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オンライン旅行、続ける価値はあるのか?

こんにちは、ロコタビの椎谷です。

2021年11月現在、コロナ感染者数が激減し、海外渡航が解禁される日も近くなってきた状況ですが、昨年から始まった「オンライン旅行」はこの先も続ける必要があるのか、考えてみました。

業界危機の救いとして生まれた「オンライン旅行」

【ロコタビの実績】(2020年〜現在)
・ロコタビのオンライン旅行サービス▶︎累計総数1,074サービス *提供済み含む
・オンラインEXPO出展企業総数▶︎55団体91プログラム

私たちは現在、世界176ヵ国5万人以上のロコ(海外在住日本人)が旅のお手伝いをしてくれるWEBサービス「ロコタビ」(https://locotabi.jp/)を運営しています。
新型コロナウイルスの発生で海外渡航が制限された2020年、アウトバウンド業界の存続も危ぶまれる状況に危機感を覚え、手探りながらも様々な取り組みを実施してきました。そのひとつがオンライン旅行でした。

当初、オンライン旅行は新型コロナウイルスで大打撃を受けた旅行業界において、唯一の救いでした。海外渡航が制限される中で、ロコタビ以外にも中小、大企業問わず多くの事業者が現地の魅力を「オンライン旅行」という形で発信、体験してもらうコンテンツを試行錯誤を重ねながら作り上げてきました。

実際にロコタビでも世界中に点在するロコ(海外在住日本人)と協力しながら、様々な形式のオンライン旅行を提供しています。しかし、「オンライン旅行」自体の認知度が低かったため、さまざまな事業者が提供する魅力的なコンテンツが多くの人に届かない現状がありました。そこでオンライン旅行EXPOとして、私たちが培ったノウハウも事業者に還元しながら、多くのコンテンツが集結する場所を用意することで旅行業者がつくるオンライン旅行を知ってもらおうというのが最初のきっかけでした。

多くの旅行事業者の努力によって、オンライン旅行は広がりつづけ、今回で三回目となるオンライン旅行EXPOでは大使館や政府観光局も参画し、計50以上の団体がオンライン旅行を開催するに至りました。業界にとっても大きな成果だと思っています。

「タビマエ」として機能しているという発見

オンライン旅行EXPOの開催を始めた昨年は、旅行会社の多くが旅行の代替としてオンライン旅行を位置付けていました。しかし、実際にやっていくと旅行の代替ではなく、旅行雑誌のような旅行にいくきっかけとなる“タビマエ(旅マエ)“として機能していることが分かってきました。

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さらに、雑誌媒体などとは異なり、現地の魅力を熟知した人が直接届けてくれるため、リアルな現地の魅力や、高いリアルタイム性の特色を持っています。

ガイドブックや旅行雑誌は「絶景」や「季節で変わる見所」など特定の切り口で魅力的な内容を提供してくれます。一方で、企画、情報収集、編集というプロセスを経てできあがる特性上、タイムラグが発生するのは必然です。

その点、オンライン旅行は現地とリアルタイムで接続するため、編集プロセスやメディア情報ではない、生の情報、つまり一次情報をみて楽しむことが可能です。

個人的には、その過程で「時差が発生している」ことを実感できるのもオンライン旅行の面白みの一つだと思っています(例えば、日本の夜9時に参加したオンライン旅行で、現地ロンドンは昼12時)。また、最近では海外進出を検討する事業者が、現地視察をオンラインで行うビジネスシーンでの事例も増えてきました。これはまさに一次情報を獲得できるオンライン旅行ならではの事例とその可能性の発展と言えます。

そういった意味でも、今後ひとつの“タビマエ“コンテンツとして旅行業界で価値を発揮していくと思っています。

オンライン旅行は役割を明確化しなければ稼げない

これまでオンライン旅行の提供事業者が増えてきた事、そしてオンライン旅行がタビマエとして価値を発揮する可能性があることをお話ししてきました。
ただ一点、気をつけなければならないことは、

「現状、オンライン旅行で直接利益を生んでいくことは難しい。」

という現実です。これだけ世の中でオンラインコンテンツが充足する中でオンライン旅行で稼いでいくことは至難の技です。実際に多くのオンライン旅行を揃えているロコタビでもそれは売上の柱にはなってはいません。

それでも、集客媒体として機能させたり、ECとの組み合わせなど、キャッシュポイントを明確にしオンライン旅行の役割を理解した上で実施することには価値があり、今後も続けていくべきだと考えています。

例えば、いわゆる旅行会社における旅行説明会は「オンライン旅行」が代替していくと思っています。(動画は、2012年頃のクラブツーリズムの旅行説明会)

これまで自社の旅行商品を売る手段として行われてきた旅行説明会は、会場費や人件費を含めそれなりにコストのかかるものでした。それを「オンライン旅行」として代替することは、これまでコストの都合上、大企業にしか許されなかった大規模な旅行説明会もオンラインであれば中小企業が実施することも容易になります。しかも、オンラインであれば現地からの配信を充足することができ、よりリアルタイム性のある情報を旅行検討ユーザーに届けることが可能になります。

「オンライン旅行」の活用は、旅行業界において企業規模の垣根を壊していくひとつの機会になっていくかもしれません。

代謝の良い業界へ

この2年間で積極的に取り組んできたオンライン旅行の拡充や、EXPOなど横断的な動きの中で、これまで硬直的で新しいことに挑戦しづらかった旅行業界において、変化を恐れずにPDCAを回していく代謝の良い活動風景を垣間見ました。

その活動の結果の一つが「オンライン旅行」だと思います。

コロナ感染者数が減り、人々が動き出し、旅行業界にも明るい兆しが見えてきましたが、今後の旅行業界復活に向けて、この経験が活きて欲しいと思っています。



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