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「つながり」を読み解く英文読解(18)~情報構造④:主題(シーム)と題述(リーム)(3)~

▼今回は,前回まで学んできた〈主題(シーム [T])/題述(リーム[R])〉という考え方を使って問題を解く練習をしてみましょう。なお,前々回と前回の内容をまだお読みでない方は,以下のリンクからその2つを読んでいただいてから問題を解いてください

▼〈主題(シーム)/題述(リーム)〉を使って問題を解く③

次の英文ア~エを,与えられた2つの英文の間で論理的に意味が通るように並べかえるとき,その順番として最も適切なものを,下の①~④の中から1つ選びなさい。
    The notion that different languages may give different cognitive skills goes back centuries.

ア. By the 1970s many scientists had been disappointed with the Sapir-Whorf hypothesis.
イ. They studied how languages vary and proposed ways that speakers of different tongues may think differently.
ウ. Since the 1930s it has become associated with American linguists Edward Sapir and Benjamin Lee Whorf.
エ. Although their ideas met with much excitement early on, there was one small problem: a near complete lack of evidence to support their claims.

 It was all but abandoned as a new set of theories claiming that language and thought are universal muscled onto the scene.
 ① ア-ウ-エ-イ    ② イ-ア-ウ-エ
 ③ ウ-イ-エ-ア    ④ エ-ウ-イ-ア
(2014年度獨協医科大学医学部)
Lera Boroditsky, How Language Shapes Thought: The languages we speak affect our perceptions of the world, February 2011, Scientific American

▼まず,書き出しの文のシーム(T)とリーム(R)を見てみましょう。

[T]The notion that different languages may give different cognitive skills (言語が異なれば認知能力も異なるかもしれないという考え方は)
[R]goes back centuries(何世紀も前にさかのぼる)

▼そして,ここでもまず「鯉のぼり型」と「しりとり型」の2通りに分けて考えてみることにしましょう。

(a) 鯉のぼり型の場合:「言語が異なれば認知能力も異なるかもしれないという考え方」を言い換えたシームの文が続く。
(b) しりとり型の場合:「何世紀も前にさかのぼる」を受け,その内容に関連したシームの文が続く。

▼①~④の選択肢はそれぞれ,ア・イ・ウ・エで始まっているため,書き出しに続く文さえ決まれば正解は出るはずです。そこで,ア・イ・ウ・エの各文をシームとリームに分解してみましょう。

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▼まず,They で始まるイ(この They は述語動詞が studied なので人間を指していると考えられる)と,their ideas を含むエ(この their も ideas を所有している「人間」を指していると考えられる)はいずれも,その指示語に該当する情報(つまり,複数の人たち)が書き出しの文に含まれていないので,②と④が誤りだとわかります。

▼次に,アの主題(シーム)の By the 1970s many scientists (1970年代までに,多くの科学者は)では,書き出しの文の The notion を受け継いだ表現はありませんが,ウの主題(シーム)の Since the 1930s it (1930年代からずっと,それは)では,it が書き出しの文の The notion を受け継いでいると考えられます。

▼また,1つの文章全体の中に年号や年代が複数書かれている場合,基本的には〈古いもの→新しいもの〉と時系列に述べるのが原則ですから,ウの主題(シーム)が書き出しの題述(リーム)のgoes back centuries(何世紀も前にさかのぼる) も受け継ぎ,時系列に出来事が並べられる出発点になっているとも考えられます(つまり,書き出しの文をまるごと,ウの主題(シーム)で受けている,と考えることができます)。すると,正解は③の〈ウ-イ-エ-ア〉となるはずなので,その順番で問題がないかどうかを確認してみましょう。

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▼イとエのつながりがややわかりにくいのですが,エの there was one small problem は their ideas had one small problem と言い換えることができますから,そのように書き換えると,

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となります。これにより,イの主題(シーム)の they が,エでは their ideas となっていると解釈することができます。

▼では,これを一つの展開図にまとめてみましょう。

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▼この文章では,「鯉のぼり型」と「しりとり型」が併用されていることがわかります。ただし,エとアのつながりにおいては,エの題述(リーム)[R4]がアの題述(リーム)[R5]につながっているという点で,そこだけは「鯉のぼり型」とも「しりとり型」とも言えない変則的なつながり方をしています。

▼設問としては,アの題述(リーム)[R5]と,終わりの文の主題(シーム)[T4]がしりとり型でつながっていて,かつ,書き出しの文に続く文が決まれば解答は可能ですが,上記の理由で,エとアのつながりがややわかりづらい問題でした。



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