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「住む」があってはじめて

お久しぶりです。

仕事やら私生活の激変やらで、またもやひと月ほど空いてしまいました。ただこの間にも今年いっぱつめの設計士さんとの打ち合わせも行い、家づくりは着実に進んでいます。

例のごとく余談からですが、色々あり直近まで妻の実家に転がり込んでいました。関西のまあ「気の良い」住宅街でして、自分の家や実家の周りにはないような素敵なお家が沢山あり、僕は首をブルンブルン回しながら毎日散歩していたものですから、地域の方々から不審者だと思われていたはずです。

サラッと書いてみましたが「気の良い場所」ってなんでしょうね。「美しい」とも「高級」とも「落ち着いている」ともちがう、絶妙なニュアンスで使われることが多い気がします。

東京で気の良さそうな場所をパッと思い浮かべてみましょう。白金、瀬田、千駄ヶ谷・・。うーん、わかりそうですぐ言葉にはできない。そんなことを最近悶々していました。ので、いつか書きたいなと思います(ただの宣言)

さて、本題に戻します。前回の続きです。

前回は

・「PERFECT DAYS」という映画に出てくる主人公「平山」のアパート素敵じゃない?
・平山の家を解剖すれば、家づくりのヒントあるかも!
・間取り視点で見てみたけどあんまり気づきないや・・

前回の記事より

なんて取り留めもない記事を書きました。何か発見がありげなタイトルを起しておきながら、なんにも気づきがない着地。完全に不時着。読み進めてくださった方、ごめんなさい。

気を取り直して、間取り視点で見ても気づきが無いのであれば、特に印象的なシーンから逆算的に紐解いてみよう、というのか今回の趣旨です。

平山のモーニングルーティン

PERFECT DAYSというタイトルにも重なっているのが本作の進行構成。平山が朝目を覚まして布団をたたみ、夜はヘッドライトを消して眠りに就く。朝と夜のそれぞれに象徴的なシーンを設け、繰り返す。まさにDAYSを追いかける流れになっています。

とりわけ僕がギュッと心を掴まれたのが朝のシーン。

平山は、半開きにした窓から聞こえてくる隣人の箒を掃く音という天然のアラームで目を覚まします。布団を丁寧にたたんでお決まりの位置に戻し身支度を済ませると、玄関前に造作したのであろう棚に等間隔に並べられた携帯品を確かめるように手に取る。そして外に出た彼は晴れの日でも雨の日でも、必ず空に顔を向けるのです。

なんども出てくるこのシーンに、僕は妙に心惹かれました。作中で朝がやってくると、「今日の平山はどれだけリズミカルに淀みなく、このルーティンをこなすのか?」と楽しんでいる自分がいる。

不思議だったのは、このルーティンの画の中には、いわゆる洗練されたインテリアや、憧れてしまうような特別な空間があるわけではないこと。むしろ、古めかしく、決して綺麗とは言えない描写でした。

では何に僕は心惹かれたのか。それはきっと「この家に対する平山の住み方の練度の高さ」ではないかと思いました。どこからどう見ても、平山はあの家を一番住み熟していました。

布団は畳んだらここに置く

服はここにかけておく

玄関前にはこの大きさの棚を設ける

平山の朝からは、役所さん渾身の演技も手伝い、長い時間をかけて彼が最も気持ち良く、自分らしくあることができる家との所作を組み上げてきたのだろう、そんなことを想像させてくれます

僕は年季が入っているけれど丁寧に手入れされた革製品や木製品が好きです。つまり使い手の歴史を感じるもの。僕はきっと、平山の練り上げられた住み熟し方から想像される彼と家との歴史に、夢中になっていたのです。

平山の朝から家づくりに学びを得るとすれば、それは自分の住み熟し方を想像するということでしょうか。人がいて、住み方があってはじめて家の時間と空間は作られます。「この空間は確かに魅力的だけれど、自分や家族の心地よい住み方につながるだろうか?家との歴史を丁寧に重ねていけるだろうか?」こんなことを自問しながら設計士さんと話を進めたいと思いました。

次回

最近はバタバタしているのでいつになるやらですが、隙をみてまだまだ書いていきたいと思います。

ちょっと寄り道をしてしまったので、話を本線に戻していきます。

次回「いつか土地を探すかもしれない誰かへ②」

読んでくださりありがとうございました。

西村



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