毎年秋になるとはっきり見える文化の違い

今年の9月23日は何の日か知っていますか?

答えは「十五夜」あるいは「お月見」です。

祝日ではないですし、日本では多くの場合特別何かイベントがあるわけではないので、なかなかピンときませんが、シンガポールをはじめとした中華系文化の国々では年間で最も重視される行事の一つです。

日本で十五夜と呼ばれるのは、旧暦の8月15日にお祝いする行事であることに由来し、日本でも中華圏でも同じ日に行います。中国やシンガポールでは一般的に「中秋節」と呼ばれ、英語ではその直訳であるMid Autumn Festivalと呼ばれます。中秋節は、中国のお正月である春節や日本のお盆に相当する清明節と並ぶイベントと位置付けられており、街の各所で文化にちなんだデコレーションが増え、盛大にお祝いされます。

丸い満月は中国では団欒の象徴と考えられており、この日は家族や親しい友人と食卓を囲んで団欒を楽しむ大切な日となっています。またこの中秋節には、満月を模った「月餅」と呼ばれるお菓子を食べたり、灯籠に火を灯したりする風習があります。幼稚園や小学校の子どもたちは、こういった伝統文化を学び、この時期必ず紙や工作キットで灯籠を作って自宅に持ち帰り飾ります。

日本には中国から9世紀中頃に伝来したそうです。満月を鑑賞するという共通のテーマは持っているものの、中国から伝わったという印象は既にほとんど消え、日本独特の風習に変化しています。月見団子のお供えやお月見泥棒などは日本独自の進化ですが、伝統的な風習として認知されています。そして何よりシンガポールに住んでいて改めて毎年驚かされることが、日本がこのお月見を企業のマーケティングに使っている場面を頻繁に見ることです。

マクドナルドの月見バーガーは有名ですが、モスバーガーやケンタッキーフライドチキンもこの季節の限定商品商法に近年参戦してきました。ロッテの雪見だいふくのお月見バージョンや、ドミノピザやピザハットによる月見ピザなるものもあります。お月見商戦と呼んでも良いくらい、ファストフード業界には月見系なるものが今日では溢れています。

同じお月見という行事をとっても、シンガポールでは大切な伝統文化を継承していくことを重視している一方、日本では活発なお月見商戦が毎年激化しています。同じルーツでも、千年以上を経て完全に別物になったこの二つの文化のコントラストが非常に面白いです。こういった対比ができるのも日本人で中国文化圏に在住しているからこそできる経験だなと、しみじみ感じています。