読むだけ英単語【7】
▼年明け早々から,再びコロナウィルスの感染者が急激に増加し始めました。特に,米軍基地のある沖縄や山口,そして山口に隣接する広島では再び「まん延防止等重点措置」が適用されることとなりました。
▼コロナウィルスの pandemic (パンデミック)が始まってもう丸2年になります。この pandemic という言葉は,pan(全て)+ dem(人)+ ic(形容詞・名詞)という作りになっています。pandemic についてはこちらの記事もご覧ください。
▼この pan- という表現が含まれている単語で,私たちになじみのある単語としては,panorama(パノラマ写真,概観,展望)という言葉があります。また,アメリカの有名な航空会社「パンナム」は Pan American Airways が正式名称でした(「パンナム」は1991年に倒産しました)。この「パン・アメリカン」の「パン」は漢字では「汎」の字を当てます。Pan Pacific(汎太平洋,環太平洋)という言葉もありますね。英単語というわけではありませんが,日本を代表する電機メーカーの一つ,Panasonic Corporation(パナソニック株式会社・旧称:松下電器産業株式会社)の Panasonic も,Pan-(汎,あまねく)+ sonic(音)→「当社が創りだす音をあまねく世界中へ」という思いが込められているそうです。
▼他になじみのある単語としては,電車の pantograph(パンタグラフ)があります。panto- は pan- と同じ「全て」,graph は「書く(もの)」の意味なので,「全てを書くもの」が語源です。
▼古代ギリシャのスポーツに pankration(パンクラチオン)という競技があります。pan は「全て」,kration は「力」を表すギリシャ語の κράτος (kratos) から来ているので,パンクラチオンとは「全力」という意味になります。
▼そういえば,イギリスの功利主義哲学者・ジェレミー・ベンサム(1748-1832)が考案した panopticon という刑務所があります。pan-(全て)+ opticon(見る)という意味で,「一望監視施設」とも訳されます。パノプティコンは上から見ると円型の建物で,中心に監視塔があり,監視塔の中からは全ての独房内を見ることができますが,独房の中からは監視塔の中を見ることができません。フランスの哲学者・ミシェル・フーコー(1926-1984)は『監獄の誕生』の中でパノプティコンを引き合いに出し,この建物が囚人を効率的に監視し,囚人たちはいつ見られているかわからない不安から常に自分が監視されていることを意識し,規律化された従順な身体が形成されると主張し,現代社会における権力の内面化作用の象徴としてこの建物を扱っています。
▼現代社会においては,デジタル化によって人々の行動がすべて見張られているとも言えます。また,スマホをはじめとするデジタル機器によって私たちはお互いの行動を常に監視し,何かあればSNSなどですぐに告発することも可能になっています。これはあたかもジョージ・オーウェルが『1984年』で描いた世界のようでもあります。私たちの社会そのものがパノプティコンになった,とも言えるでしょう。
▼イタリアのローマには,古代ローマの神殿 pantheon(パンテオン)が残されています。pan-(全て)+ theon(神)という作りの単語で,ギリシャ語の「全ての神々」が語源です。ちなみに,神や宗教の信仰についての理論的考察を行う学問を theology(神学)と言います。theo(神)+ logy(学)という作りの単語です。
▼では,今回お話しした単語をもう一度確認してみましょう。なお,*をつけたものは大学入試で出題される可能性のあるものです。
pandemic*
panorama*
Pan American Airways
Pan Pacific
Panasonic Corporation
pantograph
pankration
panopticon
pantheon
theology*
▼今後も不定期に更新しますので,よろしければこちらからマガジン登録をしてください。また,ついでに左下の「スキ」もクリックしていただければ励みになります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?