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日本は特殊?

マカオで出会った文法用語

▼以前,中国のマカオを訪れた時,書店で中国の高校生・大学受験生向けの英語の参考書,問題集,単語集を何冊か購入しました。

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▼下の写真はその中の1冊で,英文法の参考書兼問題集です。これを見ると,日本の参考書でもおなじみの文法用語が沢山書かれています。

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▼「使役動詞」「原形動詞」「現在分詞」「過去分詞」「SVOC」…いずれもおなじみの文法用語ばかりです。

▼日本の英語教育批判としてたびたび見聞きする紋切り型の言説として「日本人は中高6年間と英語を勉強しているのに,英語を話すことすらできない。これは文法ばかり勉強しているせいだ」「難しい文法用語ばかりで実用性に欠ける」「文法にこだわっているから話せるようにならないんだ」「日本人が英語を話せないのは,読み書き中心の大学入試のせいだ」などといったものがあります。そして,「アジア諸国では実用的な英語を学習しているから,日本人の学習とは違う」といった言説も聞いたことがあります。しかし,こうして中国の参考書でも日本と同じ文法用語が使われている以上,「日本人は~」式の批判はお門違いの偏見としか言えないでしょう。

▼また,シンガポールや中国,韓国の大学入試問題を見ると,日本の大学入試の問題とほとんど変わりなく,実際,日本で出題された入試の英文をネットで検索すると,中国や韓国の大学入試向け参考書がたびたびヒットしています(もっとも,日本の大学入試問題の方がかなり細かいところを問う傾向がある,という印象も受けますが)。

▼「文法偏重だ」「文法用語だらけだ」「読解ばかりやっている」といった,日本の英語教育がまるで特殊なものだと言わんばかりの的外れな批判は,もういい加減うんざりです。アジア諸国でも,文法は日本と同じ文法用語で勉強し,読解も日本と同じような英文で学習しているのですから。

文法用語を擁護する

▼極論すれば,文法の学習というのは,「違い」を知ることではないか,と思うのです。現在形と過去形の違い,現在分詞と過去分詞の違い,可算名詞と不可算名詞の違い,関係代名詞と関係副詞の違い…こうしたさまざまな「違い」を知ることが,文法の学習の中でかなり大きなウェイトを占めています。

▼そして,そうした「違い」を示すためにつけられているのが「文法用語」です。ですから,たとえば He is the man who I think stole my money. という文で用いられている表現様式を「連鎖関係代名詞節」と呼ぼうが「肉玉そばダブル」と呼ぼうが,何でも構わないのです(もっとも,本当に授業で「肉玉そばダブル」と呼んだら失笑されますが)。

▼「文法用語は難しい」というのは,ひょっとしたら,その用語で示されている「違い」を意識できていないことが原因なのではないでしょうか。それはたとえば,ある大人数のアイドルグループのメンバーの「違い」がわからないのと同じことなのかもしれません。「違い」がわからないから,名前も覚えられないし,難しいと思ってしまうということなのでしょう。文法用語を「悪者」にするのではなく,それがどのような「違い」を表すものなのかを理解する努力こそ,必要なことではないでしょうか。

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