見出し画像

パラリーって…?

▼以前,生徒さんからこんな質問を受けました。

「先生,このタイプの問題はパラグラフリーディングを使えばいいんですよね?」

▼私ははたと考え込んでしまいました。

「パラグラフリーディングって…,何?」

▼もちろん,そうした名称が存在するのは知っていますし,「パラグラフリーディング」という名前を冠した参考書や問題集も沢山出ています。しかし(全てを確かめたわけではありませんが),書かれていることがバラバラで,統一した見解がないのです。

▼曰く「最初と最後の段落を読み,途中の段落は第1文だけを読む」,曰く「逐語訳ではなくパラグラフという単位に注目して読む」…前者はともかくとして,後者については「それって…普通の読み方じゃないの?」と思ったりもするのです。

▼おそらくこの名称が受験英語の中で使われ始めたのは1980年代後半だと思います。1990年代には定着し,その名前を冠した本が何冊も出されました。

▼以下のHPを見ると,欧米人の中にも paragraph reading という言葉を使って英文の読み方を指導する人はいるようですから,「欧米にはない!」と断言するのは拙速かもしれません。

https://www.yourfamilyclinic.com/ND/memory/paragraphreading.html

▼しかし,Amazonで paragraph reading と検索してもズパリそのものという本は見当たりません。一方,paragraph writing の本はよく見かけます。ということは,欧米には「パラグラフリーディング」という体系的な方法は存在しないのではないかと思うのです。

▼おそらく,日本の「パラグラフリーディング」は,「パラグラフライティング」の方法を元にして英文を読むことに応用したものではないでしょうか。しかし,全ての文章が教科書通りの「書き方」の書式に則って書かれているわけではないので,パラグラフライティングを元にした「パラグラフリーディング」なるものが通用しない英文はごまんとあるはずなのです。

▼パラグラフという単位に注目して英文の情報を整理することは大切なことですし,私自身も授業でそう話すことはありますが,だからといってそれは「速読」というわけではありませんし,一文一文が正確に読めていないのに全体がわかるなどというのは,単なる「錯覚」,もしくは「誤読」に過ぎません。「パラグラフリーディング」という名前に振り回されることなく,正確な読解を心がけることこそ,受験英語の学習において何より大切なことではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?