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カツサンドって…

▼カツサンドを食べていてふと思ったのですが,カツの衣がパン粉なのに,なぜさらにそれをパンで挟むのでしょうね…。

▼で,いったいいつ,だれが思いついたのかと思って「カツサンド  発祥」とググってみたら,どうやら上野の「井泉」というお店が発祥のようです。

▼こちらのHPにはこのように書かれていました。

創業当時、東京の花街として賑わっていた下谷の地において、芸者衆の方々の口元が汚れないようにとの気遣いから考案されたのが「かつサンド」です。

(中略)

初代女将は、明治生まれながら、時代を先取りする両親の元で育ったので、朝食はトーストに紅茶というメニューでした。

彼女は、いつもキレイに髪を結い上げ、着物を粋に着こなしていたので、祖母とコンチネンタルなモーニングの組み合わせがとても新鮮でした。この様に、祖母はパンの生活が身近にあったので、祖父が「とんかつ」を作った時に、この「とんかつ」をパンに挟んで、手軽においなりさんや海苔巻感覚で食べられる様にしたらどうだろう?と、「ひょい」と思ったと、生前申しておりましてこの様にして、日本初の「かつサンド」が誕生致しました。
また、当時としては、小ぶりのパンを使用したのは、芸者衆の口紅がとれない様に・・・、お座敷の合間に頂ける様に、との配慮から、食べやすいサイズのかつサンドが誕生致しました。

▼なるほど,面白いですね。1930年(昭和5年)創業とのことですから,カツサンドが生まれたのは昭和初期,しかも花街の芸者衆のために考案されたということですから,当時はそれこそお洒落の最先端を行くような「粋」な食べ物だったのでしょうね。

▼パンに何かをはさんで食べる,という食べ方は大昔からあったようですが,サンドイッチ(サンドウィッチ)という単語がそれに用いられるようになったのは,イギリスの貴族である第4代サンドウィッチ伯爵ことジョン・モンタギューにちなんで,というのが有力な説のようです(サンドウィッチ[Sandwich]とはイングランド南東部のケント州にある町の名前です)。

▼Oxford English Dictionary(OED)の sandwich の項目には以下のような記述があります。

Said to be named after John Montagu, 4th Earl of Sandwich (1718–1792), who once spent twenty-four hours at the gaming-table without other refreshment than some slices of cold beef placed between slices of toast.
(第4代サンドウィッチ伯爵であるジョン・モンタギューにちなんで命名されたと言われている。彼はかつて,トーストに挟んだ何切れかのコールドビーフ以外に気分転換をするものなく,24時間,賭博台で過ごしていた。)

▼文献での初出は1762年のエドワード・ギボンの日記のようで,OEDには以下のような文例がありました。

I dined at the Cocoa Tree.‥ That respectable body‥affords every evening a sight truly English. Twenty or thirty‥of the first men in the kingdom,‥supping at little tables‥upon a bit of cold meat, or a Sandwich.
(私はココア・ツリーで食事をした。…その立派な場所は…毎晩,実にイギリス的な風景を見せてくれる。二十人か三十人…のその国の一流の男たちが…小さなテーブルで…少しの冷たい肉,あるいはサンドウィッチをちびちびと食べている。)

▼要は,ギャンブル狂のサンドウィッチ伯爵が食べていたものにちなんでということですが,これは「鉄火場(賭博場)で好んで食べられていたマグロの海苔巻きが鉄火巻きと名付けられた」という俗説とも通じるものがありますね。

▼賭博をしながら気楽に食べられるサンドウィッチ。そこにトンカツをはさみ,花街の芸者衆がお座敷の合間に口紅がとれぬように食べられるカツサンドが生まれたわけで,どちらも「大人の遊び場」が関係しているというのが興味深いところです。

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