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Airbnbとの出会い、Gidsyへの手紙

前回は、「海外在住日本人の話」をした。その続きです。


私は韓国の旅行ベンチャーの日本法人立ち上げメンバーとして参加してから既に6年が経過した。

途中リーマンショックや東日本大震災など様々な試練があったが、2012年には日本人の海外旅行者数が初めて1,800万人を突破し、外部環境の要因もあって事業は着実に成長していた。

旅行業界では、OTA(オンライン旅行会社)やLCC(格安航空会社)の普及により、誰でも気軽に海外旅行を楽しむことができる時代となってきた。パッケージツアーを利用せずに個人でホテルや飛行機を手配し、海外旅行するFIT(Foreign Independent Tour)の形態が年々増加していた。

しかし、事業は順調でも、現代の世の中や業界の変化に対応し切れていないという危機感があり、私自身もその変化に追いつく力がないという焦りを抱いていました。

Airbnbとの出会い

2012年の3月頃、私が夢中になって読んでいたビジネス系メルマガに、海外で話題となっていた宿泊サービスのAirbnbが紹介されていました。
その記事のタイトルは「LCC就航による旅行スタイルの変化と新ビジネス」。
Airbnbがどのようなビジネスモデルで自宅を有料で提供しているのか、詳しく解説されていました。

当時、旅行業界紙などでAirbnbについてよく目にする機会がありましたが、私は客観的にその変化を見ていただけでした。
しかし、そのメルマガを読んでいくと、何か違和感を感じました。
それで、もっと詳しく調べてみることにしました。

国内外のAirbnbに関する情報を収集していくと、海外では個人同士をつなぐCtoCマッチングというビジネスが流行していることを知りました。
つまり、個人が所有するモノやスキル、サービスを他の個人が利用するというシェアリングエコノミーが注目されているのです。

再度、私自身がAirbnbを主観的な視点で見ると、長年抱えていた問題が解決する可能性に気付きました。
それは、「海外在住日本人が持っているポテンシャルを活かしきれていない」という課題です。

Gidsyへ手紙を書く

2012年当時、日本ではシェアリングエコノミーを知っている者はごく僅かで、メディアなどの情報もほぼ皆無でした。必然的に海外を見ると、世界ではAirbnbの輝かしい成功をきっかけに様々なシェアリングサービスが盛り上がっていた。

Airbnbは今や日本でもシェアリングエコノミーの代表サービスとして知られているが、当時、新たなシェアリングサービスを立ち上げようとする際には「〇〇なAirbnb」「Airbnbの〇〇版」と形容されるほど、海外でも圧倒的な成功例だった。
私も、Airbnbの成功を目の当たりにし、自分の課題を解決してくれる輝く可能性を世界中の「〇〇なAirbnb」を探し求めた。そして、Airbnbが宿泊のシェアリングサービスであるとすれば、もう一つの旅行カテゴリーにおいても「Airbnbのツアー版」が存在することが明らかになった。

Airbnbはアメリカ発のWEBサービスだが、アメリカだけでなく、ヨーロッパやアジアなど、世界中で第2のAirbnbを目指した多くの「Airbnbのツアー版」が次々に起業されていた。自分で調べた範囲でも100個以上のサービスが乱立している状況でした。
その中でも特に注目を集めている2つのサービスが存在した。どちらも2011年に立ち上げられたサービスで、一つは、米国サンフランシスコ発の「Vayable」であり、もう一つはドイツ・ベルリン発の「Gidsy」だった。Gidsyは俳優のアストンカッチャーなどがエンジェル投資家として資金提供したことで有名になり、サイトのデザイン性も高く、「Airbnbのツアー版」サービスの中で最も輝く存在だった。

そこで、私は思い切ってGidsyに手紙を書くことにした。

もともと、「海外在住日本人が持っているポテンシャルを活かしきれていない」という課題を解決する方法としてシェアリングエコノミーの仕組みを利用できるのではないかと考えていたため、自分自身でサービスを作る意欲はなかった。
Gidsyはアメリカやヨーロッパなど欧米を中心に展開していたため、その日本展開を私が担えないかと思ったのだ。

結局、だれも課題を解決してくれなかった

しかし、Gidsyに手紙を送ることはなかった

Gidsyを含め、海外の例を調べていく中で、今まで旅行業界で培った経験から「Airbnbのツアー版」の成功イメージが湧かなかったことと、私の抱える問題を解決してくれる方法としては適切ではないと感じたからだ。

その後、立ち上がった数々の「Airbnbのツアー版」サービスも、殆どが消え去ったり、途中で事業を終了したり、他の事業に買収されたりした。GidsyやVayableも例外ではない。Gidsyは2013年にアクティビティ予約サービスのGetyourguideに吸収され、Vayableは途中でAirbnbとパートナー契約を結ぶなどして2019年末まで事業を続けてきたが、ついに閉じてしまった

私自身は、Gidsyへの手紙を諦めた後、さらに多くの国内外のサービスの情報を集め、分析し、実効性を検討した。しかし、結局私が思い描いていたような、自らの課題を解決してくれるサービスは、世界のどこを探しても見つからなかった。

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