早朝のコンビニ

 私ね、早朝のコンビニがとても好きなの、と彼女は嬉しそうに言った。
 ほら、朝早くからどこかに旅行に行くとき、コンビニに寄ってコーヒーや朝ごはんを買ったりするじゃない。店内には自分たちと店員さんしかいなくて、外はまだ薄暗いの。そんな、早朝のコンビニが私、大好きなの。

 新しいおもちゃを買ってもらった子どもみたいにキラキラとした目でそう話す彼女を見て、そういう感じはなんとなく分かると僕は答えた。
 
 自分は今、どこかへ向かおうとしている。夜が明けようとしている。ときおり前の道路を通り過ぎるトラックの唸り声や、犬を連れて歩くおじいさん、あと数時間で夜勤を終えようとしている店員の眠たそうな表情が、そういった事実にそっと輪郭を与えていく。もちろん天気は、晴れのほうがいい。

 僕はそんなふうに彼女と、早朝のコンビニでのひとときを過ごしたいと思う。そこから何処かへ向かって出発したいと思う。これから始まるまっさらな一日を、二人で迎えたいと思う。

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