変化の回数を少なくして提案同士の関係性を見やすくしてあげるという意図もここにはある。起承転結であっても比率の操作でうまく魅せられる場合もあるので自分の提案に適したまとめにすることが大切である。

[木の家を例に]
 木の家のシートを例にとると、「モノを有人化する」という導入がいわゆるコンセプトにあたる一方で、提案でもある(住空間と暮らしの新しい可能性を生み出すにはこう考えたらいいのではないかという提案)。また、「ズレによる多様な場所」は空間のコンセプトであり、これも提案である。二つともコンセプトなのだが提案でもあったため、コンセプトとして処理するのが難しかった。そこで今回はコンセプトという名目を無くし、全て提案とする構成でまとめる方向性にした。さらに、「モノを有人化する」は住空間にも暮らしにも新たな可能性を試みる抽象的な提案であるのに対し、「ズレによる多様な場所」は暮らしにも影響する一方で建築を構成するための具体的な提案であった。同じコンセプトという括りであっても、提案の具体的さや効果が異なっていたため、提案の中でもシートでは異なる小見出しをつけて分離している。
 しかし、これらは図面から見るとまだまだ抽象的な提案となっている。そこで、シートを理解するためのスタートラインとなる対象敷地など含めた2つのコンセプトは「序」として大きくまとめている。具体的にどんな空間でどんな生活行為が起きるのか、またそれはどんな風に見えるのかとして、生活行為の例を含めた断面・各シーンのパース・平面図や植栽の説明を「破」とし、音守駐在所のことや立面図で述べた展望などを「急」とした。
 プレゼンシートには書けなかったのだが、敷地が公園になっておりずっと住宅として立ち続けるわけにはいかない。そこで、住宅が後に避難拠点となったり実際に駐在所や子どもの遊び場として用途変更していく可能性も提案としてあった。この内容は「急」にあたる。

 起承転結2にあるように方法が入ってくる場合もある。卒業設計や修士設計では方法論を提案する場合もあるため、起承転結で承が方法の掲示でもあり提案でもあるような形になると考える。しかし、木の家2021の提案は方法は大して重要でなく、それを提案することによってどうなるのかという効果の提案が重要だったため「序」で提案するコンセプトを示し、「破」ではそれらによる効果を提案し、「急」で提案とその効果が生む将来的な可能性という構成となった。

[私流まとめ方]
 最初から4段階にしても3段階にしても大枠の構成はあるが、暮らしの提案がどこまとめらるかなど私は一発で決められない。ここでも構成を設計するようにしている(アイディアコンペによっては段階なく表現しているものも見られる)。

提案の中身、必要要項を書き出す

プレゼンしやすい、相手が理解しやすいように入れ替えたり組みわせたりして段階をつくる(まとめて言った方いいのか、分割した方がいいのかなど)

3段階か4段階の適切な方をとる(提出する場所に応じて要検討)

内容の取捨選択をし、必要なものだけを組み合わせシンプルにしていく
※小見出しの付け方が鍵となる。小見出しを見たとき提案は提案でもどんな提案かがわかるみたいになっているといいかもしれない
※論文や設計の梗概では提案と大枠を作り、その中で小見出しとして節分けしていく

このようにして建築の設計同様、常に設計しブラッシュアップすることを心がけている。


各図面と提案内容のリンク付け

※使用するもの
・脳みそ
・上記で作成してきたレイアウトやアイディア帳

 必要図面や加筆するパース(描けてなくていい、何を描けばいいのかここで考える)(どうしても見せたくて描けてる場合、どういう役割にするのか考える)、提案構成の大枠が決まってきたところで、それぞれにどんな役割をになってもらうのか整理する。図面は図面でも、図式的にプレゼンに使用されるものなのか、図や絵として載せているだけでいいのか変わるからである。より効果的な方法を考えることが大切である。また、書いた図面が何を説明できるのかについてもここで考える。
 この作業は、労力の的を絞るという意味でも重要である(作業労力の比率)。たくさんプレゼンしたいことがあるからといって全て作っているのでは途方に暮れる。建築の提案であること、必須図面があることなど条件からまずは最低限作るべきもの+補足程度に揃えてそれぞれにどんなプレゼンの可能性を考える。これをすることで、本来作りたいもののクオリティを上げることができるからである。クオリティの上げ方も簡素にいくか、丁寧に時間をかけていくか、ここで分別していく。
 コンペや課題、卒業制作など様々な要項があると思うが、まずは労力を絞り、その個々のクオリティを担保しつつ、図面でできるプレゼンテーションを考えてほしい。
 
※表現自由である場合は、過去事例を見て自分の提案と照らし合わせると  いいだろう。パースだけ、パースと部分図面などの場合もあるからだ。

[木の家を例に]
 実際に木の家2021に提出したプレゼンシートは、断面図にはアイコンを用いた生活行為も同時にプレゼンする役割があり、平面図は図でわかるため図面以外の書き込みは着色程度にしている(樹木名は記載必須要項のため記載している)。
 平面図に空間の説明となるダイアグラムも入れるとごちゃごちゃしてくるため、ずれによって起こる空間提案は冒頭のコンセプトの方にまとめている。また、ずれの効果は断面図や立面図にも関わってくる建築全体の話だ。今回は、平面図よりも先に断面図がくることから、断面図の前にあたるコンセプトにまとめているという話もある。
 各シーンパースで取り上げているのは、断面図でも平面図でも見えてこない立体的な切り抜きとしてイメージしやすいように描いている。これは図面のプレゼンテーションの補足にあたる。図面を横断することで見えてくるものを一発で伝えるためということでもあるだろうか(百聞は一見にしかず的な)。
 プレゼンの時間は限られている。また、住空間と暮らしという建築とアクティビティの二つを見せていくため、どうせなら同時に見える方が伝わりやすく、作るものも選定できるということから、各図面に役割を与えつつ、それぞれにアイコンやダイアグラムを添えた仕様にしたというところである。
 一方で、推しパには、文字を入れたくないが伝える必要があるため、そういう内容は絵として推しパの中に書き込んでいる。手書きの強みである雰囲気が出るような着色を添景の配置を試みている(詳細は推しパ作成)。

余白(文の長さ、端部の揃い含む)

※使用するもの
・脳みそ
・上記で作成してきたレイアウトやアイディア帳
・Illustratorなど(把握しやすい)

[余白の整理を始める前に]
 出だしから作成してきたレイアウトを参考にどれだけの文章が可能か大枠をとる。これは先輩から教わったことなのだが、ダイアグラムにできるものは全部ダイアグラムにする心がけが重要だ。要は文章を図式にしていくということである。例えば、Excelなどで作成するグラフもまたダイアグラムだ。あれが文章になって渡されても理解に時間がかかる。グラフにしたことで視覚化されよりイメージしやすくなり、プレゼンがしやすくなるのである。文章では「見る→読む→理解する」ということが発生するが、ダイアグラムにしてしまえば「見る→理解する」という理解までの段階が減りより時間短縮にもなる(これはパワポ作成でも使える)。
 
一方で、文章でいい情報もある。またそれは文章のほうが伝えやすい情報だ。ダイアグラムにして伝えたい話なのか、文章で補足あればええやろでいい話なのか、そこは要検討である。
 これらを踏まえ、文章の長さや量が整理されてくると、レイアウトしやすくなってくる。

[文章の長さと文末]
 文章の長さとして1行30〜40字程度でまとめると見やすいという風に学部や大学院では学んできた。ゆえに、文章がどれだけ長くともその字数程度で行を整えるようにしている。
 また、理想としては行を変える時の末で単語が跨がないように心がけたい。同様に一語だけ出て句読点がきてしまう文章構成も避けたいものだ。
 私も長文を書いている時はとても苦手だが、意識するだけでとても見栄えが綺麗な文章になる。そのためには、同じような内容でも単語や接続詞の入れ方を検討する必要がある。これは主に、梗概や論文で指摘するものだろう。提出まで時間がなければやる必要はない。気をつける意思は持とう。

[各図面や写真、文章の揃え]
 文章の長さに続くが、要は端を揃えるということである。参考図でもあるように揃っていないと汚くなる。揃えることで簡単に綺麗にシートを作成することができるのだ。
 一方で、揃えるのだが形を一脱させて他は揃えることもある。参考図を見てほしいが比率を変えることでどれが優先度の高いものか区別することができる。例えば、漫画を見ているととてもわかりやすい。漫画は私のレイアウトの師匠だ。特に描きたいコマは大きくし、他は小さなコマにするなどある。バトル漫画などは特にヒエラルキーのついたレイアウトになっているだろう。逆にギャグ漫画などのように淡々と進む場面では同一のコマで綺麗にレイアウトされていることがわかる。
 揃えるのか比率を変えるのか(変えたとしても揃えるところは揃える)を意識するだけで見栄えが変わるはずだ。

[余白の塩梅]
 「けっきょく、よはく。」という余白デザインの本がある。私はこれを読みつつ、塩梅はその都度調整しながら余白の重要性を学んできた。現在進行形で勉強中である。
 上記で揃えることまではできたとして、次は余白である。これも図面の仕上がりイメージと繋がってくる話でとても重要だ。
 余白にもヒエラルキーがある。参考図を見ると余白に強弱をつけてあげることで枠をつけずとも、内容を分類することができる。また、線種が多く密度の高い図面やパースなどは、文章や簡素なダイアグラムで用いた余白よりも多くの余白を使い、ゆとりを持たせてあげることでそこに視線が集まるような工夫もできる。美術館の絵画や展示品などもそのようになっていると見やすくなってくる。
 このようにヒエラルキーを付けながら、個々の密度に合わせて余白を盛り込んでいくことで、よりプレゼンに用いたパースや図面などが見やすくなってくるのである。
 
 木の家では余白だけではヒエラルキーの強弱がつけにくように思えたので、区切りとなるグレーの補助線(図面に用いた黒よりも印象が薄まるように調整)を用いて余白としている。また推しパも余白ではないが、提案箇所は密度濃く多彩に着色もしているが、森や空、手前の植栽、道を淡い色にすることで余白としての役割を持たせて、提案箇所に視線がいくように表現している(推しパは面として作成したかったのもある)。
 余白といっても白いだけでなく工夫次第で様々なゆとりがあることも覚えていてほしい。

仕上がりイメージの把握

※使用するもの
・脳みそ
・上記で作成してきたレイアウトやアイディア帳
・Illustratorなど(把握しやすい)
・手描きスケッチ(手の方が早い時もあり、私は主に手描きでやる)

[簡易的か具体的かの塩梅]
 

[文章量と図式(ダイアグラムや図面など)の比率]


タイトル作成


タイトルは重要だ。

 その文言で提案の印象が決まるといっても過言でない。特に論文を提出するわけでもないので固くなる必要はないと思うが。
タイトルを見ただけでどんな内容なのかわかるタイトルが望ましいのではないだろうか。また、内容を見てみたくなる(議論を起こせる提案内容になっているのが望ましい)必要がある。
 ただ、私のタイトルは何といっても長い。長いのである。
 今回も、
「ずれから生まれる協奏ライフ-モノの有人化により生活行為が職にもなるライフスタイルと住空間-」
である。
 短く単語で伝わるに越したことはない。
 なので、参考になるかはわからないが、どう考えこのようにしているのか下記に流れを示す(私は一発ドンピシャで決められないから下記になる)。

タイトルの構成

◯タイトルの構成
住宅の提案であるが、住空間だけでなくどんな暮らしが提案されているのかわかった方がいい
なので、「住空間の特徴+提案される住まい方」の構成をとる

◯キーワードを探す
ボリュームのズレによって生じた空間の様々な提案 「ズレ」
音や音楽の職、防災無線屋外拡声子局 「音」

◯キーワードを繋げていく
「ズレ」 「ズレが作る」「ズレが生む」など
「音」 「音の暮らし」「楽器になる住宅」「楽器住宅」など

◯さらに繋げていく(タイトル構成に当てはめていく)
「ズレが生む楽器住宅と暮らし」「ズレが協奏し合う住宅」
「ズレが反響する中で暮らす住宅」など

◯読まれた時の音を意識する(動詞は1つにしたいなど)
 キーワードを再考する(暮らし→ライフなど)
※サブタイトルの有無に繋がるが、溢れ出る要素は副題に入れてもいい



「ずれから生まれる協奏ライフ」

サブタイトルの構成

◯サブタイトルの有無
タイトルだけで伝わるのか、補助としてサブタイトルに何か盛り込んだ方がわかるのか思考(サブタイトルはタイトルの具体的な話になるようにする)

◯本題や新しい視点が伝わるか
「ズレ」「音」はありきたりであり、提案の出発点も肝ではないか
「モノを住空間化したことによる住まい方」も重要

◯アイディアの順序は正しいのか
「モノを住空間化したことで人が暮らせるようになるというプロセス」なのか、「モノを有人化したことで住空間へとつながるプロセス」なのかなど
◯住空間や暮らしの具体性
住空間や暮らしの提案であることはわかる(そういうコンペだから)
どんな住空間か暮らしになるかわかる必要がある
「生活行為が職にも住にもなっていること」

◯繋げてみる
「モノを有人化したことで生活行為が職にも住にもなる」
ここで動詞や接続詞、名詞の整理をもう一度行う
今のままでは、職にも住にもなる何なのかわからない状態
職にも住にもなる住空間と暮らしが必要ではないか
暮らしと言っても職住などいろんな行為になるので、スタイルなどを用いてみる



「モノの有人化により生活行為が職にもなるライフスタイルと住空間」


フォント


 タイトルに用いるフォントは毎回探している。その際商用利用可かどうかは確認する必要があるだろう。
 フォントは多くなっても3種類以上にならないようにする。もちろん1種類でも2種類でもいいだろう(提案や比重の軽いところでごちゃごちゃしないためである)。

タイトル

 提案の印象に合い読めるフォントとする。
 注意点として大きすぎてはいけない。シートの中で一番デカくなるとダサい。タイトルとして気づかなければいけないので、多少大きく強調される必要はあるが、推しパに対する配置やフォントの大きさ、色、種類によって調整は可能である。
 また、小見出しや文章よりも大きなったり強調されるため、文字設定では字間や行間を見直す必要がある。

 私はタイトルとサブタイトルで重要度が異なるため大きさを変えている。その時の目安として、タイトルの横の長さとサブタイトルの横の長さが揃うように調整した。木の家の時は、タイトルも長ったため揃える選択をした。
 他に修士設計の時であれば、タイトルが短くサブタイルの方が長いということだったので、左揃えをし、結は余白をとるようにした。

小見出し

 タイトルのフォントの印象を妨げず、しっかり読めるフォントとする。
 A2だったので12.14pt程度の大きさにしているが、Illustratorではフォントによっては太さを調整できるフォントもあるので、文章とフォントの大きさが同じであっても太さを変えて調整する手段もある。また、文章を明朝体、小見出しをゴシック体にするなど、大きさは変えずともフォントの強調具合で印象を操作することも可能だ。

文章

 詳細情報を読むため、しっかり読めるフォントの必要がある。私は、主にゴシック体や明朝体を選択する。もしゴシック体の文章が面として強くなる場合、明朝体にして比率の調整を行うこともある。
 また、シートに余裕がありながら詰まって見える場合は、タイトルでも述べた字間や行間を調整する方法もある。

タイポグラフィ

 プレゼンシートやチラシ、広告など媒体によって使用する効果のフォントは異なる。建築のプレゼンシートにおいては、図面やパース、模型写真が重要となってくるため、あまり遊ばないように心がけたいものである。
 これらはタイポグラフィの考えから自分なりの塩梅に解釈しているものである。タイポグラフィとは、「文字を読みやすくするデザインや、文字一つでデザインをつくる。」とあるサイトでは紹介されている。プレゼンシートにおいて重要度が高くなるのは、文字を読みやすくするデザインであると考える。そのために必要な視点として上記に述べたフォント選び、字間や行間の設定、さらにいうとフォントの色、面の上に載せて白字にする、ナンバリングなどのデザインも必要になってくるのである。

 私はこれがあまり得意でない、そのため、図面が黒いので室名は青や赤にしようというくらいで留めている。なぜならシート作成の心得としては重要だが、建築の提案を阻害しなければここでは必要のない作業だからである。


推しパ作成


◯提案内容全てを表現できる画角選定


パース作成




ダイアグラム(アイコン,立体表現含む)作成




配置図作成




その他図面作成(平面図・断面図・立面図)


[共通]
平断立の図面作成の上で共通にしたことが、建物以外の外部環境を手描きで描き込みつつもラフになることで、建築のCAD線と差をつけたことである。
住宅特集などの図面表現の中でこの表現があり、建築も外構も薄くなくしっかり見えるのだが、雰囲気も和やかで伝わるという発見から模倣させていただいた。


印刷して確認&調整


印刷すること

PDFでの確認(スクリーンやiPadなど)


さいごに


 いざ書いてみるとやることが多かったです。
 ここまで読んでくれた方の中にもこんなけやらなあかんのかと思った人もいると思います(逆にこんなけで済むのかと思う人もいるかもしれません)。

 そう。

 コンペシートの作成方法は多様であり、今回紹介したのも私が木の家グランプリ2021で使用した方法で、私の中でも1事例にすぎません。上記の流れも人によって変動すると思います。しかし、投稿前半に関わるレイアウトやタイトルの話に関しては、梗概やパワポを作成する上でも大事にしているポイントです。何から手をつたらいいの!?という人は是非この視点を取り入れてネット上にある事例をよく観察してもらえるといいと思います。
 
 また、シートは設計と同時進行にすると良いと思います。そうすることで、残り時間を把握しながらマネジメントができますし、設計の強みや構成を客観視する機会にもなります。

 さらに、ナンバリングしていないのには訳があります。これまで述べてきたのは心得なので、自分のやりやすいように解釈したときに順番が変わっていくでしょう。また、全て平行作業になることもあります。そうすることで、ストーリーやプログラム、設計など相互関係を考えながら設計していくことができるからです。
 慣れてきたら、上記の順番や概念に縛られずに自分のやり方としてどんどん確立して良いてほしいです。ちなみに私は設計も含めてこれらのことは全て平行作業で行っていきます。直感的に設計を考える時、俯瞰して物事を捉える時、客観視して批判する時などいろんな自分を召喚して進めているイメージです。
 ただ、設計することがメインになるので、あまりレイアウトだけに時間が囚われてしまうようであれば程々にするという注意点もあります。

 大変だとは思いますが、本投稿が読者の視野を広げて、自分の土俵に提案を持って来れるシート制作を探し出せることを願っています。やがて体が自然と動くように体得できるようなると思います。

 継続は力なり、であり、百見は一考にしかず、です。

 頑張る人々に幸あれ。






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