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スキーマを広げる(1):マシュマロテスト

▼ふと思い立ち,不定期ではありますが,「スキーマを広げる」という名前のシリーズであれこれ書いてみようと思いました。なお,トップの画像は本文とは関係ありません(笑)。

▼第1回目は「マシュマロテスト(marshmallow test)」です。この実験については,過去,以下のような大学の英語の問題で出題されています(今,手元にある資料だけなので,これ以外の大学でも出題されている可能性が高いはずです)。

▼2020年度
・早稲田大学教育学部
▼2019年度
・青山学院大学教育人間科学部
・東海大学文学部
・防衛医科大学校一次試験
▼2013年度
・大阪大学前期日程(外国語学部以外)
▼2012年度
・早稲田大学政治経済学部
▼2009年度
・関西大学[2月3日]

▼この実験は,オーストリア生まれのアメリカ人心理学者・Walter Mischel(1930-2018)が1960年代から1970年代にかけて行った実験で,子どもの自制心と,その子どもの将来の学校の成績や社会でのあり方について調べたものです。

▼実験の手順は以下の通りです。

① 実験者が4歳の子どもを椅子に座らせて目の前にマシュマロを1つ置く。
② 「今すぐにこれを食べてもいいけれど,私が戻ってくるまで我慢出来たら,その時にはもう1つマシュマロをあげるよ」と言って部屋を出ていく。
③ 子どもの様子をカメラで観察する。

▼その後の追跡調査で,実験に参加した子どもたちが18歳になってSAT(アメリカの大学進学適性試験)を受験した時,マシュマロをすぐに食べるのを我慢できた子どもの方がすぐ食べてしまった子どもより平均点が210点高かったということが明らかになりました。また,以下の記事は2012年度早稲田大学政治経済学部で出題された英文の出典となったものですが,ここに書かれている内容によれば,その後の人生でも差が出たとされています。

The children who waited longer went on to get higher SAT scores. They got into better colleges and had, on average, better adult outcomes. The children who rang the bell quickest were more likely to become bullies. They received worse teacher and parental evaluations 10 years later and were more likely to have drug problems at age 32.
(より長く待てた子どもたちは,その後,SATで高い得点を取った。彼らは良い大学に入り,平均すると,大人としてより良い結果を得られた。ベルを最も早く鳴らした子どもたち(注:我慢できずに実験者を呼ぶベルを鳴らしたということ)は,いじめっ子になる確率がより高かった。彼らは10年後に教師や親から悪い評価を受け,32歳では薬物問題を抱える傾向がより高かった。

▼こちらの動画は Walter Mischel によるものではありませんが,どんな様子なのかがよくわかるため,マシュマロテストを知るうえで参考になると思います。

▼もちろん,4歳の時点でその後の一生が決まるわけではありません。また,Mischel の実験そのものも,その後の別の研究者たちによる検証によって「マシュマロを我慢できるかどうかは自制心の問題よりむしろ子どもの経済的・社会的背景による違いの方が大きい」ということが明らかになり,Mischel の主張する「自制心による」というのはあくまでも限定的な結果にすぎないとされました。

▼しかし,この実験について言及された文章は数多くあり,また,非常にインパクトがあり,影響力の大きな実験でもあるため,否定的・批判的な文脈になるかもしれませんが,今後も入試問題でマシュマロテストを扱った英文が出題される可能性は高いと考えられます。

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