見出し画像

「つながり」を読み解く英文読解(3)~同一表現の繰り返しを避けながらつながりを作る仕組み①~

【1】同一表現の繰り返しを避けながらつながりを作る仕組み

「つながり」を読み解く英文読解(2)でお話ししたように,英語には「同一表現の単純な繰り返しを避ける」「同一内容を繰り返す場合はかたちを変える(RVT:主題の反復変奏)」という暗黙のルールがありますが,その暗黙のルールに従いながら,かつ,文と文のつながりを生み出すために用いられる様々な方法があります。

▼ここでは,単純な反復を避けながら,文と文のつながりを生み出すための方法を8つ紹介します(*1)。

[01.10] 代名詞・指示語を使って言い換える
[01.20] 〈定冠詞(the)+名詞〉を使って言い換える
[01.30] 代動詞を使って言い換える
[01.40] 代用表現を使った節の言い換え
[01.50] 省略する
[01.60] 類義語・反意語を使って言い換える
[01.70] 上位語/下位語を用いる(抽象化⇔具体化)
[01.80] 部分語・関連語を用いる

▼今回は〈[01.10] 代名詞・指示語を使って言い換える〉について,例文で確認しましょう。

【2】代名詞・指示語を使って言い換える

▼繰り返しを避けながらつながりを作る代表的な方法の一つが「代名詞や指示語を使った言い換え」です。まず「代名詞・指示語を見たら,何を指しているのか,何の代用表現なのかを考えながら読む」習慣を身につけてください。試しに,以下の例文の太字の代名詞・指示語が何を指しているのかを考えながら読んでみましょう。

ex-1) Stamp collecting is an educational hobby that can be inexpensive and enjoyed whenever you want.   It provides a nice and practical way of learning about history, geography, famous people, and customs of various countries worldwide.
(2015年度センター試験本試験第3問B問題より)
〈語彙〉□ stamp collecting 切手収集  □ educational 教育的な
□ hobby 趣味  □ inexpensive 安価な  □ provide O Oを与える
□ practical 実践的な,実用的な  □ history 歴史
□ geography 地理,地理学  □ famous 有名な  □ custom 慣習
□ various 様々な  □ worldwide 世界中の
〈和訳〉切手収集は安価で好きな時にいつでも楽しめる教育的な趣味だ。それは歴史,地理,有名な人々,そして世界中の様々な国々の慣習について学ぶ優れた実践的な方法を提供してくれる。

⇒この It は1文目の Stamp collecting を指しています。

ex-2) Two people are making plans to stay in Green National Park for nine nights. They want to enjoy nature, but they need a power supply to use their computers.
(2015年度センター試験本試験第4問B問題より)
〈語彙〉□ nature 自然  □ power supply 動力(電源)の供給
〈和訳〉2人の人がグリーン国定公園に9泊滞在する計画を立てている。彼らは自然を楽しみたいのだが,自分たちのコンピュータを使うために電源の供給を必要としている。

⇒2文目の They と their はともに1文目の two people を指しています。

ex-3) Of the total energy produced on Earth since the industrial revolution began, half has been consumed in the last twenty years. Disproportionately it was consumed by us in the rich world; we are an exceedingly privileged fraction.
(2015年度大阪大学前期日程外国語学部以外)
Bill Bryson, At Home: A Short History of Private Life
〈語彙〉□ total 合計の  □ industrial revolution 産業革命
□ consume O Oを消費する
□ disproportionately 不釣り合いなことに  □ exceedingly きわめて
□ privileged 特権的な  □ fraction 少数者,断片
〈和訳〉産業革命が始まって以来,地球上で生産される全てのエネルギーのうち,半分が過去20年間に消費されてきた。不釣り合いなことに,それを消費したのは豊かな世界の私たちであった。私たちはきわめて特権的な少数者なのだ。

⇒1文目のV2と2文目のV1がともに〈be動詞 + consumed〉になっていることに注目しましょう。2文目の冒頭のitは「消費された」の主語なので,1文目の主語のhalf([産業革命以来生産された全エネルギーのうちの]半分)を指しているとわかります。

ex-4) Here’s a powerful example from the 2005 commencement address that Steve Jobs delivered at Stanford. In short, he’d dropped out of college after six months because he wasn’t sure why he was there, and the tuition was much more than his parents could afford.
(2011年度慶應義塾大学医学部)
Tina Seelig, What I Wish I Knew When I was 20
〈語彙〉□ powerful 説得力のある
□ commencement address 学位授与式の演説
□ deliver O O(演説など)をする  □ in short 要約すると
□ drop out of A Aを中退する  □ tuition 学費
□ afford O Oをまかなう
〈和訳〉ここに,スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学で行った2005年度の学位授与式での演説からの,説得力のある具体例がある。要約すると,彼は(入学してから)6か月後に大学を中退していた。というのも,自分がなぜそこにいるのかが彼にはわからなかったことと,学費が彼の両親に賄えないほどだったからだ。

⇒2文目のheとhisはSteve Jobsのことで,thereはcollege(正確にはin college)を指しています。

ex-5) So, in my talks, which many young Indians did attend, I found myself in the odd position of explaining to them that India’s great gift to the world has been her rich spirituality and that her greatest luminaries have been powerfully enlightened men and women who all, in one way or another, courageously went against the status quo(注) in pursuit of their own higher development.
(注) status quo 現状(維持),体制
(2013年度広島大学前期日程)
Andrew Cohen, “Globalization Isn’t Just for Economists”, Big Think, 2012
〈語彙〉
□ talk 講話,講演  □ attend O Oに出席する  □ odd 奇妙な
□ position 立場
□ explain to A that SV…Aに対してSがV…ということを説明する
□ gift to A Aに与えた贈り物  □ spirituality 精神性
□ luminary その道の権威,専門家,優れた人
□ powerfully 強力に  □ enlightened 悟りを開いた,啓蒙された
□ in one way or another 何らかの点で
□ courageously 勇気を持って  □ go against A Aに逆らう
□ in pursuit of A Aを追い求めて  □ development 成長,発達
〈和訳〉
だから,私の講話では,多くの若いインド人が出席したのだが,気がつけば自分が彼らに向かって次のようなことを説明するという奇妙な立場に置かれていた。それは,インドが世界に対して与えた優れた贈り物がインドの豊かな精神性であるということと,インドの最も偉大な権威たちが強力に悟りを開いた男女であり,彼らは皆,何らかの点で勇気を持って現状に逆らい,自分自身のより高い成長を追い求めたということであった。

⇒whichは関係代名詞でmy talksを指しています。themはmany young Indiansを指しています。2つあるherは「インド」を指しています。人称代名詞she-her-her-hersは単数形の女性を表す代名詞ですが,その他に,乗り物や機械,国,月(moon),海(sea),自然(nature),財産(fortune),平和(peace)などを指すこともあります。whoは関係代名詞でpowerfully enlightened men and womenを指しています。最後のtheirもpowerfully enlightened men and womenを指しています。

▼このように,代名詞や指示語を見たら「何を指しているのか」を考えながら英文を読む習慣を身につけましょう。なお,通例,代名詞や指示語は「前にあるもの」を指しますが,itやthis/theseのように後に来るものを予告する働きや,従属節が主節より前にある場合に主節に登場する人や物を従属節内であらかじめ代名詞で表す場合もあります

【注】

*1:この分類はM. A. K. Halliday & Ruqaiya Hasan, Cohesion in English, Longman, 1976に負うところが大きい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?