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スイスアルプスの消えゆく氷河(2)

コルバッチ氷河の後退

  マッターホルンから東へ向かい、スイス南東部、エンガディン地方に移ります。

 スイスでの移動には、鉄道がとても便利です。とくに、高度な土木技術で100年以上もの古くから発達した鉄道網は、アルプスの自然景観と調和した沿線風景を示し、なかでもレーティッシュ鉄道のアルブラ線とベルニナ線は世界遺産にも登録されています。急峻な山奥でも、斜面を巻いて走り、ときに山を貫く鉄道は、スイス観光の大きな魅力のひとつです。時に自動車ですら、鉄道に車ごと乗っかり、トンネルを抜けるといった場所もあります。

 さて、モルテラッチ駅に到着しました。改札のないプラットフォームに降り立ちます。まわりには、家族づれでハイキングをする人、サイクリングをする人、駅舎のテラスでコーヒーを飲む人、などなど、のどかな風景が広がっています。

 それでは氷河のある山、ピッツ・ベルニナの方面に向かいましょう。

 駅前のサインに従い、氷河に向かう道を進みます。その脇に、4桁の数字の書かれた石がありました。「1878」・・・いったい何の数字でしょうか?

 実はこれ、西暦1878年には、ここまで氷河があった、ということの記録なのです。100年以上前から、少しずつ後退する氷河の末端が、いつ、どこにあったのか、道沿いにいくつも示されています。1878年と書かれた石には苔がたくさん生えていました。さらに歩いていくと、石でなく看板に年号が表示されるようになります。周りの石に生える苔は、さきほどより少なくなってきました。実は、この苔の育ち具合が、その石が氷河から解き放たれた年齢を示しているのです。

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