シンガポールでの緑化活動ボランティア

シンガポールは非常に緑が豊かな都市国家です。高層ビルやマンションなどの人工物に囲まれた大都会としての姿を持ちつつも、ジャングルのような熱帯雨林が街の至る所に同居しています。これは赤道直下の熱帯気候によって自然に融合しているわけではなく、一重に政府の都市計画の賜物です。都市としての発展を人間の欲望のまま無計画に続ければ、当然自然は犠牲になるため、政府主導の緑化計画が欠かせません。

シンガポールは1965年に建国され今年で58周年となりますが、実は建国以前の1963年から都市機能の拡大に応じた国土の緑化計画をスタートさせており、この国の先を見通した計画性とコミットメントにはいつも驚かされます。現在は世界で最も緑にあふれたサステイナブルな都市であり続けることを目指し、政府は「OneMillionTrees運動」を加速させています。この緑化運動は2020年に始まったもので、具体的には2030年までにで文字通り100万本の木を増やすことを目標としています。それにより、スタート時点で700万本だった国内の木は800万本に増えることになります。3年経った現時点で57万本以上の植樹を完了しており、このペースを維持できれば2030年には目標値を大きく超える緑化を成功させることができます。

私もこの緑化運動に賛同し、先日政府主催の植樹のボランティアに参加してきました。午前中、まだ気温が暑くなりすぎない時間帯に指定された国有地に集合すると、一緒に植樹を手伝ってくれるスタッフや作業員がすでに待機していました。私の他にもボランティアスタッフは約10名ほど。植樹の手順について簡単に説明を受け、早速作業に取り掛かりました。

地面はこのボランティア活動に向けて事前に掘り起こされ、栄養たっぷりの肥沃土で仮埋めされているため、誰でも比較的簡単にクワを使って穴を掘ることができるように準備されています。ほとんどのボランティアは私も含め植樹作業においては素人なので、必要に応じて作業員の助けを借りながら丁寧に一本一本木を植えていきました。

今回植えた木は2種類。残念ながら私自身が植物に詳しくないので、調べても日本名が正確にわからないのですが、どちらも20m近くの高さにまで成長するようなので今後どのようにこの場所の景色が変わるのかが楽しみです。

Small-leafed Oil-fruit(ホルトノキ科)
https://www.nparks.gov.sg/florafaunaweb/flora/2/8/2871

Spicate Eugenia (フトモモ科)
https://www.nparks.gov.sg/florafaunaweb/flora/3/1/3166


シンガポールの素晴らしいところは、こういった都市計画を私のような外国人も含めた住民にわかりやすく説明し、かつ国をあげて参加型にして啓蒙を進めるところです。非常に簡潔なウェブサイトで国の緑化ビジョンを伝え、興味を持った個人や法人がどうやって貢献できるか、ボランティア活動だけではなく複数オプションを提示してくれています。

木を植えることだけが目的であれば、ボランティアを使うことなく作業員のみで植樹を進めた方がよっぽど早く目標達成できるでしょう。しかしこういった都市計画の本質は、市民が主体性をもって市民の生活をより良くし続けられる基盤を作ることであるはずです。その意味では、このような国家プロジェクトを遂行するためには国民参加型という形式が理想的であり本来のあるべき姿であると強く感じました。

私は今回ボランティア活動という手段を使ってシンガポールの緑化計画に貢献しようと決め、実際に手を動かし現場の雰囲気を感じることで、新たな学びや交流の機会を得ることができました。政府の活動が市民の生活と密着していることが実感でき、作業員への感謝の気持ちも改めて生まれることとなりました。非常に意義のある体験だったので、ここに広く共有するとともに、今後もさらなるコミュニティーへの貢献を続けたいと考えています。